2017/10/10 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にラシュフェルさんが現れました。
■ラシュフェル > 日が沈むとともに賑やかになる奴隷市場
その石畳を、音もなく歩く一人の青年
まだ若く、中性的にも見える、美しい容姿の青年はゆっくりとした足取りで周囲を見渡す。今日は、何か良いものは見つかるだろうか、と
■ラシュフェル > 「さて――愛しの姫君は見つかるかな?」
特定の人物を探してるわけではない
今後、自分の寵姫になる、したくなる相手を探して、回る
奴隷でも、奴隷商でも、通行人でも構わない
自分の感性にクる相手を探しながら、歩く
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 近頃、日課……とまではいかないものの。行動パターンの一つに入れている、バフートの散策。
奴隷用の便利な道具やら何やらを眺めたり。あるいは、奴隷でも買おうかなあ、とか思ったり。
そんな散歩を楽しむのが最近のお気に入り、である。
「とはいえ、奴隷調教用とか、そういうヤバイ道具が欲しいわけでも無いんだけどね」
雇っているメイドは、奴隷とはいえ随分自由に振舞うように仕向けているし。
家の事は人手も足りているので。まぁ、言っちゃえば冷やかしなわけで。
とりあえずは、のほほん、と歩き回る少女。自身の呪いのことは一旦思考の外、である。
■ラシュフェル > ――ふむ?
足を止めた。視線は奴隷ではなく、自分と同じようにこの街を散策する少女、特段に美しいわけではない。上玉ではあるが、しかし面白い魔力をまとってるな、と
ゆっくりとした足取りで近づきながら肢体を、その顔を観る
まだ青い蕾にも見える少女、しかし磨けば光るやもしれない
少なくとも、あの眼差しは『面白そうな』女だ、何か他とは違う
さて――どうやって声をかけようか、と、後ろを歩きながら声をかけるタイミングを伺って
■セイン=ディバン > 道中。商品として並べられている奴隷に縋るような視線を向けられるが。
少女はそれを無視しながら道を歩く。
残念ながら少女は善人では無いしお人よしでもない。
目に付いた奴隷全てを助けていたら、キリなどないのである。
「さ、て。一通り見たし。そろそろ帰り──」
少女の動きと言葉が、止まる。
背筋に急速に襲い来る悪寒。保有スキル【生存本能】が少女の頭に警鐘を鳴らす。
ぎしり、と。身体をその場に固定していた少女は、盛大な溜息を一つだけ吐き。
そのまま、またゆったりと歩き始めた。何事も無かったかのように。
「……ってか! なんでこう、本当に!
超越者級と出会いまくるかな私!」
小声で文句を言いながら。自然体を装い、道を行く。
走って逃げたりなんてしない。そう。近くにいる。
何か、とんでもない存在が。最近良く出会う、激ヤバ級の凄腕の何かが。
そいつに感づかれれば、先回りされたりするかもしれない。
さぁ、どうしよっか。少女は必死に頭脳を回転させる。
■ラシュフェル > 視線は、もう奴隷等にはいかない。興味も失せた
興味があるのは目の前の少女だけ、自然な――しかし明らかに素早い足取りで一定距離まで近づいた。さて
「ん?――アハハ、随分と良い勘をしてる。しかも逃げるわけじゃないのか。面白い、愚鈍ではないか」
愉快そうに笑う。まだ気配は隠してたはずだ。それを気づく辺り、並の感知能力ではない、しかも逃げるわけでもなく真っ直ぐ歩く少女に、尊敬の念すらある
賢い女性は好きだ。よし決めた―――彼女が獲物だ
『魔王』が仮面を取ったように、笑みを浮かべて、声をかける
「このまま進んでも、人気のないところにいったらジエンドじゃないかな?ゆっくりと交渉でもしてみないかな?」
その声はセミソプラノで、どこまでも柔らかい。天使が歌うような声で
