2017/07/13 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート 中央広場」にアザレアさんが現れました。
アザレア > 無計画な逃亡劇は、わずか半日ほどで幕引きとなった。

『もう勘弁ならん』という主の言葉に、しおらしく俯いてみせたなら、
結末は変わっていたのだろうか。
―――――否、きっと変わらなかっただろう、という確信がある。
そんな甘いことでは、この街では生き残れないのであろうから。

とにもかくにも、広場である。

見目麗しい、あるいは珍しい『商品』がオークションにかけられたり、
公開調教と銘打った淫猥な見世物がひらかれたりする場所だ、という、
知識だけはあったけれども――――
今宵、『商品』で『見世物』なのは、己自身だった。

頑丈な黒鉄の拘束具は、ちょうどギロチン台にかけられる罪人のように
首と両手首を平行に固定し、両脇へ立つ二本の支柱に繋がって、
己の姿勢は前のめりに、頭を項垂れさせ、尻を無防備に突き出す格好。
上質だが薄手の生地で作られたドレスはなんとも心許無く、
傍らで口上を述べる主の存在は、どこまでも腹立たしい。

『磨けば光る』やら、『手垢のついていない新鮮さ』やら、
もっと下世話な言葉も並べ立てられているようだが―――――

取り敢えず、立ち止まってこちらを見る通行人にも、観客たちにも、
ひとしく憎悪にぎらついた眼差しを向けてやろう。
己は決して、大人しく売られも、調教されもしないのだ、という意志を、
碧い瞳にせいいっぱい籠めて。