2022/01/28 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  月の明るい、宵のこと。

 ――っはあ、はあっ…!

 呼吸を酷く乱しながら、月光に蒼く照らされキンと冷えた真冬の寒風に凍てついた古代遺跡の一角。朽ちかけた墓所を駆ける足音。
 汗を滲ませて時折背後を振り返り、追って来る数匹の魔物を確認して唇を噛み締めて目を眇め、どうにか足を速めようとするが、

 ぽた、ぽたぽたっ……

 左腕に負った傷から滴り落ちる血と走る痛みに思うように走れない。
 グール討伐の依頼を受けて、数人編成でパーティを組みやって来たが、俄かパーティは連携が上手く取れずに隙を衝かれて襲撃され、分断されてしまい後衛にいた自分は一人離散して――

「――ッ、やっ、この……っ!!」

 とうとう早足のグールに追い付かれて、飛びかかられた。

 ガ、ン! 

 咄嗟に握っていたスタッフを大きく振ってその顔面に食らわせて怯ませるが、間髪入れずに後続のグールに脚を掴まれて引き倒され、

「―――ッ!!」

 声にならない悲鳴が夜の墓所に響き渡った。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にさんが現れました。
> 悲鳴が響き渡る墓所の一角。
モゾ、と何かが蠢いた。

「えいやーっ」

そして次いで聞こえたのは、如何も間の抜けた様な掛け声。
その掛け声と共に、ザンッ!と襲い掛かろうとするグールの腰から上と下に体が二分された。
二体三体と他にもグールが居るならば、次々と両断されてゆくだろう。
ただ、そうしてグールを断ち切ってゆく攻撃は目視出来る事は無かった。

「えーっとぉ…確か、この辺りから声がしたような、しなかったような?」

そうした後に現れたのは、その場にそぐわないワンピースドレス姿の少女が一人。
地面に倒れている事に気付いていないのか、キョロキョロと辺りを見渡している。

ティアフェル > 引き倒され、そのまま四肢を捥がれ、臓腑を食い破られ、肉を貪られ生き血を啜られ、とグール相手に流れて行くはずだったある意味自然な惨劇、は不意に両断された。

「…………?!」

 小気味よいくらい軽快に響く斬撃の音が襲い掛かって来ていた屍肉喰らいをいともたやすく割り。
 その上で後続の連中まで纏めて片づけてしまう、猟奇な光景に唖然と目を見開き。転倒させられて冷たい地面に伏したまましばし言葉を失う。

「………は……?」

 無残な魔物の骸の向こうから聞こえてくるのはそんな惨状に似つかわしくない至って高い声。
 月明かりに浮かぶのは酷く小柄なシルエット。
 ――その屈託のないまでに幼げな姿はほの蒼い月光に浮かんでむしろ物凄く不吉な存在にすら見えて、思わず息を呑んで両手で口を塞いで硬直した。
 かわいらしい小さな人形なんかが急にナイフを構えて襲ってきたら理屈抜きに妙に怖い――そんな心情が芽生えていた。

 見つかったら……殺られる。
 辺りを見回す姿はそんなことを想念させ、咄嗟にぶった切られたグールの屍骸の下に潜んだ。

> 見渡してみたものの、見えるのはグールだった残骸ばかり。
どうやら、悲鳴の主はその下に居るのだが気付いていないようだ。
微風に長い黒髪を靡かせカクンと小首を傾げながら、腕を組んで考えるような仕草をすれば。

「気のせい、じゃなかったと思うのですけどねぇ。
これは困りました、誰か居るかなって思って力を振り絞ったのですが…
もう…げん、か、い…」

その声は、本当に困ってるのかどうか、と思えるような間延びしたものではあるのだが。
そんな呟きを漏らしている、その言葉が途中でたどたどしいものとなり。
そして…パタン、とその場にうつ伏せに倒れ込むのだった。

ティアフェル >  ヤバイ。ヤバイヤバイ。見つかったらグール諸ともやられるか、何か想像も及ばないようなとんでもなくサイコな目に遭わされる。

 なまじ幼い少女。だというのにやっていることが血なまぐささしかない。
 ――ついで夜中の遺跡。ついでに墓地。そんなところにいる時点で大分やばい。
 様々な条件が重なり合って結論。
 少女殺戮者という見解。

 お願い、見逃して堪忍して。
 そんな風に恐怖心を勝手に増幅させながら、グールの死臭の中噎せ返りそうなのをぐっと堪えて折り重なった屍骸の下で息をひそめていたが。

「――……?」

 おっとりとしたその声音が不意に途切れ途切れとなり、やがて途絶えた。
 次いで、何か倒れる音。
 
 黙り込んでいると、やがて辺りは完全に静寂に覆われ音を発するようなものは一時絶え。冷えた風鳴りだけが鼓膜を震わせていた。

 念のためしばし間を措いて慎重にそろそろと骸の下から顔を出し辺りを窺ってみると、青白い月光にほんのりと見えたのは先ほどの少女が昏倒している姿。

「……???」

 何が何やら訳が分からないながら取り敢えずは危険はなさそうだと判断すると屍骸の下から這い出て。

「…………」

 さて、どうしたものかとグールの体液に汚れながら、屍骸前で倒れている少女を見下ろして小首を傾げた。