2017/09/28 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にオデットさんが現れました。
オデット > 奴隷市場に群がる人々の隙間を縫い移動する女は 場違いに困惑した表情を浮かべていた。
此度こんな都市に出向いたのは“おつかい”であり、それはたびたび
押し付けられることがあったのだが、従業員を買ってこいなどというおつかいは初めてである。
そこまで人手不足とは思えぬものの客の好みに合わせれば多種多様な従業員を揃えた方がいいのかもしれない。
となると、実に難しいおつかいであった。

「…あの…こちらの女の子はどちらから連れて………いらしたの?
 そう、シェンヤンから。どおりで顔立ちが少し違うと思ったら。 ……おいくら?」

たどたどしくも奴隷商と会話をする女は長居したくないせいか、ろくに品定めもせず値段の話に移る。
手練れの商人相手では有利な商談など得られるはずもなく…

「ま、ぁ…そんなにしますの? どう…かしら…、いえ、出せない額ではありませんけれど…」

十人十色である奴隷の相場はさっぱり分からない。
押しに弱い性格も相まって、奴隷商にせっつかれながら女は逡巡中。
何なら檻の内側にいる方が自然なタイプなのである。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 巨大奴隷市場たる街、バフート。ともすれば黒い噂しか聞こえぬ街だが。
実は、奴隷を購入する他にも、召使などを雇う際非常に便利なものなども購入できたり。
そういう買い物という名目で街をうろつく少女一人。

「とはいえ。そうそう掘り出し物などない、か」

実際、日用品肌着小物などなど。普通に買うなら王都の方が品揃えはいい。
この街で買うとすれば、掘り出し物に訳有り品といったもので。
今回はハズレかな、などと思っていれば、なにやら奴隷商人のやたら元気な声。
ふむん? と思ってそちらを見れば。交渉相手の女性はどうにも困っている様子で。
少女は、興味本位で聞き耳立てつつその交渉を聞いていたのだが……。

「……失礼っ。……あらあら店主さん? この子、ずいぶんとお若いですけど。
 奴隷取り扱い法規定内の、『労働力としての売買』に関する年齢制限はクリアしてます?
 書類見せてもらえますか? いや複製ではなく原本。早くして? じゃないと管理局に確認しますよ?」

すすっ、と交渉に割り込み、商人になにやら物騒な言葉を投げかける。
途中、ちらり、と女性を見ながら。商人の死角になる角度でウインク一つ。

オデット > 悩み、困っていたところに割り入ってくる少女。
あれだけ口の回っていた商人が彼女に言い包められている場面を女は ぽかんと見ていた。
発言内容の何割を理解していたのやら。
それはもちろんこういった商談に慣れていないことが大きかったが、
それに加えて救いの手を差し伸べてくれたのが歳若い少女だったという意外性もある。
しかし、それが偶然ではなく意図的に己を助けてくれようとしているのだと
気付いたのは、意味深な目配せがあってから、だったが。

「…………あ…あの…この子、どうなりますの?」

どちらかといえば、慌てるそぶりの後に少女を追い払おうとする商人より、少女に尋ねるように呟いた。
商品として売買規定に引っかかるのだとしたら檻の中の娘はどうなるのだろう。
よもやこんな商売をしている者が国まで親切に返してくれるとは思えない。
―――己の知らぬ所でまた売り出されるというのも何だか可哀想だ。

セイン=ディバン > 元々無知浅学の身であった少女。だが、最近は色々と勉強する喜びに目覚めたため、様々な国内の法律を少しずつ覚えてきている。
それを活かし、困った人を助けたい……。
などという殊勝な気持ちは少女には無い。女性の交渉に口を挟んだのはただ純粋に。
交渉慣れしていない相手に値段を吹っかけている商人を苛めて楽しみたい。
そんな気持ちだけでもって。行動を起こしただけに過ぎないのである。