■セイン=ディバン > あるいは。少女が冒険者でなかったのなら。
経験が浅かったなら。勘が鋭くなかったら。
逆に幸せだったのかもしれないが……。残念ながら。現実はそうもいかない。
「……うっわ。気付いてるっぽいなぁ、コレ。
距離、離れないもん」
懸命に歩いているのに、気配とは一定の距離が保たれたまま。
いよいよマズいぞ、これは。そう考えていた少女は。
口の中で身体強化の呪文を唱え始め。効果が出ると同時に、駆け出そうと。そうしていたのに。
声を。かけられてしまった。
「……。…………。
アクション、早いっつー……。
何か用かしら?」
数瞬の間の後。観念した少女は、声の主へと振り返った。
そこにいたのは、自身と同系統の色の瞳を持つ男性。
少なくとも、そこいらの一般人ではない相手。だが、招待は不明だ。
こうなれば、相手の本質見極め、対策を考えるか。少女は腹をくくった。
■ラシュフェル > 距離は、きっちり同じ距離を維持する。手は届かない、お互いに手出しのできない距離、相手に警戒心を与えないギリギリの距離を保ったまま、追う。静かな静かな鬼ごっこ。
ゆっくりとした足取りは変えない。にこやかな笑みも変わらない。相手を油断扠せようとかいう考えはない
ただ、安心はしてもらいたいのだ。自分は敵ではない、害を与えるつもりはない。 本心である、自分は――幸せを与える存在なのだから
「おや、そのまま走ると思ったけど――随分と切り替えが早い。
こんばんは、綺麗なお嬢様。今宵の時間を頂けないかな?
私は、ラシュフェル。小さな領土をもつしがない領主だよ」
さて、魔族の気配は消してない。相手はどういう反応を見せるか
怯えるか、敵意か、屈服か――最後の選択肢だけはしてほしくない。つまらないからね
■セイン=ディバン > 姿見えない相手との追いかけっこ。気分の良い物ではない。
これならまだ、目の前に強大な魔物が出てきたほうが精神的には楽だ。
そう考えていた少女だが。実際に声をかけられてしまえば。
あぁ、やっぱりどっちにしろ碌でもないことだなぁ畜生、と。
そう心中で毒吐くに至ったわけだが。
「……そうじゃなきゃ、冒険者として生きていけないんで。
……ハァイ、こんばんは。美しいお兄さん。
時間、ね。あげる訳にはいきません、なんて言っても聞かないでしょ。
セイン=ディバン。冒険者よ。……こんな強い気配の領主とか、ウソつけっつー」
相手の自己紹介には、敵意、というか。警戒を解かぬまま応える少女。
自身の懐の武器各種が、随分頼りなく感じる。
しかして。相手の行動を見ないことにはまずは動きようも無い。
■ラシュフェル > 小さく首を傾げる。どこか無邪気な少年のような仕草
冒険者?たかが人間の冒険者が自分の気配に気づくものか
ますます面白い
青年の悪癖である、好奇心。魔王とはいってもまだ若い、そして、全ての種族が好きなのである。それは人間であっても変わらない。
興味を持った相手のことを知りたい。それは純粋な好奇心で
「魔族の国ではまだまだ小国でね、こうやってボクも新しい『協力者』を探してるところだよ。とりあえず、戦闘態勢は解いてほしいかな。
私は争いは好まないんだよ、何より、君のことが知りたい。倒してしまうにはもったいないじゃないか」
さて、そろそろ野次馬が邪魔だ。ゆっくりと右手を上げる。ローブがたなびき――ぱちん
と、空間を歪める。漆黒の球体が周囲を包むように内側からは見えるが、外からは二人の姿が消えたようにみえるだろう
「ああ、安心して欲しい。この空間はそのままこの球体を抜ければ外に出られる。逃げたければ逃げると良い」
■セイン=ディバン > 見た目に反した、というべきか。そぐわない、というべきなのか。
少年のような仕草に、少女は舌打ちをする。
余裕綽々なその様子が、何よりも恐怖と苛立ちを刺激される。
「……あっさり魔族って言いやがったし。
