2016/08/26 のログ
■ロージィ > 「……は、たらく?おしごと?」
また、良く分からない言葉を聞いた。
「ロージィは、お仕事、なんて…しなくても、良い、って。
おとうさまも、おかあさまも、いつだって…」
戸惑い、躊躇い、大人たちの遣り取りは何ひとつ分からないものの。
ふと、この紳士について行って良いのだろうか、という不安が、
小さな頭の片隅に沸き起こる。
眠気の飛んだ真紅の瞳を、淡く滲んだ涙で揺らしながら。
「……おじさま、
おとうさま、迎えに来る、のよね?
ロージィ、…ちゃんと、迎えに来て、くれるのよね…?」
触れる手指はとても優しいけれど、いったん沸き起こった不安は、
容易に消えるものでもない。
勿論、この小さな子供の手で、しかも素足で、大人たちを振り切って
逃れられるとも思えないが。
それでも、―――抱きかかえられる際には身を強張らせて、
ほんの少しだけ抗う素振りをみせる。
問いかけに色好い返事が来なければ、きっとじたばたと暴れ出すに違いなく。
■グローリー・コンフォート > 「父上と母上が迎えに来るまで、屋敷のことのお手伝いをしてくれればいいんだよ。
ああ、大丈夫。ちゃんと父上も母上もロージィが良い子にしていたら迎えに来てくれるだろう。
それまでロージィが私の屋敷で何もしないでいたら、お二人ともロージィのことを叱るかも知れないな。
お世話になっているのにお手伝いもしていないのかと。
大丈夫、まずは屋敷に慣れて貰わねばならないからな、お手伝いをして貰うのはそれからでも良いだろう。安心しなさい、お二人はちゃんとロージィを迎えに来てくれるよ」
優しい声で少女を諭すように話し、優しく少女を見つめながら安心させるように抱えた少女の背中を撫でてあやすようにしようとして。
そして少女の真紅の瞳を見つめることで弱く精神操作の魔法を使い、不安感を取り除き安心感を与えようとする。
■ロージィ > 見交わす眼差しに、何某かの力が宿っていたとしても。
勿論、何も知らない幼い子供が、その意図に気づくことはない。
刹那、大きく揺らぎ、眦からぽろり、小さな涙の粒を頬へ滑らせながら。
両腕で相手の肩へ縋りつき、首許へ甘えるように顔を擦り寄せて。
「……おとうさまも、おかあさまも、ロージィのこと、叱らないもん…。
ねぇ、おじさま。
ロージィ、眠いの…。お部屋に着くまで、眠っていても、良い…?」
とろり、眠気が溶け出したような声音は、不安や警戒が薄らいだしるし。
―――明らかに、相手の術はこの身に影響を与えているようだった。
■グローリー・コンフォート > 力を持たない少女に魔法に抵抗する術などなく。
こちらへと縋りつき、甘えてくる少女の背中と頭を優しく撫でて。
「優しいお二人なら、確かに叱らないかもしれないが褒められもしないのではないか?
お手伝いをして褒められる方がロージィも嬉しいであろう。
ああ、良いとも。安心して眠っているといい、ロージィ。部屋に着いても寝ていたら、そのままベッドに寝かせてあげよう」
眠気の混ざったとろりとした声、魔法の影響を受けた少女の様子に満足げに笑い宿へと向かい歩きだす。
明日は王都へと出発する為、朝が早い。
少女を堪能するのはまた別の夜にし、今宵は少女を安心させ懐かせるために添い寝だけで我慢することになるだろう。
この穢れのない少女を穢す日を楽しみにしながら、今宵は眠りへと落ちていくことに。
■ロージィ > ―――結局のところ、心細かったのだ。
慣れない環境、見ず知らずの人に囲まれた日々。
両親がいつ迎えに来るのか、兄や姉は今、何処に居るのか。
何ひとつ聞かされず、知らされず、日を重ね、夜を重ねて。
両親が己を叱る事態など、相変わらず想像も出来ないが。
ひとたび、あたたかい体温に包まれてしまったら、幼い身体は容易く、
休息を求めて弛緩する。
むにゃむにゃと口を動かしたものの、言葉のかたちで答えることはなく、
幼い娘は瞬く間に眠りに落ちる。
案の定、宿についても目を覚ます気配もみせず―――
秘術の名残り、ミルクたっぷりのショコラにも似た甘い香りを振り撒くまま、
朝までぐっすりと眠り込んだ筈―――。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からグローリー・コンフォートさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からロージィさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にリンさんが現れました。
■リン > 「案外いい値段で売れたな……」
歩きながら、疲労と安堵から息を吐く提琴を持つ青髪の少年。
彼の持つ楽器――《アクリス》によって支配した女を、
さきほど奴隷として売り払ってきたところだった。
諸事情につきまともな仕事に就けないリンは、
こうして女衒の真似事をして金を稼ぐことがあった。
外道な行いという認識はあったが、それほど罪の意識はなかった。
心の大事な部分を呪具に食われてしまったのだろうと考えている。
それよりも、今はこの街を無事に出ることが重要である。
奴隷売りが奴隷になることなど、珍しい話ではないのだ。
特にリンのような線の細い男は目をつけられやすい。
■リン > ここには娼館も多く立ち並んでいる。
歩いているだけで客引きに何度か声を掛けられたが、すべて追い払った。
受けている“呪い”の都合上、迂闊にそういう話には乗れないのだ。
ましてやここは奴隷都市であり、売春施設そのものが罠だったということもある。
忌まわしい《アクリス》は、いざというときには守ってくれないのだ。
自己の欲情を律することにはそこそこ習熟したが、
裸同然の奴隷がそこらを歩いている街だ。
いろいろと毒である。
客引きや面倒事の予感を避けて歩いていると、なかなか目的の方向には進めない。
表情に微かに苛立ちが混じった。