2022/10/14 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にユーダリルさんが現れました。
■ユーダリル > ―――……パチパチと。
月光照らす渓流沿いの野原に、一人の少年が足を伸ばし、焚火の傍でくつろいでいる。
焚火の周りには、串焼きの魚が3匹炙られており。
少年はこんがりと焼けた串焼きをひとつ手に取り、ふーっと息を吹きかけ熱を冷まし…。はぐっと一口、味見。
「美味しいッ!!」
―――……些か、声が大きい。
夜の静寂とは、不釣り合いの少年の高らかな声が響き渡っていく。
少年は自身以外の気配が無いため、毛頭気にも留めず、ほど良く焼けた川魚の串焼きを上機嫌に食べていく。
ニコニコと良い食べっぷり。
澄んだ空気の下、川のせせらぎを聞きながらの食事は癒され、大層美味なことかと。
■ユーダリル > 少々、急ぐあまり少年の口端には、食べた後の欠片や煤の汚れが付いてしまっている。
中性的な面立ちの少年は、見た目に反して川魚の骨など何のその。
綺麗に残すことなく、身と同様に咀嚼し、胃に収めている。見た目は人に近しいものの、在り方としては精霊。山に棲む獣、という解釈の方が仕草や行動理念として合っているのかもしれない。
そうこうしているうちに、ぺろりと食べた川魚一匹。少年は次の串魚を食べようと手を伸ばし、またもや一齧り―――……するも。
「―――……!!」
肩を跳ねさせ、目を丸くし…。軽く咳き込み、涙目。
どうやら、熱かったらしい。冷ますのを忘れていた。
漂う香りは焼けた魚の良い匂い。懲りずに、ふー、ふーっと慎重に息を吹きかけて。
口を開けて、暫し空白の間。本当に熱くないか、口元へ少し近付けて熱気を確認し……。ぱくり、と今度は豪快に大口を開けて齧る。
火傷はしない、ちょうど良い温かさ。
少年は安堵したように柔らかな笑みを浮かべて、時折、楽し気にくすくすと笑いながら、食事をしていく。
■ユーダリル > こんがりと焼けた3匹の川魚を―――……全て食べ終えた頃合いには、遠くで狼の遠吠えが響いていた。
両耳を微かに揺らし、小首を傾げる。縄張りを主張する声なのか、それとも群れとなる仲間を探しているのか。
遠くに居る狼に応える声は無い。
「寂しいのかしら?」
呟く声は、少女にも思える中性的な囁き。
聞こえる鳴き声、狼の居る場所は、ずっとずっと遠く。
少年は目を伏せて、腰を上げるとその場で静かに佇む。
水を打ったような静寂の間、狼の遠吠え。
「あっちだね」
肩越しに振り返り、背後の方角へくるりと体を向けて。
夜風が運ぶ香りをすんすんと嗅ぎ分ける。
夜空に浮かぶ満月を双眸に映し、少年は狼を真似るように―――……咆哮。
皮膚が総毛立つ、痺れる感覚にも似た空気を揺るがす振動。
人の見目から出る声とは、とても思えない。
止まり木で羽を休めていた鳥たちが、風のようにざわめいていく。
静謐な渓流沿い。帰って来る声は無い。
「驚いちゃったかな……」
薄い唇に人差し指を当て、眉尻を下げる。
騙すわけではないが、寂寥が少しでも和らげばと思った次第の行動。
死と隣り合わせの中、長く生きる聡い獣には察しがつき、冷やかしだとあしらわれたかもしれない。
やがて、両耳がひとつはためく。
少年は花が綻ぶように目を輝かせ、笑みを深めて。
本能に近しい声の元へと、駆けて行き―――……。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からユーダリルさんが去りました。