2022/02/20 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にノルウェンさんが現れました。
■ノルウェン > メグメール近郊
ここは最近発見されたばかりの地下遺跡。
ある種の古代神殿の様であるが、
構造が複雑で魔物も棲みついており階層も深く、まだ殆ど調査が進んでいない。
そんな遺跡の調査隊に加わった、銀髪のメイドが一人。
彼女の名はノルウェン、以前はとある貴族に仕えていたが、
主を亡くし今はフリーのメイドとは名ばかりの何でも屋をやっている。
今回の仕事内容は、キャンプ設営、炊事等の調査隊の雑用係だ。
調査は数日に渡って行われる予定であり、
その間の調査隊のサポートに務める。
もちろん、必要であれば護衛として戦闘にも関わるが、
その際は別料金を請求するつもり。
学者や護衛の冒険者たちによる調査隊は、
遺跡の中層、広く安全が確保できそうな地下ホールへと辿り着く。
今日はここに調査の拠点となるキャンプを設営する。
特に何もなければ、今日の探索は終了し明日まで休息をとる予定だ。
メイド娘も早速、火を起こし人数分の食料の準備を始める……。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にマグゴブリンさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からマグゴブリンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にスター = ダンフリーズさんが現れました。
■スター = ダンフリーズ > 色々あって金が要り様になった儂は街で見かけた調査隊の募集に応募することにした。
元々自分の力を実践で試してみたいと思っておっただけに今回の話が好都合じゃった。
黄金龍である儂の力を以てすれば遺跡の魔物に後れを取ることはないからな。
遺跡の中では事前に聴いていた話通り、魔物を相手取った。
戦闘や探索自体はスムーズに進み、今はキャンプの準備に入っておる。
と言っても、学者たちは発見した品の解析に忙しいし、他の冒険者達は既に酒臭い。
銀髪のメイド服を着た女性が一人で食事の準備をしておる。
最初は依頼主のお付きかと思っていたがどうも儂らと立場は同じらしい。
「忙しそうだな。 何か手伝えることはないか?」
メイド姿の女性の隣で声を掛けた。
儂は力仕事も得意じゃからな、出来る所を見せてやろう。
■ノルウェン > テントの設営などは他の冒険者に任せて、自分は炊事の準備を。
貴族務めで身に付けた優雅さを感じさせる所作で、
火を起こしかまどを作り、湯を沸かして食材を煮込み……
キャンプの食事に優雅さなど、一切必要は無いが。
「いえ大丈夫です」
スターのせっかくの申し出を、にべもなく断るメイド。
愛想という物が全く感じられない。
見れば、素朴で質素ながらも十分な量の食材。
探索に持ち込める荷物は限られていたはずだが……。
おもむろにメイドが宙へと手をかざす。
と、何もない宙空にドアの様な物が生じ、
彼女がそれを開ければ、中には狭いながらも様々な荷物が詰まった小部屋が現れる。
そこから調味料を取り出して、煮込み料理の味付けを……。
なるほど、今回の様な遠征には便利な魔法を使える様だ。
「………。
失礼、やはり手伝いをお願いします。
……味付けの確認を。」
小皿に煮込んだ汁物を少量、スターへと渡してきた。
■スター = ダンフリーズ > 「おお、そうか。」
あっさりと断られてしまった。
取りつく島のない感じが身内に少し似ている気もする。
どうやらこのメイドは魔法が使えるらしい。
虚空から突然道具を取り出しては調理を進めている。
便利な魔法もあるものだ。
これならどこへでも行けるだろう。
などと感心してずっと見ていると声を掛けられる。
「おお!? 任せろ。」
突然のことで驚くも、嬉しさが声に出てしまう。
