2016/10/09 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にメイリンさんが現れました。
メイリン > この街では、ありとあらゆるものが売り買いされているのだと聞いた。

もの、の中には当然の如く、ひと、も含まれており、
元の身分が貴族や王族であっても、例外では無いという。

―――そんな場所へやってきて、態々こんな野外オークションなどで、
新しい奴隷を買おう、と考える者の気が知れない、と、
己は肩から胸元へ掻き合わせたストールの端で口許を覆い、
俯き加減に呆れ顔を隠して、己の前の椅子へ座った男を冷たく眺めた。

容貌の美醜はともかくとして、この男だとて一応は王族の端くれである。
自分が捕らえられ、売り買いされる可能性は考えないのか、
一応は供の者を連れている、と安心しきっているのか。
供の者―――つまり己には、いざという時、彼を助ける気など微塵も無いと、
知っていたなら流石に、此処まで無防備にはなれないだろうか。

広場に作られた簡素な舞台の上、ほとんど全裸で縄打たれ、
引き立てられて項垂れているのは、ミレーの血を引く子供だという。
周囲から次々上がる声がその子供の値段を吊り上げていく中、
己はどうしようもなく冷めた気持ちで、そっと辺りを窺い見ていた。

――――此処へこの男を置いて逃げたら、此奴は一体どうするだろう。

そんな益体も無い考えを、頭のなかで玩びながら。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にジャークさんが現れました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からジャークさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にジャークさんが現れました。
ジャーク > 奴隷市場、バフート。
悪趣味な、しかし、こうした男にとっては、これ以上ない娯楽のある都市である。
基本的に扱われているのは、このまれびとの国で多く流通する性奴隷。
なかでも、いわゆる良い女、と言う物は大層良い値、良い見世物となり、
見物客にとっても、また催す者にとっても、良い品物になる。
今日も、一人ミレーの子供が競りをされているようだ。
金を出す方は一体幾等持ってるのやら、その口を噤まずそら次だとばかりに
競りの価格が上がって―――、メイド服の少女の冷めきった静寂を他所に、
札束を掴む貴族達はそれはそれは楽しそうにヒャッハーしながら、
オークションはデッドヒートしていた。
彼等にとっては、こうした余興もまた、楽しみの一つなのである。
こんなところに集まるのだから、悪趣味だと言うほかにはあるまい。

―――閑話休題。
それはそれとして。

「あー……失礼?

キミかね、―――氏のメイド、というのは。
クク…なるほど、聞いた通り中々良い娘じゃあないか……。」

赤と黒のやけに豪華な衣服と、それに付いた妙にギラつく宝石。
それから、この世のおおよその悪人と言う物を体現化したかのような悪人ヅラ。
それが、不意に黒い装いが主体の彼女、メイリンの全貌を、
まるで珍動物でも見かけたかの様にジロジロ観察しながら、
近寄ってきて肩に触れようとしつつ、声を掛けた。
その男は、所謂腐敗役人の、そこの王族程ではないけれど…そこそこ偉いさんだ。
彼女の事を、どうやって調べたのか、聞いていたのか。
その理由は、役人だからで片づければそれっきりだが、詳しく説明をしても良し。
何やら思惑があるかのような、悪人そのままの笑顔を浮かべている。

メイリン > ミレーの血を引いている、とはいえ、己から見ればただの子供だ。
オークションが此処まで盛り上がる理由も分からないし、
敢えて追及したいとも思わない。

ただただ、早く決着がついて、主が帰る気になってくれないものか、
其ればかり考えていたものだから―――其の男が近づいて来ているのに、
声をかけられて、初めて気がついた。
伸ばされた手指が己に触れる寸前、反射的に肩を捻って、
接触を回避しようとしながら、若干、胡乱なものを見る眼差しで。

「―――確かに其れは、私の主の名ですけれど。
 ……失礼ですが、貴方は……?」

一見して、悪趣味な成金だと判じた。
序でに言えば、余り親しくなりたくないタイプの人間だ、とも。
金に不自由していないのはすぐ見て取れるが、其の金が、
少なくとも完全に綺麗な金ではない、のだろう、とは、
偏見に満ちた予測に過ぎないのか、どうか。

何れにしても、この娘は寡聞にして、相手の名も顔も知らない。
ある意味ストレートな問いを投げかける間にも、己の視線はお世辞にも、
友好的とは言えない色を露わにしていた。
此方に気づいていれば己を慌てて窘めたかも知れない主は、未だ、
ミレーの子供を落札するのに夢中だった。

ジャーク > 「おっと。つれんなあ……ンッフッフ。そうか…やはり。」

さぞ、愉快そうに笑う男、彼は34歳である。
マグメールの所謂ロクでなしの一人であり、言わば、そう、成金みたいなものである。
この様な乱世悪政極まる世の中、綺麗な金などあり得ない!とこの男は開き直るだろう。
つまるところ、ジャークこと腐敗役人は、富裕街のどこにでもいそうな悪趣味な男で、権力者みたいなものだった。
かっちり肩を掴もうと思ったが、すばしこい身のこなしで手が触れるのを拒絶されてしまった。
笑い声まで胡散臭いのは御愛嬌。
ちらちらと伺えば、どうやらさらに観察を続ける。
隙あらばさっきに懲りず、彼女の服にセクハラめいた手を伸ばそうとする事だろう。
何かを弄るやら、そんな無遠慮な手つきで。
どうせここにこの男を咎める者はそういまい。
ここは、そういう場所なのだから。

「ああ、私はジャークと言う者だ。
マグメールの上級の役員をしている……分かりやすく言えば…そうだな。
衛兵や法の偉いさん、と言っておこうか。
警察だったり、裁判だったり、マグメールの公共の福祉の為に働く者さ。」

彼女の主たるその男が、デッドヒートの渦へと夢中だったのは、
或いは幸いだったのか、不幸だったのか。
この男はさっき名前を呼んだ人物がそこに居るとは知らずに、話を続ける。
冷めきった、或いは何コイツみたいなオーラも何のその。
まるで言いたい事は分かるか、みたいな雰囲気を醸してまたまた悪人ヅラの笑顔。
キラリと輝く歯はこの年を迎えても虫歯一つないジャークの自慢の一つである。
こんな男が、しかも1人だけでなくこの国の役人なのだから、この国がこうなっても仕方ないのかも。

「で、キミの名前を聞かせて貰えるかね?」

オークションの盛り上がりに紛れるような、小さな声を囁いて続ける。
冷めきったメイリンの瞳を覗き込むような高圧的な姿勢。
ねちねちとそれとなく密かに、逃がさんように距離を詰めていく。