2016/12/11 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 昨日は港町の大歓楽街。日が昇ったら、ストリップ劇場に併設された客室から艶々と満足げなツラででてきたかと思えば、日も空けず奴隷市場都市に姿を見せる小さなシルエット。完全な遊興目的のみで都市間をひょいひょいと動き回れるものではなく、奴隷商人との商談やら納品やらといった仕事が付いて回っているのだけれど。発注されていた品は、異国仕立てのお香。エキゾチックな奴隷には、相応の舞台演出が相応しかろうという奴隷商人の見立てに多いに賛同して、代金を少しばかり負けてもやった。引き換えに薄絹の扇情的な衣服の注文を引き出せた辺り、総収支はプラスだ。約束事は日暮れ前には片付き、今は自由時間。
「どれ、何ぞ面白げな商品は…」
夜だろうと変わらずに賑わいを見せる奴隷市場の只中。酷く場違いな妖仙が、通りのあちらを見たりこちらを見たり。お世辞にも治安が良いとはいえぬ界隈に居るにも拘らず、緊張感という概念が欠落している様子で。どちらかといえば、買う側よりも買われる側の方が映えそうな整った顔立ちをしていることが、一層不釣合いだ。軒を連ねる店々を覗き、掘り出し物は入荷していないかと具に観察する。宝探しをしているような心地で、自然と口元が緩んでしまっている事に気付き、体裁を保つ為に菊花を描いた扇子を広げ、顔の下半分を隠す。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にアイゼンブルームさんが現れました。
■アイゼンブルーム > 「まったく…昨日は空振りだったではないか……。」
(娼館に頼まれたものを取りに久しぶりに古巣の奴隷商を訪ねたのはよかったが、目的の物は届いていないという。 怒ってみたところで頼まれた物が出てくるわけもなく、翌日にということで再びこの街を訪れた。)
「何度歩いてもいけ好かない街だ……。」
(吐き捨てるように呟けば、足早に目的の店に行こうとすれば、年のころ10ばかりの少年がぶらぶらと店先を眺めているのが目に入る。
―――あいつ…、こんなところで何をしておるのか……。
その少年は私のかつての借り主だったのだ。
子供のくせに大金持ちで金に物を言わせて強引に事を運ばれ、弄ばれたのが昨日のことのように思い出される。
その貌を見れば露骨にイヤそうな表情を浮かべ、見つからないようにと人込みに紛れて迂回するように
目的の店へと向かい。)
■ホウセン > この通りの雑然とした賑わいは、気分が乗らぬ場合に紛れ込んでしまうと、酷い気疲れを催してしまうものだけれど、今宵のように商談が上手く纏まった後という昂揚期であったのなら、寧ろ外側からも英気だの活力だのを補充できているようで心が躍るものだ。尤も、気分の上昇によって地に足が着いていないのは否定できず、夕食を摂り忘れて闊歩している有様。
「ほう、其処な娘は王都で有名な義賊じゃったとな。その言葉が誠なら、掲げた値段も分からぬではないが。生憎、王都暮らしでない儂には、思い入れが薄くてのぅ。ほれ、娘の乳の薄さと掛けて、今しばらく積み上げる金貨を薄くできぬものかのぅ?なれば、即決で買うてもよいぞ。」
売り込みと、値切り。奴隷一人の命運を、軽妙なやり取りで左右する愉悦。丸顔髭面の奴隷商人が、顔の前で大きく手を振って『それじゃ商売にならん』と交渉の打ち切りを示すと、溜息一つ零して軒先を後にする。人混みでも、頭一つ二つ抜ける女を見つけたのは、その弾み。なにやら妖仙を避けようとする意図が透けて見えたから、小さな身体を活かして、人の行き交う大通りを面白いようにすり抜ける。
「呵々!戯けめ。その図体で、人に紛れられると思うたか。」
女の行く手へと先回りし、その進路上に土煙を上げながら滑り込むと、背筋をピンと伸ばした仁王立ちで閉じた扇子を突きつける。
――一夜一夜放蕩に耽る妖仙は、さして執着を抱く事もないのだが、厭う素振りを見せられたら嫌がらせをするのが人情であると信じて疑っていない。それ故の行為。
■アイゼンブルーム > …………。
(見つかった……。
人込みに紛れて何とか逃げおおせようとした己が馬鹿だった…。
チッと明らかにわかるように打たれる舌打ち……。
どうもこの少年の達観した雰囲気と人を人とも思わぬ言動が苦手だった。
せめて可愛げがあれば、靡こうものだが女を抱くときの房事はそれこそ獣のよう。
何度、足腰が立たなくなり啼きながら許しを乞うたことか…。
嫌そうな表情を浮かべて目の前に砂塵を巻き上げて立ちふさがる少年をじろりと見下ろす)
「よりによってこんなところで逢うとは……。
出来れば逢いたくなかったのだが……。こんなところで何をしている…。
また、金にあかせて奴隷でも買いに来たか?