儂は皿を手にし、熱いスープを口にする。
「いいな。 濃いめだけに喜ばれるじゃろう。」
今日は皆肉体労働をして疲れておる。
疲れた体には濃いめの方が美味く感じるじゃろう。
特に酔っぱらった冒険者には薄目を出したところで食った気にならんはずじゃ。
■ノルウェン > 素朴だが、確かな旨味。
遠征の食事にしては野菜も豊富で栄養バランスも良い。
あえて塩味を少し濃くしてあるが、長い道のりを超えてきた探索隊にはちょうどいいだろう。
流石はメイド、料理の腕は確かだ。
「……失礼しました。」
満足げなスターな顔を確認すると、小皿を回収。
あとはもう少し煮込めば完成だ。
人数分のパンを切り分け、皿を用意し……。
煮込みが終わるまでの間に、水を汲みに行っておくか。
キャンプのあるこの広間から戻る回廊から脇道に逸れたポイント、
そう遠くない場所に、古代の貯水池らしき、清浄な水が溜まっていた場所があった。
「よろしければもう一つ手伝いを。
水汲みを共にお願いしてもよろしいでしょうか?」
先程の魔法の小部屋に空の水瓶を用意しつつ、スターに声をかける。
水はいくらあっても困る事は無い。
人手があるなら、借りて汲めるだけ汲んでおきたい。
■スター = ダンフリーズ > 小皿を手渡し、料理の出来具合を見守る。
待っている間に食欲を刺激する良い匂いがしてきおる。
メイド姿をしているだけに料理の腕は良いのじゃろう。
儂のような素人が下手に手伝えるような状況ではなさそうじゃ。
「よし、任せろ!」
またもや魔法で出てきた水瓶を受け取った。
料理をしている間は見ているだけじゃったので、
漸くの出番にわくわくするわい。
確か途中に綺麗な水を取れるポイントがあったはずじゃ。
恐らくそこへ向かうのじゃろう。
「あの貯水池らしき場所へ行くのじゃろ?
儂が先導しよう。」
護衛役で雇われたのじゃしと、儂ははりきり気味で彼女の前を歩くことにした。
「そうじゃ、歩いている間自己紹介をせんか?
儂はスター = ダンフリーズ。
王都の学院に通う生徒じゃ。
お主は?」
■ノルウェン > 「よろしくお願いします。」
恭しく頭を下げると、
水瓶を手に件の貯水池へと二人で向かう。
薄暗い回廊を、魔法式のランプで照らしながら進む。
水源はそれほど遠くない場所だが、
それでも得体の知れないダンジョンで油断はできない。
どこから魔物が襲ってくるか、どんな罠が仕掛けてあるか、分からないものだ。
……水瓶は、魔法の部屋において現地で出せばよかったな……
などと今になって思うが、敢えて口にせずそのまま進む。
「ノルウェンと申します。
見ての通り、メイドを生業としております。」
スターに答えて自己紹介を。
見ての通りはメイドだが、普通のメイドはこんな所に探索に来ない。
「学院の生徒……?
学生が、何故この様な仕事を……?」
メイドが、何故この様な仕事を……?
というのは単純に金のためだが、
それは置いておいてスターに訊く。
■スター = ダンフリーズ > 遺跡の中は一度安全を確認した場所と言えど油断は禁物。
魔物や魔族の奇襲の可能性がないとは言い切れん。
もっとも、出てきた所で儂が返り討ちにするが。
と言っても、一緒に歩くメイドもしっかり明りで確認しながら進むなど隙が無い。
「メイドと言うが、今日のメンバーの誰かに仕えているわけではないのじゃろ?」
実家にメイドはいるが、こんな所に連れて行けそうなのはあまり居らん。
中には元冒険者もいるが、ノルウェンもそんな感じじゃろうか?
「おお、それがな。
とある事情で急に入用になっての。
腕試しがてらこういった依頼をするようにしたのじゃ。」
儂が金が要るようになった理由はまあ、家族がらみなのじゃが。
外で言う様な内容でもないのであまり具体的には言えんのぅ。
そうこうしているうちに水源に辿り着いたわ。
儂は話をしながら水を瓶に詰める。
この時期だからか、なかなか冷たい。
「この瓶を持ってくれるか?
