2022/11/25 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン > 木々が辺りに生い茂っている。街道より大きく外れた場所だ。当然に人気など無い。耳を澄ませば此処を巣窟としている鳥獣の跋扈する気配を感じる程度。
植物を発育させる為には土壌は無論のことだが、大量の水が必要だ。この土地の一角を潤わせていた河川がその森林地帯を突っ切っていた。

その近くに竜を模倣した怪物が屯している

ドラゴン・ジーン > 河川の勢いは然程強くは無い、川面にへと木漏れ日が差し込んで照り返しているのが窺えた。
繁々とその川辺から覗き込んだ水鏡には、世にも悍ましい石炭色の不定形が映り込んでいる。
此処は街中ではない為に、特に我が身を隠蔽する必要は無い。
その代わりに周辺の野生動物の気配には注意しなければならないが。

ドラゴン・ジーン > 今日は試すべき事に思い至り、落ち着いて事を済ませる為に此処に来ているのだった。

「………」

ぶる、と、全身が震え上がる。産まれながらに形状記憶されている竜形態がゆっくりと歪み、その形を別のものにへと変貌させようとしている。
四肢を張っているその肩口の辺りから植物の芽が伸びるかのように出て来たのは人間の手の形だ。骨の存在しない軟体同然のそれを辛うじて維持しながら試すように握ったり開いたり開閉を繰り返す。

ドラゴン・ジーン > 「…………」

そこから更にどっしりとした下半身の腰回りから、次いでにゅっと人間の足らしきものが生えて来た。細かな関節を備えたそれは既に這い蹲っている後肢の直ぐ前で河川敷の石原をじゃりじゃりと踏み付ける。
吸収し、学習した擬態化の能力を駆使して人間の形を模倣出来ないかの試行錯誤だった。しかしパーツ分けで構成は出来るが、その全体像が上手く行かない。

ドラゴン・ジーン > 「……」

流れる川の中に首を突っ込むようにして、開いた口の中に流水を取り込みがぶがぶと水を飲む。1m程度であった体長は外部から吸収した原料に培われ、発酵中のパン種のようにぷくぷくと膨らみ始める。
今にもパンクして飛び散りそうな水風船宜しく液状体の流出を防ぐ為に表面に張った薄乾きの粘膜皮をぱんぱんに張り詰めさせ。
そこからぼこぼこと体中が凹んだり凸ったり、粘土がひとりでに我が身を捏ね上げているかのような有様。

ドラゴン・ジーン > 「…………」

ぬる、と、何度も姿形を調整して次第に形が安定して出来て来た。思い浮かべるモデルは擬態能力を学んだ遺伝子採取の対象だ。人間っぽい感じの五体が少しずつ形成され、すらりとした両脚が真っ直ぐに河川敷の上に直立する。
腰の上には長い胴体が乗っかり、そこから両腕が伸び渡り。それらの中心である肩上には丸っこい頭部が出来上がった。
まだのっぺらぼうのような有様で大雑把な人体を模したという程度に過ぎない。
それを辛うじて出来たばかりの両手の平や指先などで弄って微調整を始める。

ドラゴン・ジーン > 「………」

削ぎ落し、パテを盛るように粘液を費やし、試行錯誤。間も無くして人間の雌を模したような体が出来上がる。この街周囲には一見すれば女性体のように見えても男性的な生殖器を兼ね備えている個体も多いので、このような容姿が都合が良いかと判断したのだ。
だぽん、と、頭部よりも大きく張り出している丸乳が僅かに身じろぐだけで上下に弾む。両手で下乳から抱え込んでも持ち上げるのに苦労するような重量感、片割れだけでも総重量の何%だろうか。

ドラゴン・ジーン > 「………!」

余りにも人体のバランスというものを無視した形成に、前にへと引き込まれるようにぐらつく体が倒れこむ。膝を降ろして両腕を突っ張る這い蹲った姿勢になっただけで、胸部の飛び出している乳房がぐんにゃりとその腕の長さを越えて地面に届いて柔らかく拉げながら腋下より食み出している。少しばかりデカく盛り過ぎた。
いや、しかしこれ以上の個体も認めた事があるが、その個体は割合に平然と歩き回っていた。どのように歩行しているんだろうか。産まれながらの形態からの生活行動にコツが…?
増やした偽乳をもみ下ろすようにして腰回りの尻肉周囲に沈めてバランスの確保につとめる。何故豊満な肢体の人間は乳だけではなく尻や太もも周りもむちむちとしているのかその理由が解った気がする。胴体を支えるのには安定感がなければならないのだ。

ドラゴン・ジーン > 「………」

川面には自分の顔が映り込んでいる。人間達を相手している中で美醜というものをちょっとずつ理解し始めた上で拵えた目鼻顔立ちはそれなりに整っている筈だ。但し塗装を一切していない為に外観的にはただの石炭色の人型のスライムにしか過ぎないが。
眼球が欠落している代わりに頭からアホ毛のように伸びている触角が淡い輝きを放ちながらゆらゆらと揺れる。ぶる、と、頭部全体が震え上がり。まるで陰キャが鏡の前で表情練習をするかのように、にっこりと、そこに出来ている唇と頬周りがほころんで笑顔に持ち上がった。

ドラゴン・ジーン > 「………」

破顔するようにその口元が裂けて壊れ台無しにぎざぎざとした牙が零れ出す。形状記憶している竜の顎だ。駄目だ。これでは直ぐにバレる。
苦労して積み上げた練習過程だけをメモリの片隅に留め、ぐしゃりと間も無くしてその全身は崩れ去る。寄せ集め直した自らの残骸から再形成するのは馴染み切っている竜の形態だ。やはりこの体が最もしっくりと来る。

ドラゴン・ジーン > 「………」

そして一考の余地を残しつつもそれ以上の練習を諦めた怪物の個体はぐるりと身を翻し。その場より立ち去って行った。
此処で何が起こったのかを知る者は居ない。広い世界。そういうものだ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からドラゴン・ジーンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にウィンさんが現れました。
ウィン > 自然地帯の森林、そろそと木々の間から見える夕日が月明りに代わる時間帯。
そんな森の中、歩くに邪魔になる枝や草を大鎌を振るい伐採して歩く。
しかし歩く先には道はなく、たぶんこっちという方向に自分で道を切り開いていて。

「…もうすぐ夜…?野営の準備、してないのに」

段々と暗くなってくる中を歩き、空を見上げれば薄く星が見え始めているのが何とか見え。
暖かい季節ではないので野営も大変だというように息を吐き。

「せめて森から出れたらな」

出てしまえば後は街道に向かえば王都なり宿場なりに向かえる。
なので出れることを信じて歩く道を振り回す大鎌で切り開き、風キリ音を響かせて歩いて。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からウィンさんが去りました。