私は少し先を急いでいるのでこれで失礼する。」
(ついてくるなと言った雰囲気を言外に滲ませながら、先を急ごうと少年の横を通って、かつての古巣。 ベック商会へと足早に歩いて行く。)
■ホウセン > 他人の嫌がることをして、その表情が歪むのを見物する。どうにも思考と嗜好の根っこの部分まで染み付いているらしい行動原理を塗り替えるのは難しいらしく、後先を碌に考えずご覧の有様といった風情。勢いよく小柄な体がすっ飛んでいったものだから、周囲の通行人やら商売人やらが怪訝そうな顔を向けてくる。目立っている。無駄に目立っている。大小の組み合わせも、ダークエルフと異国の子供という取り合わせも、視線を集中させる要素の一つ。
「そう邪険にするものでもあるまい。儂は儂の持つ資力の許す範囲で遊び、お主は契約に従った。その期間も過ぎて、今では只の顔見知りじゃろうに。それとも何かのぅ。儂の”愛で方”が気に入らず、根に持っておるというのなら致し方の無い所じゃが。」
妖仙がここに居る理由なんて訊くだけ野暮というもので、当人も碌に返事らしい返事をしない。さも女の性根の部分を見透かしているとでもいうような訳知り顔で、己の脇をすり抜ける女を何もせず見送ると見せかけて、その場でクルリと素早くターン。手にしていた扇子の腹でスパンっと外套の上から尻肉を叩こうとして。
「まぁ良い。精々、今の勤め先で励むことじゃ。」
己に対する不遜の罰として、顔見知りに対する景気付けとして。その一発が命中しようがしまいが、大柄な女の用足しを邪魔するつもりは無く、そのまま見送る心積もり。
■アイゼンブルーム > 「いや…契約に従ったというよりも従わされたのだ。」
(不愛想な顔がますます不愛想に、それこそ膨れてすねたような表情になる。
この少年はいつもそうなのだ、どこか人を食ったところがあっていつもいいように弄ばれる。)
「愛で方もなにもあったものでもあるまい。 あんなにむちゃくちゃにされたら、普通の奴隷なら泣き叫んでおるところだぞ。」
(周囲の注目を浴びてきたのか、人だかりの輪ができる。 それもそうだろう、明らかに目立つ組み合わせ。 身長差も相当なものだ。)
「まあ、とにかく私は先を急いで……ひゃあああああんっ!!」
(パシンとこぎみよい音を立てて扇子が尻に命中した。 途端に飛び上がって普段の声とは思えないような黄色い甲高い声が通り中に響き渡る。)
「く…くそっ!! 覚えて…覚えてろっ!!」
(やはり痛かったのか、瞳から僅かばかり涙を滲ませ、尻を少しさすりながら、足早に雑踏の中へと消えてゆき)
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からアイゼンブルームさんが去りました。
■ホウセン > 先達者の苦言というべきか、もう少し奴隷なり娼婦なりを加減して愛でろと言われたような気がするが、馬の耳に何とやらと同程度の効果しか持ち合わせないだろう。愛想皆無の渋面が罅割れて、通りに響いた素っ頓狂な声色に、日頃からその手の声が出せたのなら、少しばかり買い手なり借り手なりも増えるだろうにとは、言ってやるのが親切か、言わないでいてやるのが親切か。言えば言ったで発言者への反発心で意固地になるだろうから、言わぬが花というものかもしれぬ。
「応。覚えておいてやっても構わんが、今の恥ずかしい所まで全て飲み込んで覚えておく事になるがなぁ。」
果たして、その言葉が女の耳に届いたかは分からぬが、まだ喉仏も目立っていない喉の奥でくくくっと忍び笑いを漏らす。
「さて、もう少し見て回るとするかのぅ。」
忍び笑いも下火になった頃、扇子を角帯に刺して、両手は袂の中に。肩で風を切るような…という姿勢ではあるけれど、如何せん小柄過ぎて粋人の真似っこぐらいにしか見えないかもしれない。