儂が全部組んでおこう。」
■ノルウェン > 「ええ。
我が主は、既に故人でございます。
今はフリーのメイドとして、依頼あればお仕えする日々です。」
と、簡単に身の上を語り。
「なるほど。
日銭が目的、というのであればわたくしめと大して変わりはないですね。」
とある事情、というのもさして興味が無いのか、
あるいはメイドとして他人の込み入った事情には敢えて立ち入らないのか、さらりと流す。
……ので、不愛想という事もあり会話があんまり弾まない。
こいつコミュ障だ。
「ありがとうございます。
では、水汲みはお任せしますね。」
汲んだ瓶を、魔法の小部屋に収納。
そしてまた次の瓶を出す。
……結構な数の瓶、水に困る事は無くなるだろうが、
スターには結構な重労働を頼む事となる
■スター = ダンフリーズ > 「なるほど…今はフリーなのか。」
儂は水を汲みながらメイドの話を聞いていた。
水が入った瓶はまた魔法で仕舞っておる。
なんとも便利なものじゃのぅ。
「そうじゃな、金がないと何もできんからな。
よし、こんなもんじゃの。」
数えておらなんだが結構な数を入れた気がする。
数日の滞在なら水には困らんじゃろう。
「ところで、わざわざメイドの格好をしてると言うことは
新たな主を探している所か?
お主のその魔法に身のこなし、元々戦闘もしていたことじゃろう。
となると、自分でお眼鏡にかなう相手に仕えようと思ってるとか?」
儂はどうじゃとばかりに頷いて見せた。
このメイドの主がどれほどの人物か知らんが、
戦闘の腕でよければ儂も結構なものじゃと思う。
■ノルウェン > 「……どうなのでしょう。
今はただ、この服装しか持ち合わせがございませんので。
良い主がいれば、お仕えする事もやぶさかではありませんが……。」
フリーのメイドとして働き始めてしばらく経つが、
これからの事はあまり考えていなかった。
前の主人の様に、元々孤児であった自分に実の子供の様によくしてくれる様な主が、また見つかるだろうか……。
「戦いの作法は、嗜み程度でございます。
……学生なのに良い目をお持ちですね、スター様は。」
スターは所作からある程度実力を見抜いている様だが、謙遜して答える。
……むしろ、スターも僅かな所作から腕前を見抜く程度にただ者では無さそうだ。
そうこう言いながら、水瓶を小部屋にしまい帰路へと着く。
やがて、ベースキャンプの灯りがちらちらと見えてきた。
「…………。」
しかし、少し様子がおかしい。
灯りはついたままであれど、静かすぎるのだ。
同行してきた冒険者達は酒を飲み始め陽気に騒いでいたはず。
まだ食事もできていないのに、酔いつぶれて寝てしまうには早く無いか。
「……スター様。
ご注意を。」
小声で、スターに伝える。
何らかの異変が、この場で起きた様だ。
魔物の襲撃?
しかし、キャンプには魔除けの結界も張り巡らしてあった筈。
それに戦闘があれば、少し離れているとは言え水場にも物音くらいは届いただろう。
■スター = ダンフリーズ > 「メイド服と言うのは動きやすいだろうが、戦闘向きではなかろう。
尤もお主の格好はよく似合っておるがな。」
見た目はやはり大事らしい、と儂は依頼などを受けるようになって思った。
分かりやすいアピールポイントや見目形の良い人物程依頼が取れやすいようじゃ。
儂はその辺は自身がないが、黄金龍ゆえ腕で語ればよい。
「あまり褒められると照れてしまうではないか。
良く見れば相手の強さと言うのは感じとれるものじゃ。」
社交辞令かも知れんが、褒められると気持ちが良い。
気分よく拠点へと戻る所であったが、ここで状況は一変する。
「どうやらその様じゃな。
お主も気を付けるのじゃぞ。
いざとなれば戦闘の腕前も見せてもらうかも知れん。」
儂は自らの分身である戦鎚を取り出し、両手で構える。
両足を大きく開き、いつでも戦える体勢を整えてから一歩ずつ慎重に足を踏み出す。
■ノルウェン > 警戒しながら大広間へと足を踏み入れる二人。
やはり、冒険者達の気配は無い。
僅かに感じる死の瘴気。
「………。
これは。」
設置してあった魔除けの結界。
学者達の中に結界術を得意とする者がいて、
かなり高度な魔除けを張ってあった。
……が、それが見事に破壊されている。
「スター様。
どうやら敵は手練れです。」
ここまでの状況から分かるのは、
高度な結界を破壊し、冒険者達を抵抗する間も無く無力化するような存在がいると言う事。
かなり強力な魔力を持った敵だ。
そんな存在が、中層であるこの場所までやってくるとは。
この遺跡は思った以上に危険なダンジョンだった様だ。
だが、そのような存在はまだ姿を見せない。
注意深く歩みを進めていく。
……と、テントの影から蠢く影がいくつも……
「死霊術、ですね。」
そこいたのは動く死者たち。
先ほどまで酒に酔い浮かれていた冒険者達の躯だ。
枯れ木の様に干からび、変わり果てた姿となった彼等が、
各々の武器を手に取り二人へと襲い掛かってくる。
■スター = ダンフリーズ > 「これは不味いのではないか?」
静まり返った拠点の周囲に漂う気配。
そして、そこに残る何かがあった痕跡。
メイドが結解の破壊された痕を見つける。
いよいよ、何者かの襲撃は明らかとなった。
水を汲んで留守にしておらなんだら儂らもどうなっていたことか。
「お主、武器の類は持っておらんのか?
