2023/01/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」に布都さんが現れました。
布都 >  
 メグメールの森の中、魔獣と妖魔が闊歩するような、奥の奥に、その工房はある。
 その場所にたどり着くこと自体が、最初の関門と言うかの様に人里離れた所に居を構えている。
 庵とも言える東洋風の建物の奥、煙突からは煙がもくもくと沸き立っていてそこに人が居る事を教えている。
 庵の主は、鎚を持ち、一心に振り下ろす。

 ――――カーン――――

 紅くなった金属に打ち付けられた鎚、熱で柔らかくなった金属を叩き、均し、また、叩く。
 冬だと言う事を、忘れさせるような熱気を持つ工房、作務衣の女は、只、只、只管に打ち付ける。
 紅く染まった金属を、鎚で叩き、一つの器具を作り出している。

 ――――カーン――――

 鎚を振るう音が響き渡っている。

 KATANA―かたな―と呼ばれる東洋の曲刀、それを唯、只、流れる汗さえ拭わずに、打ち付けている。
 時間が、過ぎて、鎚を振るい、魂を込めて一つの刀を作り出していく。
 紅い金属を叩き、形を作り、水を浸けて冷まして、また熱を込めて打ち付けて。

 ―――カーン―――

 鍛冶師は、刀匠は。
 其れだけが目的だからこそ、わき目を振らず、鎚を振るう。

布都 >  
 ―――カーン―――

   ―――カーン―――

     ―――カーン―――

 工房の中で、鎚を振るう音は響き渡る。
 じゅうと、言う音が響いて、冷たい水に、熱された金属が冷やされていく。
 何度も何度も繰り返して、一本のKATANAを精錬していく、一度、鎚を振るう度に鍛えている金属の不純物を弾き出す。
 刀を打つ女は無心なのか、視線を刀から一切離さない。

  ―――カーン―――

    ―――カーン―――

      ―――カーン―――

 鎚を打つ音が響き渡る、工房の中の音はそれが全てであり、それを生み出す鍛冶師は一人で金属を打ち付ける。
 綺麗な赤い色をした金属でそれは、緋緋色金と呼ばれる金属。
 普通の金属の鎚で、緋緋色金を打ち、刀を作り上げていく。
 特別な道具ではない道具で緋緋色金を打ち、刀を作るから、刀匠と名乗る事が出来る。
 これが出来るからこそ。


 何時しかの時間が経って、刀が作り上げられた。
 刀身のみの刀、綺麗な紅い刀身を持つ刀は、紛れもなく、魔性の力を宿す魔剣となっていた。
 暫くの間、その刀を見つめている。

 工房に、静寂が訪れる。