2023/03/28 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 布都の工房」に布都さんが現れました。
布都 >  
 人里離れた庵、鍛冶師が一人で住まう場所。
 其処の主は、偏屈で他人を信用しない、厭世的な人物。
 唯々、己の技術の追求の為に鎚を振るため、人の干渉を厭う為、このような所に居を構え生活している。
 只管、玉鋼を作り、刀を打ち、刃を作る日常。

 しかし、それだけでは為らぬというのが人の常。
 住まう場所には住まう為の資格があり、人にそれを強要するなら、己もその資格を持っておらねばならぬ。
 平たく言うなら、自分も強くなければいけない、と言う事だ。
 庵の周りは、壁を作り妖魔だの、獣だのが来れないようにしていても、全く来ないわけでは無いし。
 野盗が、若しくは紛れ込んでくる何者かが無いとも言い切れない。
 そう言う物に対応するためには、訓練を行う事も、必要だった。

 庵の庭に、大きな剣を持って、立つ女。
 手に馴染むそれは、己の専用として作り上げた剣で布都御魂と銘を打った剣。
 刀鍛冶としては異質な、西洋の大剣に似たようなものであり、もし、東洋に明るい物が居るならば。
 東洋の古式の剣と看破できるだろうそれだ。
 鍛冶師は日課として、その剣を握り、振り上げる。
 頭の上まで持ち上げる刀の型は、上段と呼ばれる形であり、防御よりも先手、一撃必殺を目的としている形。
 ただ、持ち上げ、振り下ろすだけの事、振り下ろすことに全てを以て振り切る型。
 無心に振り上げ、無心に振り下ろす。
 愚直に、無心に、ただ、毎回の動きをトレースする様に、ぶおん、ぶおん、と空気を切り裂きながら、振り上げ、振り下ろす。
 一回、一回、筋肉の動きを、肩の動きを、腰の動き、重心。
 全てを把握し、認識しながら、無為に降るのではなく、最初の一撃より次の一撃、次の一撃より、三度めと。
 振るたびに、精錬し、鋭く、早く。最適化を目的としたような、訓練としての素振りを、行っている。

布都 >  
 息を吸う、息を吐く。
 剣を振り上げて、剣を振り下ろす。
 それだけの事、それだけの動き、しかし、その中には、幾つもの意味があり、殺意がある。
 殺すための技術を、殺すために。
 体が火照り、熱くなり、持ち上げて、振り下ろす。
 風が切り裂かれ、地面に当たる前に剣が止まる。
 流石に、真空刃は飛ばさない。飛ばして壁が壊れる事を厭んだだけだが、其れに近しい勢い。
 必殺の一撃を放つためには、毎日、毎日、鍛錬は欠かせない。
 熱を吐き出す様に、呼気は熱く長くなり、全身から汗が堕ちて、地面を濡らす。
 訓練と言っても、剣を振る回数は今日だけで既に1000を超えている、それでも、訓練は熟す。
 最後の一振りは区切りだとばかりに、息を吸う。

 ――――持ち上げる。
  ――――敵を見据える。
   ――――地面を踏み込む。
    ――――全身の力を剣に。

 その結果は、紫電の勢いで、堕ちる唐竹の一撃、即ち雲耀の太刀と呼ばれる一撃。
 それが全てで、しかし、全てではない。
 必殺と言っても絶対ではないのだ、本来は、死逃れたり、回避されたり、凌がれたりもするだろう。
 その後の二の太刀も在るはある。
 が、一撃必殺を迷わずに打つ、それが必要だからこその、全身全霊。
 師は言っていた、お前は不器用なんだから、何も考えず、外したら死ぬと考えて打て、と。
 その教えを守り、打ち切る。

 爆風にも似た剣風が巻き起こり、周囲の砂を吹き飛ばして、剣を止める。
 止まって、息を吐き出しつつの残心。
 汗が地面に落ちて、吸い込まれていく。
 最後に、大きく酸素を求めるように吸いながら、剣を背負いなおす。
 後ろに家があるから、必要が無いのだけども、普段の動き、流れだから、癖となっていた。

布都 >  
 剣を収め、塀の入り口の方角に視線を向けて、確認を行う。
 罠の状況、魔物などの気配、夜盗などの気配の確認。
 誰もいない事を安全を確認し、小さく息を吐き出して、背を向ける。
 庵の扉を開き、扉を閉めて、閂を掛ける。

「さて。」

 大剣を置いて、近くにある別の刀を手にする。
 それを腰に挿して、炉の火を再度作り上げて、薪をくべ始めた。
 火力が大きくなっていくのを見やりながら、熱の状態を確認する。
 其処から、インゴットを再度、炉に入れた。
 熱されていく玉鋼、この間貰った燃料が、とても調子が良い。
 これは、良い燃料だ、今後は之をもっと手に入れた方が良いだろう。
 赤々と燃える焔が、勢いを増して、鉄を焙る。
 良い塩梅だ、と口の元を吊り上げて、目を細めて焔を眺めた。

 それから、何時もの。
 本日の刀鍛冶がはじまる、鋼鉄を叩く音が、響きわたる―――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 布都の工房」から布都さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にベルさんが現れました。
ベル > 霧が立ち込める夜の森。
木々によって形成された天然の迷路を行くのは、一人のポーター……しかし今日は副業の冒険者としてだ。
その手に抜き身のダガーを引っ提げているのは、ここが魔物の棲息領域であるため。
しかし、奥地には、滅多に市場に出回ることのない薬草が群生していることで知られている。
こうして訪れたのは、冒険者のギルドでその採取の依頼を引き受けたからだった。

薬草の採取といえば新人冒険者向きクエストの定番だが、
このエリアでの薬草採取は新人には手が出ない難易度に設定されている。
当然、それだけ報酬も高額にのぼり、無目的に遺跡に潜ったりするより確実なリターンが見込めた。
しかし、今夜は霧が濃い……手頃な場所を見付けて、日の出までキャンプを張るのが得策だろう。