戦えるのなら討ち漏らした自分の身は守ってくれ。
まずは儂が突っ込んでみる。」
メイドの前に立ってから、儂は戦鎚を手に今しがた迄仲間であった者達の成れの果てに挑んだ。
全身の力を使い、戦鎚を横薙ぎにして亡者たちを叩き潰す。
干からびた体では儂の全力を受け止めることも出来ず、一人二人と崩れていく。
ここが広い場所で良かった。 おかげで戦いやすい。
メイドも恐らく戦えるじゃろうが、会ったばかりで何を使うのかも分からん。
とてもじゃないが、連携を取るのは難しいじゃろう。
■ノルウェン > 「承知しました、スター様。」
自分の身は守れ、と言われる間も無く、
異空間から自身の剣を呼び出す。
「失礼。」
鞘から抜き放ち構えると、刃が蒼炎を纏う。
刹那、暗闇に蒼い残像を残しながら、
冒険者達の躯を舞う様に切り刻んでいくのであった。
「弔いは後程。
……スター様、御無事ですか?」
スターの方を見れば、心配など無用の様子。
躯たちは生前の技を持っている様だが、
しかし竜人の戦槌の前に容赦なく叩き潰されていくのであった。
「さて。
これで終わりとは思えませんが……。」
死霊術の使い手は、まだ姿を見せない。
が、辺り一帯を取り巻く死の瘴気が濃さを増していく。
……あまり長居をするべきではないか。
「一旦引きましょう、スター様。
………っ!?」
撤退しよう、とスターに声をかける。
が、大広間の入り口を見やれば、おぞましい光景が。
切り刻み、叩き潰したはずの躯たちが蠢き、集合し……
一体の躯の巨人へと姿を変えて行く。
強い死の魔力を纏ったそれが、巨大な腕を二人めがけて撃ちおろしてきた。
■スター = ダンフリーズ > 「なんじゃそれは?
剣か?」
炎の魔力が宿った剣だろうか。
メイドが剣を振るうとまるでバターのように亡者たちが切り刻まれている。
じっくり観察してみたいが、今の儂にそんな余裕はない。
「見ての通りじゃ、儂は強いぞ。」
儂の槌は亡者たちの武器よりも射程が少しだけ長い。
故に力任せに振るうだけでなぎ倒していけた。
弓や魔法で遠くから攻撃しようとする相手にはブレスを吐き出して始末する。
うむ、儂の強さは十分実践レベルじゃ。
「そうじゃのぅ、幾ら死体を破壊した所でキリがなさそうじゃ。」
渦巻く魔力の濃さからして、何が出てきてもおかしく無いじゃろう。
「これは流石に不味そうじゃ、逃げるぞ。」
儂は巨人の攻撃が迫ってくるより先にブレスを周囲に撒き散らし、壁や天井を破壊する。
崩れた破片が巨人に覆いかぶさり、そして儂らと奴の間の道を塞ぐ壁となった。
首尾よくいけばメイドの手を掴み、入り口に向かって駆け出すつもりじゃ。
ひょっとしたら道に迷うかもしれんが。
■ノルウェン > 「おぉ………。」
どうやら、スターはただの人では無いのだろう。
まるで竜の様に吐いた雷のブレスが、いっそ神々しくも映る。
雷撃は広間を明るく照らし天井を崩し、
そして屍の巨人を圧し潰す。
好機、とばかりに出口へと駆ける二人……。
が、しかし。
出口は既に、死の瘴気が濃く渦巻き完全に塞がれている。
絶対に、生者をここから返さない、という怨念の様な物を感じる。
さらに背後では、凄まじい膂力で瓦礫を押しのけて立ち上がる屍の巨人。
「………スター様っ!!」
巨人の拳が打ち下ろされる。
辛うじて直撃は避けた二人、
だが石畳みの床に亀裂が入り、そして音を立てて崩れ始め……
「………っっ!!!」
そして、口を開けた奈落の底へと、二人は落ちていくのであった。
■スター = ダンフリーズ > メイドの声が隣で聞こえる。