「……?」

ぎゃーすかぎゃーすか。商人と問答をしている最中、女性に声をかけられ、相手の言葉を吟味する。
どうやら、この女性は商品である女の子の身を案じているらしい。
奴隷を買いに来たにしては随分優しいな、と思い相手の姿を見れば。どこかで見たような気がして。

「……ふむ。商人さん? 私も別にアナタの商売を完全に潰したい訳じゃないんですよ。
 どうです? 法に触れていたことは内密にしますから。不当に釣り上げていた値段をちょっと割り引いてこの方に買っていただく、という所で手を打ちませんか?」

このまま商人を苛め抜いても、結果は面白くなさそうである。
ならば、と少女は商人に提案する。商人は苦悶に満ちた表情のまましばらく唸っていたが。
盛大な溜息を吐くと、女性に向かって、再度値段を示す。
その価格は、最初に提示された値段より四割ほど値引きされており。

オデット > どちらかと言えば感情のままに流されて生きてきた女である。
それは修羅場を潜ってきたというものではなく、戦場も知らぬお嬢さま育ちが
うっかり枠からはみ出てしまっただけの甘っちょろい境遇。
こんな時、困り果てるだけで何もできないのだから。
それでも事の成り行きを見ていると商人が遂に白旗を上げたのだけは分かった。
提示された金額に喜んでいいのか驚けばいいのか。やはり狼狽えるしか。

「よ…よろしいのですか? いえ、お支払い致します。…はい、はい…」

『早くどこか行ってくれ』と言いたげな商人に急かされて手続きをすると商談はどこよりもスムーズに進む。
己の滞在する宿に連れてもらうよう頼めばこれで任務完了。
檻の中の少女は相変わらず暗い表情だが今後どこでどう扱われるのか分からぬ立場だ。無理もない。
実際、彼女は今後宿で働きながら誰とも知れぬ者に股を開く日々である。
それを救いと呼べるのかどうかは―――

商人との話を終えると女はそこでようやく忘れていることに気付く。
少女がどんな意図で割り入ってきたのかはともかく、女にとってはこの上なく親切にしてもらった気分だ。
まだそこにいてくれるのなら直接、もしもどこかへ行こうとするのならそれを止めるように声をかけようと。
これだけは伝えておきたい。

「ありがとうございます。お若いのに世慣れていらっしゃって…
 我が身が恥ずかしくなりますけれど、とても助かりました」

セイン=ディバン > 元来、自由を愛し、気ままに生きてきた少女である。
人を助けるも見捨てるも気分次第。今回はたまたま気が向いたから女性を助けた……。というだけでもなく。
少女は、交渉を纏めている女性から視線を外し、檻の中の少女に声をかける。

「そう暗い顔しないの。少なくとも、アナタが買われた場所は、クソ溜めの中じゃマシな方のハズよ。
 買われて解体されておもちゃにされるよりは、だいぶ人間らしい暮らしができるわ」

少女の言葉に、商品たる女の子は、表情を明るくすることはなかったが。
それでも少女はその子に笑顔で手を振り。さて、暇も潰せたし帰ろうか、と思っていれば。
女性に声をかけられ、向き直るように振り向く。

「いえいえ、とんでもない。私、こう見えても本当は三十過ぎのオッサンなんですよ。
 お役に立てたようでなによりです」

丁寧に声をかけてくれる相手にケタケタと笑いながら応える少女。
そのまま懐から愛飲の細巻きを取り出し、咥え。

「間違いだったらごめんなさいなんですけど。
 アナタ、九頭竜の水浴び場のとこの宿で働いていません?
 私、そこの常連みたいな者でして。あ、名乗り遅れました。
 セイン=ディバン。冒険者です」

ぷかぁ、と煙を吐きつつ自己紹介。その様子は、間違いなく少女の見た目なのに、酷く歪に見えることだろう。

オデット > それまでの印象は幾つも年上の商人と渡り合える豪胆で聡明な少女だというものであったが。
言葉の端々に見られる少女とは思えぬ言葉遣い。
そして突飛もない発言に女は緩やかな貌のまま―――数秒停止。
頭の中では様々考えているのだが、反応できるほどキビキビ作られていないのである。