はぁ、協力者? ……ま、いいわ。
どうせ逃げられないだろうし? 話くらい聞きましょ」
相手の言葉に一々噛み付こうとするのだが。その協力者という単語に興味を惹かれたか。
相手の行動を見守る。
瞬間。空間が歪むのが判る。黒い球体に包まれ。
なんとなく、外界と遮断されたのだろうな、と理解した。
流石に、色々な超越者に似たことされて、慣れてしまったご様子。
「は、そりゃどーも。
……早速だけど。質問させてもらうわ。
アンタの目的は? 協力者って何?」
懐から細巻きを取り出し、不遜な態度で吸い始める少女。
■ラシュフェル > 無邪気な少年少女が見せるような、可愛らしい笑顔を見せる。
舌打ちを魔族の、しかも上位種とわかっててできる人間、面白い、とても面白い。
青年は心のなかで愉快そうに笑う。決めた、欲しい――この少女が欲しい。 それは狂気にも似た渇望。この青年が魔王になったそれでもある
ただ、喋らずゆっくりと待つ、にこやかに、笑顔のまま
細巻きがゆっくりと灰になっていくのを見つめながら
「落ち着いたかな?もう一本吸うかい?」
相手が落ち着くのを待つ。静かに、自分に敵意がない事を示すために。
そして、一本目が灰となって落ちてから、ゆっくりと語り始めた
「私の目的――ふむ…私の目的は「すべての種族」が幸せになる世界を作ること。魔族も、人間も、天使も、ミレー族も…皆が幸せに、暮らせる世界を作ることだよ。」
とんでもないばかみたいな話を、堂々と、誇らしげに語る。嘘はついてないし、騙すつもりもない。
「そのために、ボクに協力してくれる人を、ボクが気にいる人を探してる。そして――キミと出会えた」
■セイン=ディバン > 少女の舌打ちもなんのその。格上たる相手が見事に余裕を崩さない。
これこそが持つ者の余裕よな……憎らしい。そう考えつつも。
少女も余裕……の演技を崩さない。本当は今すぐにでも逃げたいけど。
「……ふん。ありがとう。
アンタこそ吸う? 魔族の国原産。血刀草の細巻きよ」
わざわざ吸い終わるのを待ってくれていたのか、と。
内心意外に思いつつ、少女はもう一本細巻きを咥え、相手にも差し出す。
魔族の国でしか取れない草を原料にした、高級な細巻きだが。相手は喫煙者だろうか。
「……!!」
相手の言葉を目を細めながら聞いていた少女だが。その言葉、相手の目的に、目を見開く。
そのまま、相手に詰め寄り。
「その話、詳しく聞かせて!!」
まさかの食いつき。そう、少女もまた、同じ目的をもっていたからこそ。
相手の言葉をもっと聞きたくなったのだ。
■ラシュフェル > 青年は表情を崩さず、静かに待つ
たかが数分で彼女の不安が取れるならいくらでも待とう
彼女を追い詰める気は毛頭ない。 追い詰めて協力者になるような安い相手は要らないのだ
差し出された細巻きをにこやかに手で制して
「残念、キミの手料理ならなんでも食べたけれど、細巻きはやらないんだ。気持ちだけ。
細巻きが好きなら、今度は手土産に持ってこよう。」
さて、話を進めようか、とした矢先、詰め寄ってくる相手に初めて目を丸くする。此処までは普通はただの与太話、空想で済ませる相手ばかりだったのに。愉快そうに目を細めてから
「キミは面白いね、そんな態度をしてきたのはキミが初めてだ。
うさんくさい、だとか思わないのかな?」
ニコリと笑ってから、説明をしよう。と
「私の領土では、人間も堕天使も、魔族も、獣人も、皆階級無く生きてる。私と、私に同調してくれた『寵姫』達で理想の世界を作ろうとしてる」
小さく、息を吐く。此処まででも気の長くなる時間出会ったことを思い出すように。そして、まっすぐ見つめながら
「世界は、新しい支配者が必要だ。国が、種族が、自由を阻むなら其れを壊すものが必要なんだよ」
■セイン=ディバン > 声をかけられた時から思っていたことだが。この相手……。