命の危機じゃと言うのに、どうじゃと言ってしまいたくなってしまったわ。
もっとも、ブレスを吐いている最中なので声は出んがの。
そして遺跡の外へ逃げ出さんとしたものの、
巨人は折角作り上げた障害をいともたやすく押しのけよる。
屍で構築された巨大な拳が振り下ろされ、儂らは直撃こそ避けたものの、足元が崩れたようじゃ。
「うぉぉぉ!」
重力に従い二人とも落ちてゆく。
儂は直前に掴んだメイドの手を手繰り寄せ、身体ごと引き寄せる。
もはや墜落は時間の問題、ならばと抱き寄せた状態でそこへと堕ちた。
「ぐふぅ!!」
背中に激痛が走る。
どうやら遺跡の床と背中に激突したようじゃ。
鎧を纏っておいたにも関わらず相当な痛み。
再生力がある身体ゆえ時間を掛ければ大丈夫じゃが、すぐには動けそうにない。
「お主、大丈夫か?」
腕の中にいるはずのメイドに声を掛ける。
儂が下敷きになったのじゃから、傷はおってないはずじゃが…。
■ノルウェン > 漆黒の闇が支配する空間。
かなりの高さを落ちてきた様だ。
「……うっ……くっ……。」
魔法で障壁を張った上に、スターが身を挺して守ってくれた様だ。
致命傷は免れた……が、体へのダメージは計り知れない。
「大丈夫ですか、スター様……。」
浅く苦し気な呼吸をしながら、スターの身を案じる。
魔法で小さな光を灯し、互いの状態を確認。
彼も怪我を負った様子、だが幸いにも、自分よりは軽そう。
恐らく、自分は肋骨と足の骨を折ってしまった様だ。
「……回復魔法で治療は可能ですが、しばらく無理はできませんね……。」
辺りを見渡し、今いる場所も確認。
詳しくは分からないが、深層の小さな部屋の中の様だ。
中層よりもさらに朽ち果てており、何の部屋なのかはよく分からない。
幸いにして、今のところ邪悪な気配も周りには感じない。
■スター = ダンフリーズ > 「お主こそ、大丈夫か。」
儂は痛みに蠢きながらもメイドの様子を気にしておった。
何せ人間の身体は儂らより脆い。
いくら腕利きでもそこは変わらんじゃろう。
魔法で灯された灯のおかげで幸い、周囲を確認することができた。
暗い場所だが他に誰もいないように見える。
「儂は回復魔法とかはからきしでの。
おまけに落ちた時に多少なりともダメージを受けた。
しばらく休んで回復に努めるとするか。」
身を捩り、動けないメイドを寝かせたまま傍で体を休ませる。
再生力が高いとはいえ、こうも深手を負うと直ぐにが動けんわい。
「しかし、とんでもないことになったもんじゃ。」
■ノルウェン > 「私は大丈夫。
スター様。
痛む所などはありませんか。」
あまり大丈夫そうではない表情で、スターの身体を労わる。
そして、回復魔法を使いスターの傷の治療を始める。
回復魔法を得意とする聖職者等では無いため効果は限られるが、
応急処置程度にはなるだろう。
一通りスターの治療を済ませると、
自らの足を直そうとするが……
「スター様……
折れた足の……整復を手伝ってください……。」
曲がってはいけない方向に折れたメイドの足。
このまま回復魔法を使うと、骨が歪んだまま接合されてしまう。
ある程度、折れた骨をもとに戻してから魔法で直さないと……
但し、それには当然、激痛が伴う。
メイドの顔も青ざめ、冷や汗が浮かぶ。
■スター = ダンフリーズ > 「痛いと言えば全身が痛いぞ。
何せあの高さから落ちたからな。」
今しがたまで居た場所を見上げるも、光源が届かないこともあって様子が分からなかった。
どれほどの高さか見当もつかない。