「―――――………あぁ…宿帳でお名前を拝見したことは…。
 存じ上げませんでしたわ…。歳とお姿が人間とは違う方はいらっしゃいますけれど…
 えぇ…と…、セインさまのご種族は男性がこのようなお姿をされていますのね…?」

思わずまじまじと見てしまう。
中性的なタイプとも違う。どう見ても少女にしか見えない。胸もあるように見える。
しかし己は狭い世界しか知らないし、こういった種族もあるのだろうと納得しようとした。
あまりに驚きが勝ったので忘れてしまったが、慌てて会釈をし。

「申し遅れました。仰る通り、九頭龍の水浴び場で働いております、オデットと申します。
 たしかセインさまのお部屋を担当した者が―――――…
 いえ、間違いですね。何でもございません」

どこかが大きいだとか、そんな話を従業員の控室でしていた気がする。
しかし紫煙吐き出す今の様子はともかく、可憐な見目の彼女とのギャップに脳がついていかなかった。
自身の記憶の間違いだということにして、口を噤み。

セイン=ディバン > 改めて向き直り、まじまじと相手を観察する。
美しい、と言えるが。どちらかと言えば、色っぽい、艶のある女性と評するほうが正しいか。
物腰の柔らかさは、母性を感じさせるが。なによりもその豊満なバストに目が行く。
少女の女性経験の中でも、最大級と言っていいほどの大きさだ。

「ここ最近は、疲れを癒すときにはあの宿が効果覿面で。
 ついつい通ってしまうんですよねぇ。
 ……ぷっ。あははははははは!! 違う違う、違いますよ。
 正真正銘、人間の男です。ちょっと呪われて、耳と尻尾と性別が、えぇ」

色事を差し引いても。行きつけの宿の癒し効果は高い。
それとなく宿を褒めつつ、相手の言葉に思わず吹き出し、声を上げて笑うが。
事情を説明しなくては、確かに判らないだろうな、と判断し。改めて補足説明をする。

「オデットさん、ですね。覚えました。
 宿で働いている姿を何度か見ましたが。丁寧なお仕事ぶりで好感が持てましたので、覚えていたんですよ。
 ……? 私の部屋を担当したものが、なんですか?
 あ、もしかして。私の部屋の使い方が荒いとか酷いとか?」

相手の名を、記憶に刻む。今後宿で何か頼むこともあるかもしれない。覚えていて損は無いだろう。
だが、続く言葉に少女は眉を顰める。途中で言葉を切られれば、気になるのは人の性だ。
とはいえ、少なくともあの宿の従業員には手を出していない……筈なので、心当たりが無い。
少女は思い切って、直接尋ねてみる。

オデット > 観察し返すような視線が気にならぬほど、相手の存在は奇異である。
もともとそう強く持ち合わせてもいない筈の好奇心をくすぐられるほどには。
ますます驚くように目をぱちぱちと まばたきさせ。

「まぁ…呪いで…?それは困りませんの?」

どうも相手の様子が困っているようには見えず、女は素で尋ねてしまった。
耳と尻尾はまだしも性別が違えば色々と180度変わりそうなものだが、
他人事だと愉快なこともあるのかも、などという暢気な考えも。

「………いえ…そのようなことは……」

まさか同僚が盗み見しただなんて思わない。
当然少女と同僚がそういった行為に至ったのだろうと憶測していたが――そうなるとやはり少女には付いていることになる。
世の中にはそういう性別もあるのだと知ってはいるものの、それを想像するには少女の姿は可憐に過ぎたらしい。
それとも少女が男性であった頃の話だっただろうか。記憶は定かではないのだ。
ともかく不自然に赤くなった頬が熱を持つのを感じつつ、ごまかすことに。

「お気になさらないでくださいませ。お優しい方だと申しておりました。
 それより私、セインさまにお礼をさせて頂かなくてはなりませんわ。
 今は何も持ち合わせておりませんので、またご宿泊頂く時にでも何かサービスさせてください」