領主という名乗りに偽りは無いようである。言葉遣いも丁寧だし。
その振る舞いも、嫌味にならないような優雅さがあった。
生憎と、それも生まれ育ち両方悪い少女としては鼻に付くが。
「ふ~ん。……生憎と、私の手料理は高いわよ。
妻と娘と恋人くらいにしか振舞わないんだから」
相手の言葉には舌を出し、お安くありません、とアピール。
何気に妻がいる、とか言っちゃってるが。気にしない。
むしろそれで退いてくれるなら安いものなのだが。
「あらそう? アナタのその言葉、興味があるのよ。
興味があることには喰い付く飛びつく。それが冒険者ってもんでしょ。
胡散臭いかどうかは、話の骨を聞いてからでも十分判断できるでしょ」
少し高揚したような様子で、饒舌に語る少女。相手の笑顔には、言外で、「早く早く」と催促しながらも。一度落ち着いて深呼吸。
「本当に……? だとしたら凄いけど……。
……? 寵……姫? 何それ。役職?」
相手の言葉に感動したような様子を見せる少女。寵姫、という聞きなれぬ言葉には質問をし、もっと深く話を聞こうとするが。
「……支配者、ね……。つまり、アンタが支配者になるってこと?
……へぇ~……」
支配者、という言葉を聞いた瞬間。少女の瞳から熱が消える。のみならず、乗り出していた身を引き。相手を……上位者であるはずの相手を。
見下すような視線を向けたのだ。おおよそ人間如きがしていい行為ではない。
■ラシュフェル > 「ふむ?人間にも同性愛者はいるのだね、それとも、両方いける口かな? もしそうならありがたいんだけどね」
軽く、肩をすくめて見せる。無邪気な笑顔はそのままで
お金で君の手料理が食べれるなら安いものだろうね、と返す。
妻と娘がいるのか、まあ、重要なのはそこではないから良い
もし、協力者に――寵姫になるならどうでもいいのだ
「ふむ?人間がこんな話に興味があるのかい?
人間はこうしてミレー族はもちろん、人間同士ですら奴隷にするじゃないか。君は珍しい種類にはいるのかな?」
「寵姫、というのはボクが勝手にそう呼んでるだけだよ
ボクが愛し、ボクのことを愛してくれるお姫様。まあ、僕の大事な人たちだとおもってくれていい」
と、相手の目つきが変わった。瞳の色からして――失望させたか。
まあ、所詮自分は魔王なのだ。予想以上に食いついたのを観る限り、期待が大きかったのだろう。
自分を見下すような目つきをさせたまま、逆に問いかける
「では問おう、君の目的は?そしてそのために何を求めて何をするんだい?」
先程の態度を見れば想像はつく。彼女も求めてるのは一緒だ――しかし、自分のやり方を聞いた瞬間に醒めた。ならば、何が理想なのだと
■セイン=ディバン > 「同性愛者じゃねーっつー。いや、人間には同性愛者もいるんだけど。
……私は普通に異性愛者。こんな身体になったのは、呪われたせいだってのよ。
元は30過ぎのオッサン。ま、簡単には信じられないだろうけど」
相手の指摘に反論するものの。自身の今の肉体ではそう思われても仕方が無い。
やれやれ、やはり早急に呪いは解かなくてはなぁ、と改めて思うのであった。
「逆に、人間がそういう話に興味があっちゃいけない?
……それは。そうだろうけど。人間全てがそういう存在じゃないわよ」
逆に、人間全てが善性を持っている、とも言わない少女。
自身が外道で小物で小悪党なのを自覚しているからだけど。
「……あぁ、要するにハレムの一員とか。愛人とかそういうことね?」
なんだ。難しい言葉だけど。要するに領主のお抱えってことか。と納得。
そのまま、相手を冷ややかに見つめながら。少女は相手の言葉に鼻を鳴らし応える。
「決まってるでしょ。私は、悪魔も古竜も大妖怪も魔王も神も超越した存在になる。
で、人類も魔族もそれ以外の全ての種族も。私がまとめて滅ぼそうとする。
そうすりゃ、魔族も人間も手を取り合うでしょ?