「すまんな、何から何まで。」
治癒魔法を掛けて貰うと、儂の身体は早くも戦闘が出来そうな程に回復した。
完治とはいかずとも、後は時間をかければすぐに治るじゃろう。
しかし、儂の傷を先に治すとは優しいやつじゃ。
「分かった。 じゃが痛むぞ。」
儂は一度起き上がると、痛ましい程に折れ曲がった脚に触れた。
さっきまでは落ち着いた表情を浮かべていたのが青ざめておる。
どうにかしてやりたいが、儂には人を癒すすべがない。
あまりの痛ましさに儂の顔もこわばってしまう。
■ノルウェン > 「大事は無いですか、スター様。
息が苦しいとか、頭が痛いとか。」
恐らくは、内臓の損傷などは無さそうだが……
遅れて症状が出てくることもあり得るため、しばらくは注意が必要だ。
「………いっぐ……!」
足にスターの手が触れると、それだけで苦悶に表情を歪める。
「はぁ……はぁ……
……おねがい、します……やってください……。」
目尻に涙を浮かべながら、スターに整復を頼む。
物凄く痛むだろうが、
少し強引に骨折部位を引っ張り、元に戻してやる必要があるだろう。
■スター = ダンフリーズ > 「儂は竜の血族じゃからな。
人間よりも再生力に長けてるし頑丈なのじゃ。
お主は自分の心配をした方が良いぞ。」
仮に内臓に傷が出ようが、それで致命傷になることはないじゃろう。
儂よりも脆い人間に案じられると申し訳ない気になってしまった。
「すまんな、儂には癒す術がないからな。
では、いくぞ。」
痛むメイドの為に儂は心を鬼にして折れた足を引っ張り、固定する。
この辺の措置は学院で戦闘に関する授業の中で教わっていた。
「どうじゃ、魔法は使えそうか。」
痛みに堪えながらの魔法の使用などそもそも出来るのじゃろうか。
■ノルウェン > 「なるほど……
それで、あの様にブレスを……。」
人の姿をしているが竜族と。
つまり、竜人という種族なのだろう。
戦槌を振るう膂力も、雷のブレスも合点がいく。
「はい、お願いします。」
ぐっ、と歯を食いしばり。
そして、スターが整復に入り……
「あっ、ああああっっっっ!!!」
悲痛に満ちた声を漏らし、身を悶えさせ、
目尻に大粒の涙を浮かべて痛みに耐える……。
……そういう趣味がある人が見れば、
きっと愉悦に浸れそうな仕草だ。
「ありがとう、ございます……。
……ひとまず、大丈夫そうです……。」
まだ痛みの余韻を引きずりながら、呼吸を乱すメイド。
ともあれ、折れた足は無事に整復がすみ、
あとは魔法で治癒を促進すれば今日明日とは言わずとも、
割とすぐに回復はしそうである。
「さて、これからどうしましょうね……。
なんとか生きて脱出しなければ……。」
水や食料は、メイドの魔法でなんとかなるが……
地上までの長い道のりを、得体の知れない魔物の目をかいくぐりながら、
二人で脱出しなければならない。
■スター = ダンフリーズ > 「じゃから戦闘に置いては儂は強いのじゃが…。
流石にあれは相手が悪かったようじゃ。」
頭上を見上げ、儂はため息をついた。
冒険者達とはまるでレベルの違う相手。
あんなのにいきなり遭遇するとは、外は恐ろしい。
整復の間、儂は目の前で苦痛に叫ぶ姿を見続けることになった。
見て楽しめる人もいるのかも知れんが、儂としては無事に治るか気が気でなかった。
どうにかこうにか整復が無事に終わったことで漸く安堵できた。
「そうじゃな、とはいえ上階はさっきのがまだ居るじゃろう。
面倒じゃが別の出入り口を探すしかないじゃろな。
とりあえず、移動するか?
