2016/12/29 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 年越しの日が目と鼻の先に転がっている年末の夜。王都での挨拶回りに辟易している妖仙は、己の心の赴くままに術を用いて、短時間の内にこの都市へと飛んでいた。私利私欲の為に人ならざる力を行使する辺り、邪仙らしいといえば邪仙らしいが、スケールがなんとも小市民じみている。ともあれ、この奴隷市場界隈の賑わいは時期に関わらず盛況らしく、無分別で雑然とした喧騒に、格式ばったパーティー等に当主の名代としておすまし顔を保ちながら参加し、聊か硬直気味だった心根が心地良く解れていくようだ。
「く…あぁ。今年の雑事は殆ど終わった故、多少は羽を伸ばせようものじゃが…」
開放感から、大きく伸び。この小さなシルエットは、風俗の紊乱甚だしい街角で浮きに浮いているけれども、それを咎める良識的な人間であればある程、この界隈に足を運びはすまい。商い事の挨拶回りと同様に、馴染みの奴隷商人の店に顔を見せる。凡そは他愛のない雑談と冗談口を叩き合い、良い出物はないかと様子伺い。それが一軒ではなく、両手の指を動員し幾度か折り返して数える数ともなれば、如何にこの辺りに出没しているかが知れようものだ。
「嗚呼、主人よ。時に獣の娘はおらんかのぅ。何、この時期、小動物的なもふもふ感が恋しくなるものと相場が決まっておるじゃろう?」
何件目かの店先で、でっぷりとした褐色肌の丸顔をした主人と世間話。それが自分の為の奴隷なのか、取引相手への付け届けの為の奴隷なのかは判然としないものの、そんな要望を零した。もっとも、子供にしか見えぬ風体ながらに、誰も彼も小僧だの小娘だの言い鳴らす妖仙のこと。額面どおりに小柄である必要は欠片もないだろうけれど。
■ホウセン > 公的なものではなく、私的な遊興人としての挨拶回りとはいえ、それでも十や二十の店に顧客として扱われている妖仙のこと。酔狂な趣味人として、同時に金払いの良い上客として奴隷商人達に顔と名前を覚えられているだろうし、噂話の一つや二つ流布しているとしても不思議ではない。異国出身の助平なドラ息子且つ大金なり、早々手に入らぬ珍品なり、様々な物を融通できる商売人。子供の姿形をしているせいで与し易いと目される事も少なくなく、”使いでのある便利な存在”として、この妖仙の嗜好なり所在なりが、情報屋の間で取引されていても、それもまた不思議ではない。
「嗚呼、誰も彼も考える事は似通うようじゃな。善い、既に売約済みならば無理は言うまいよ。」
生憎と、この店では妖仙の求めるような奴隷は売り切れだったようだ。特に機嫌を損ねていないと、微笑未満の表情を浮かべて新年も変わらぬ友誼をと挨拶し、軒先を離れる。煙管入れから、黒漆と銀で出来た細工の優美な煙管を取り出して口の端に銜える。今はまだ紫煙を燻らせるつもりはないようで、格好だけ。次に顔を出す奴隷商人の店を見繕いながら、ピコピコと煙管の先端を上下に揺らす。小さくて逆に目立つ姿に異国風の出で立ち。情報屋を頼ってでも、この妖仙と交渉なり取引なりを持ち掛けたいという切羽詰った人間からすれば、見つけるのは難しい話でもあるまい。斯様な者が現れるかは、神のみぞ知る所。足は、賑わいに引き寄せられ、知らず知らずと市場の中心に向って。
■ホウセン > ふらふらと、さながらひやかしのように。小さな影は夜の賑わいに紛れて…
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からホウセンさんが去りました。