で、最後に。私が滅ぼされればハッピーエンド、ってわけ」
少女は。未だに妻にも話していない。最近思いついた計画を相手に話した。
どんなリアクションをされるだろう。笑われる? 呆れられる?
なんにせよ、相手以上に荒唐無稽な話なのだ。
■ラシュフェル > 「…ふむ、呪いか。君の瞳の強さは、人間としての経験から着てたんだね。なるほど、納得した。 異性愛者、というが、今の君が異性愛者というとどちらが好みか分からないところがあるね」
と、くつくつと笑う。ジョークも多少は言うらしい
呪われてるとは言え、外見は可愛い、と言える。そして賢い。
魔王が気にいる理由はあれど、嫌う要素がないのだ。このぐらいは許容範囲である
「人間で興味があるのは少数派だろうね。勿論、魔族にも色々な者がいる――私みたいなのは異端だろう。まあ、だからこそ私自身が動いたのだけれど」
「あはは、全てが妻であり恋人かな。心から彼女たちを愛してるよ」
恥じらいもなく、そう答える。その表情はとても楽しそうだ。
魔王、という立場には見えないかもしれない。それほどに愉快そうに笑う。
「―――」
静かに――魔王は少女を見つめる。言葉を一つ一つ飲み込み、飲み下す。笑顔も消え、しかし怒りや威圧するわけでもない。
ただ、静かに首を振った
「それはダメだ、きっと皆が力を合わせてキミを滅ぼそうとするだろうね。きっと一致団結して、協力しあうだろう」
少女の荒唐無稽な考えを認める。しかし、それはダメだと、当たり前だ
魔王は、立ち上がり、睨みつけるような視線を送りながら右手を伸ばした。もし、許されるならその頬に手を当てる
「でも、その終わり方じゃ――キミがひとりぼっちでキミが幸せにならないじゃないか」
まっすぐ睨む。なにより、それが許せないと怒るように
■セイン=ディバン > 「瞳の、強さ……? よく判らないけど……。
……う゛っ、人が気にしていることを……」
瞳の強さなど、自覚したことも無いし、気にしたことも無かった。
どういう意味だろうか、と考えていれば、冗談を言われ。
しかしその冗談が少女にとっては笑えないことだったので、赤面してぷるぷると震えはじめる。
「ま、そうだろうけど。……へぇ……。
アンタ、面白いわね。貴族、ってか。領主っぽくないっていうか。
……あ~。その言葉と横っ面ひっ叩きたいけど、できないわ。私もそういうとこあるし……」
少し意外だ、というように。少女は警戒心を薄れさせ、そう言った。
最後の言葉には、自虐も含まれているようで。どうやらお互い愛の多い存在のようだ。
「……なによ。黙って。怒った?