それとももう少し休んで行ってもよいぞ。」
儂の方が魔法を掛けて貰ったおかげですっかり動けるようになっておる。
メイドが移動を選ぶのなら抱えてやることも出来るじゃろう。
その辺の判断は任せることにした。
儂より経験もあるようじゃし、何より水も食料も儂は分けてもらう側じゃからな。
■ノルウェン > 「いえ。
そもそも、相手はまだ姿を見せていませんし。
スター様の力は、この状況下では心強いです。」
しかし、あれは一体なんだったのだろう。
まるでこの遺跡全体を支配しているかの様な死の瘴気の主。
その正体すら、まだつかめていない。
「どうしましょう。
ここで二人回復するのを待つか。
あるいは、もっと安全そうな場所を探すか。
……スター様の判断に従います。」
正直言って、今の自分は足手まとい。
痛みもまだ強く、頭が朦朧として正しい判断ができそうにない。
スターは判断を任せるつもりのようだが、
ここは彼の方針に従う方が良さそうだ。
■スター = ダンフリーズ > 「奴らには及ばずともお主を守る位はきっちりさせてもらおう。」
頼られるとやはりその気になってしまう。
儂はなんと単純なのじゃ。
気づけば誇示するように、拳を作り自らの胸元を叩いておった。
「そうじゃのう、他に安全な場所があるのかわからんが…。
向こうもここに落ちたことは分かっているわけだし、移動しようか。
乗れるか?」
儂はメイドの前に背を向け、その場にしゃがみこんだ。
おぶって移動しようと考えたわけじゃ。
両手が使えなくなるが、最悪ブレスを使いながら逃げることも出来る。
儂もこの判断が正しいか自信がないが、追手が来ないとこも限らない以上仕方がないじゃろう。
■ノルウェン > 「なるほど、そうですね。
……では、移動しましょう。」
確かに、奴等が我々を追ってくる可能性は高く、
そうなると落下地点であるここは危険そうだ。
「申し訳ございません、スター様。」
怪我をした自分は背に負う、というスターに甘える。
まだ痛む身体を引きずり、スターの背に身体を預け……
……いろいろ背中に押しあたる形になるが、
今はそんなことは気にしている場合では無い。
そして二人は、闇に包まれた遺跡の下層へと足を踏み出す。
ここは。まだ誰も踏破していない。
正真正銘、何が待ち受けているか分からない危険なエリアだ。
■スター = ダンフリーズ > 「気にするでない。
困った時はお互い様じゃろ。」
背中にメイドの体重がかかると、儂はゆっくりと立ち上がった。
互いの身体が密着することでメイドの身体の柔らかさを感じてしまう。
こんな時に申し訳ないのだが、ちょっとした役得じゃ。
遺跡の下層階を進むが、あくまで身を隠す場所を見つけるための移動じゃ。
おまけに負傷したメイドを背に乗せている以上素早い移動も避けた方がいい。
その為、物陰に身を隠しながらの移動となる。
もどかしいが今の状況では慎重に越したことはないじゃろう。
「お主、具合はどうじゃ。
休みたいなら一旦立ち止まるからいつでも言うのじゃぞ。」
儂はメイドに声を掛けつつ、先へと進む。
■ノルウェン > 朽ちかけた回廊を進む。
生き物の気配は無いものの。不気味な何かを感じざるを得ない。
「いえ、わたくしは大丈夫です。
スター様も、疲れましたら無理をなさらず。」
気遣うスターに感謝しつつ、ゆっくりと遺跡を進む。
果たして、これが引き返しているのか、それともさらに奥に進んでいるのかも良く分からない。
そうして………
「………おぉ……。」
暗い回廊を抜けると、神秘的な薄明りの空間へと。
かなり広い地下空洞が、眼下に広がっている。
壁や天井が淡く緑色に発光しており、灯りが不要な程度には明るい。
……ヒカリゴケか何かの類が生えているのだろう。
さらに、空間の壁面に這う様に、石造りの建物が立ち並んでいる。
それはさながら、滅びた古代都市の様である。
そして都市の中心、ひと際荘厳な、神殿の様な建物が崩れる事なく残っているのであった。
■ノルウェン > 【中断】
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からスター = ダンフリーズさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からノルウェンさんが去りました。