■ホウセン > ペタペタと雪駄の底を鳴らして歩み進む。冬場の寒気の類であれば、十分に備えた服装をしているし、それでも凌ぎきれないのなら、符術の類を極小規模で発動させて暖を取る事もできる。然し、夕刻に摂り忘れた晩御飯分の空腹ばかりは如何ともし難く、整った眉が中央に寄る。無論、食事をせずとも生命活動に何ら影響を及ぼさないのだけれども、遊興に身を浸す事を第一義としているこの妖仙には、美女も美食も等しく価値を持つものだ。
「ぬぅ。少しばかり早まったかのぅ…」
商談相手の所で、目ぼしい店でも手配しておけば、今の体たらくに陥らずに済んだだろうに。空きっ腹を帯の上から撫でさすり、主に売り物の牝奴隷を眺めていた視線を、スタンド形式の軽食店へと向ける。人が集まる所なら店も集まる。ご他聞に漏れず、奴隷市場に来ているからといって、食欲を完全に切り離せる輩ばかりではないようで、十数メートルに一軒ぐらいの割合で飲食物を取り扱っている店を見かける。
「ふむ…ふむ、ふむ。豚肉の腸詰を麺麭に挟んだものと、羊肉と香草の回し焼き…どちらにすべきか。」
ぬぅ…と、難題を抱えたが如く腕組み。是が大食漢ならば両方などという選択肢も取り得るのだろうけれども。偶々通りを挟んで向かい合う二つの店舗の真ん中で、あっちに行こうか、こっちに行こうかと、道の中央で三歩進んで三歩下がり、三歩下がって三歩進むという、どっち付かずの宙ぶらりん具合。
■ホウセン > 迷う事、三分。漸く決断したらしい妖仙は、パタパタと豚肉の腸詰焼きを挟んだ麺麭を売っている露天へと駆け寄る。ジュウと肉の焼ける香りに鼻をヒクつかせつつ、袂から小銭入れを取り出す。厚手の布製で、金属の留め金が噛み合うような設えとなっている、がま口という代物だ。
「店主よ。その焼きたてのものを一つ所望する。何?トッピングとな。酢漬けにした玉葱を刻んだものと、酢漬け葉野菜、揚げた大蒜の内から… ほぅ、その上で、赤い野菜の甘酸タレなり辛子なりを掛けるのじゃな。…匙加減が分からぬ。お主のオススメのやり方で仕立てるのじゃ。」
目にはしていたけれども、いざ自分の口に運ぶ段となると分からぬ事が山積している。付け添えの選択からソース選びまで、そもそも口にしたことがあるかも分からぬ材料も見受けられる事から、店主に丸投げした。スタンド形式であり、また手早く提供できる事を売りにしている料理故に、提供まではすぐ。請求された代金と、僅かばかりの心付けと引き換えに、目の粗い紙の包みに半分収まった軽食を手に入れる。
「歩きながら食むというのは、中々に粗野で面白いものじゃなぁ。」
生憎、スタンドの前に飲食スペースなんて気の利いた物はなく、通りを闊歩しながら小作りな口をいっぱいに広げて頬張る。前歯がプリッとした腸詰めの外皮を突き破ると、ジュワリと染み出す塩気を含んだ肉汁が口の中に広がる。口に入りきらぬそれが流れ落ちるのを麺麭が受け止め、旨みを深める。如何しても脂っこくなりがちなこの手の料理に、根菜や野菜の酢漬けの持つ酸味は清涼感を運び、口の中がもっちゃりと脂っこくなるせいで食べ飽きてしまうのを阻止してくれる。
「粗野じゃ。野蛮じゃ。じゃが美味でもある。」
空腹分を差し引いても、満足できる味わいだったのだろう。唇の端に辛子由来の黄色をくっ付けつつ、それなりに大きかった軽食は凡そ半分を妖仙の胃袋へと姿を隠した。食に意識が向いている分、周囲への注意力は平素よりも散漫にならざるを得ず、ともすれば何処ぞの通行人と接触してしまうかもしれない。
■ホウセン > 多少は人混みに慣れているのか、それとも当たる的が小さかったからか。結局、遅い晩御飯を食べ終わるまで大過なく。手の内に残った紙袋は丸めて袂の中に。ポイ捨てせぬのは、気紛れな美意識故に。懐紙を取り出して口元を拭い、パンと手を合わせて口の中で「馳走になった」と呟く。腹も膨れて活力の補充も済んだ妖仙人は、歩調に力強さを取り戻し、不道徳極まりないこの界隈を時間が許す限り見て回るのだろう。夜が深まっても、尚人通りが減ろうとしない奴隷市場の人波に、小さな体が埋もれて――
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からホウセンさんが去りました。