……そうね。そうあってほしいわ。それこそが私の望みよ。
強大な悪を目の前にして、全生物、全種族が手を取る。最高じゃない」
少女は、相手の言葉に。首を振る仕草に。怯まず応える。
まっすぐ相手を見たまま。一片の迷いも無く。
「……幸せ? 魔族らしくない言葉を口にするのね。
……アタシは、もう幸せを貰ってる。素敵な妻。可愛い娘。可憐な恋人。素晴らしい出会い。
……だから。私はこの世界に恩返ししなくちゃいけないの」
言葉は強く。しかし、相手は気付いただろうか。頬に触れられ、言葉を投げかけられたとき。
瞳に、迷いのような揺らぎが生じたのに。
■ラシュフェル > 「意志の強さ、魂の強さ、といえばいいのかな
まあ、褒め言葉だと受け取ってくれればいいよ
あはは、その反応を見るに、両方イケるクチかな、今の君は」
あはは、と笑う。自分は貴族でも領主でもない、魔王として生きてるのはそういう立場が必要だったからだ
「キミは私を勘違いしてる
私は支配者になりたいわけじゃないし、権力に興味はない
権力や支配に興味があるなら、魔界で領地争いをしてる方が賢いだろう。
私が魔王になったのは、魔王が必要だったからだ」
静かに、微笑みながら言う。力のない者、種族、生まれだけで蔑まれる者、資質を持ちながらも、其れを活かせず屈服するだけのもの
それらを救いたいからこそ、魔王になったのだ
少女の考えは理想論だ
人間が超越者になれる道理がない、魔族ですら、神ですらその極地に達するだろうか怪しい
そして、其れが牙を向けば、その時は超越者を滅ぼす為に手を組むかもしれない――でも、其れが終わればきっと、何もなかったかのように再び争いが起こるだけだ。
でも―――そんなことはどうでもいい、そんなくだらない理由の為に怒ってるわけではない。魔王は怒りを露わにしていた
目の前の稚拙にも崇高な考えを持った少女が幸せにならないなんて許せない
「ふざけるな!」
魔王が初めて口調を強めた。明らかに怒りを露わにしながら怒鳴るように続ける
「そうだった、キミには妻が居て、娘がいたね
その人達の幸せも奪うのか?可憐な恋人はキミともう会えないのか?
なにより――キミは彼女たちを失う終わり方でいいのか!」
くだらない――くだらないくだらない!どうして、こんなに真剣に世界を見つめてる者を犠牲にしないといけないのだ。そんな世界を変えるために自分がいるのだ。
この少女も、妻も娘も、幸せにしたいと願って何が悪いと言うんだ
魔王はまっすぐ少女を見つめ――その瞳の迷いを見逃さない
「やめよう、キミ一人が犠牲になる幸せなんてボクは認めない」
顔を寄せる。ゆっくりと、ゆっくりと。もし、拒まないならば、愛おしくキスを落とそうと
■セイン=ディバン > 「ふ~ん……? 褒めてるならいいけどさ。
……うっせ! 答える義理も義務もない!」
相手の言葉が褒め言葉だと判り、微笑むものの。痛い所を指摘されれば、赤面を強くし、言葉を打ち切る。が、それは相手の言葉の肯定にしかならない。
「……その言葉を、まんま信じろって?
アタシだってそんなに頭の中ハッピーハッピーじゃねぇっつー。
……って、魔王なの……。あぁもう。魔王の知り合いばかり増える!!」
相手の言葉は一理あるものの。かといって鵜呑みにはしないようだ。
だが、相手の改めての身分紹介には、頭を抱え、髪をがしがしと掻き毟る。
少女とて、空論と知った上で言っている。
それでも、諦めない。それでも足掻く。だってそうしないと。
妻の身柄は、安全にならないのだから。
「!? い、いきなり大声出すなっつー!!」
怒声浴びせられ、少女がびくりと身を竦める。
しかし、続いての言葉には気まずそうな表情になり。
「……本当に、痛い所を突くなぁ、アンタは……。
もちろん、それはアタシだってイヤだけどさ。
アタシ、バカだから他の考えが思いつかないっつーか」
見事、心の弱さを発見され、畳み掛けられる少女。
実際……死にたくなんて無い。それでも、考えが及ばないのが事実なのだ。
だが、そのまま唇を近づけられる。一瞬の迷い。
少女は、頭を軽く振り、相手の唇に人差し指を添えてそれを止めた。
「……怒ってくれてアリガト。もう少し、方法は考えてみる。
だけど、今はキスはダメ。それは……次の機会に。
でも……アンタの言葉、嬉しかったから。
……こっちは、使っていいよ」
キスを止めるものの。少女はするり、と服を脱いだ。
現れたのは、成熟しきっていない裸身。だが、その股間には。
男性器と女性器。二つの物がしっかりとあり。
■ラシュフェル > 「信じる信じないは自由、人間は自分の信じたいものを信じるんだろう?
