2017/02/26 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にイーリスさんが現れました。
イーリス > 昼下がり。奴隷都市の中央広場は、いつも以上の活気に満ち溢れていた。
広場の中央に位置する小さなステージ…人が5人も乗れば窮屈になるその場所は、まさしく「ステージ」と称してよかった。
それを取り囲む人垣は幾重にも重なっていて、喧騒に包まれている。

「………」

その様子を、広場の端の酒場の壁に凭れ、静かに眺める人影一つ。
腕を組み、涼やかな眼差しが向けたステージの上では、次から次へと奴隷が登り、競りにかけられている。
女や子供は身体を、男は力と体力を、老人は知恵を買われていく。
種族も多様で、ちょうど視線を向けた先では、ミレー族の少女が競りにかけられ始めた。
それを幾重に取り囲む連中の喧騒は増し、中には怒声に紛れて卑猥な声をかける連中もいたが、それを聞いても、顔色一つ変えず、ただ眺めているだけ。

イーリス > 腕を組んだまま、壁に背を預ける態で様子を眺めていたところに、不意に影が差すように人の気配を感じて顔を上げると、屈強な男が一人やってきたところだった。

「首尾は?」

腕を解き、短く問うと、潮焼けした肌をもつその男は手にした皮袋をひょいと掌で弾ませて笑った。この不用心さともいえる行為も、よほど腕に自信がある現れなのだろう。

「そうか。…でも、よかったのか?お前、気に入った「モノ」があっただろ?」

彼がさばいてきた「モノ」には、彼が気にいったモノがあったはずだ。
それを口にすると、男はけらりと笑って『顔は気に入ってたが、俺はお頭みたいな巨乳が好…』と億尾もなく口にしたとき。

「…へぇ、誰が、ナンだって?」

男が言い終わるより早く、その男の頬をがしっと片手で鷲掴み。
冷ややかな眼差しは、更に冷酷さを増して男を見上げるから、男は大きく首を振って、ジョーダンデス!ジョーダン!!と慌てたように前言を詫びる。

「次、くだらねぇこと言ったら、簀巻きにして海のモンスターの餌だな」

ふむ、それは名案、と己の言葉に満足そうに頷き、手を離すと共に、ぺちっと男の頭を一叩き。
屈強な体躯を小さく丸めて、解ってますって、などと調子のいいことを言う男を見て、やれやれ、とばかりに首を竦める。

襲撃した客船から攫ってきた女たちをここで捌いてきたわけだが、良心の呵責だとか、道徳観だとか、そんなものを持ち合わせていないのか、二人のやり取りは非日常でもあり、この街では日常でもあった。

イーリス > 手際よく「モノ」も捌けて実入りもいい。となれば、ここに居る必要もない。
帰るぞ、と声をかけると同時に歩み出す。
空は明るく晴れてはいたが、この街独特の雰囲気か、どこか陰鬱とした雰囲気が漂う。
くだらない揉め事に巻き込まれる前に、街を離れるのが得策だろう。
屈強な男を伴い、街を後にしていく………。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からイーリスさんが去りました。