ふむ、魔王の知り合いか――是非その魔王とも会ってみたいものだが
君の『理想』にその魔王達は賛同してるのかい?」
まあ、嘘をついてどうするの?といいたげに片目をつぶってみせる。
彼女の苦痛を、嘆きを、慟哭を、和らげてあげたいのだ
「…キミはどうして、そんな終末を――世界の均衡を望んだんだい?」
そう、そこに至るまでの道のりを聞きたい。ただのうのうと暮らす人間が、此処までの覚悟を持てるとは思えなかったから。だから、余程の事情があるのだろうと。そこを知れば、彼女を救えるかもしれない――そう思って
「キミは、妻を、娘を、恋人を――愛してる。心から」
人差し指が唇に当たる。キスは拒まれた、ならば素直に引こう。頭を離しながら
「ならば――妻は、娘は、恋人は――キミを愛してないのかな?
キミのそれは身勝手な自己完結にすぎない
他の方法を模索すべきだ、皆が幸せになる方法。
そのために悩むなら、一緒に私も考えよう、キミも、キミが愛するものも、幸せになる方法を」
衣服をするりと晒す少女、それを見つめながら首を振る
自分が欲しいのは、少女の身体ではないのだ
そして、妻や娘を愛するという強い気持ちを聞いた以上
「キミを抱くのには覚悟が必要そうだ、戯れに抱くのはやめよう
ただ――私は魔王として、キミが欲しい。それだけは覚えておくと良い。」
脅かすように言って、戯けてみせる。
これだけ強い魂をもった少女だ、欲しい――自分のものにしたい
だからもっともっと、少女のことが知りたい
「さて、キミはどうして、世界を救おうなんて思ったのかな?」
■セイン=ディバン > 「……そ~いう、余裕のある上から目線が。小物たる人間には耐え難いって~のよ……。
……知り合い、っつーか。妻が魔王。この身体を呪ったのも別の魔王だし……。
……してない、でしょうね。言ってもいないし」
そもそも生きる年数も違うし。生物としての資質的なものが違いすぎるのだが。
故に見通され、また指摘される。少女としては、そこまで読まれていてはお手上げであった。
「ん? ……話すと長いから短くまとめるわよ?
妻と出会って一目ぼれして告白して結婚して。
妻は魔王だから、人間に襲われたりするかもしれないし。
どうせなら、魔族と人間が仲良くなれば、妻が襲われないかな、って。そういうこと」
自身の過去。その転機になったことを口にする。何気に、人に話すのは初めてかもしれなかった。
「……まぁ、ね。浮気性と言われても。
私の愛は本気で本物よ」
自身にとって都合のいい言葉だが。本当に全員に本気なのだから仕方ない。
「……あ~、もぅ。わかった、わかったってば。私の負け!
はぁ、アンタ、変わってるわね。アタシを手篭めにするなり脅すなり、やりかたなんざいくらでもあったでしょうに」
そう。強制的に協力させる方法はいくらでもあるだろうに。
それをしなかった相手。当初の警戒心はどこへやら。お手上げ、とばかりに両手を挙げて。
「……ふふっ。戯れ、じゃなくて。アタシに本気になっちゃったら。
抱いてくれても良いわよ? ただし、溺れても知らないけどね。
……そりゃまた。光栄だこと」
相手の真面目な声に、少女は逆にからかうように言う。当然、照れ隠しのようなものだ。
「……? いや、世界を救おう、とか考えて無いわよ。私。
あぁ、いや。私の理想が実現したら、それは世界を救ったことになるのか?
えっと。要するに。仲良くできる人類と魔族とそれ以外さえいれば、私的にはオッケーなのよ。
だから、ミレー族を捕まえてた奴隷商人の人攫い野郎どもは殺したし。
逆に、人間を意味も無く襲う魔族とかも痛い目見せてきたし」
服を着なおしながら。少女はそんなことを、けろっ、と言ってのけた。
そう。今の考えにいたる前の考え。それが少女の根元。
『仲良くなる意思の無いヤツ等は完全に排除すればいいじゃない』
危険思想極まりない。