2021/09/17 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にネフライトさんが現れました。
■ネフライト > 王都から少し離れた場所に存在する、メグメール自然地帯。
広大な森林に周囲を囲まれた中にあるのは、透き通った純水に満たされた小さな泉。
泉自体は当然ここだけにある訳でなく、探せば点々とその存在を知る事は出来るだろう。
しかし、そのどれもがこの泉に勝る事はない事は、知る者が少ない。
それは純粋に、その存在が探られる事が稀な為。
小さな泉の純水は湧き水で、それは地下水脈に流れ落ち、周囲に流れる事がないのがその理由の一つだ。
そこに集うのは自然の動物が殆どだが、その中に一人、少女らしき姿が伺える。
肩よりちょっと長めのふわふわした薄紫の髪に、ちょっと垂れ気味な薄紫の瞳。
真っ白なワンピースにサンダルという格好は何故こんな場所に居るのかと不思議に思われる事だろうか。
ただ、その額に伸びた一本の角が、その少女が人でない事を示している。
見方によっては魔族等と勘違いしてしまうかもしれないが、それを感知する術があればそれも違うとわかるのだが。
その少女は泉の縁に腰を下ろし、サンダルを傍らに素足を水に浸し涼んでいた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にタピオカさんが現れました。
■タピオカ > 王都の血生臭さから離れた喜びケ原の豊かさ。
その森林の木陰で息を吸うと、旅人の足元は弾む。
王都を出立して旅の途中だ。
褐色肌の冒険者は、一匹の牝鹿の姿を木立の中で認める。
狩る気も無いが、見慣れない獣道へ歩みをすすめる後ろ姿にひかれてゆっくりと追いかけた。みるみるうち、その鹿の他にリス、ウサギ。脚の長い地上鳥。小動物が寄り集まって行く。
何があるんだろう。その好奇心が、ひらけた視界にある清い泉の佇まいに。
そして、その水に素足を浸す白いワンピース姿の少女の淑やかな佇まいに小さな感嘆の吐息となり。思わず目元が緩み。
「こんにちは、隣人さん!
……僕は旅の者。その鹿を追いかけてみたら、この泉にたどり着いたんだ。
水筒の水を補給したいし、まだ昼は暑いから涼みたいし。
少し、お邪魔していい?
隣人さんと、……お話もしたいし!」
相手の名前がわからない時に呼びかける、遊牧民なりの親しい呼びかけ。驚かさない程度の声音と距離で細い背と横顔へ投げかける。
その額の美しい一角にも気づき、まぶしそうに瞳を細め。
小動物たちの様子から彼女に敵意を認めなかった。
しばしの休憩と歓談を求めて、相手の薄紫の瞳、身をかがめて覗き込み。
■ネフライト > それはすぐに気付いた。
動物達に紛れて別の何かが近付いて来る。
それでも、足を浸したままで警戒の色は見せなかった。
理由はたった一つ、動物達が騒がないから。
その何かは真っ直ぐにこちらに…正しくは、きっとこの泉に向かって来ている。
それを理解しているからこそか、新たな来客がやって来るのに合わせ顔をそちらへと向けた。
褐色の肌をした人間、とりあえず、今わかるのはそれだけ。
「こんにちは、えっとぉ…りんじんさん?っていうのは私の事、だよねぇ?
そっか、あなたが怖がりもせずに導いたのは、そういう事だったの。
…別にこの泉は誰の物でもないし、好きにすれば良いよ?
涼しみたいなら、この辺りが日陰になって良いと思う。
お話…は、うぅん…別に、いっか」
彼女の言葉に不思議そうに首を傾げながら答える。
隣人さん、聞き覚えのない言葉だからだ。
言葉の途中で一度だけ、彼女が追って来た鹿に目を向けるも、すぐに戻して。
水が欲しい、涼を取りたい、そんな彼女へと続けてそう返す。
その際、場所を示すようにポンポンと自分が座っている泉の縁へと手を付いて。
身を屈め覗き込む彼女を、薄紫色の瞳が見詰め返す。
■タピオカ > 「うん!そうだよ。
僕の故郷の言葉でね。見知らぬ人、でも仲良くしたい人への呼びかけなの。
――わ、ありがと!
それじゃあ、お邪魔するね」
人型であっても、人の言葉が通じるかどうか、また友好的で居てくれるかは保証がなかったから。
ほどなく帰ってきた鈴が転がるようなかろやかな声音に、
そして、具合よく日陰になっている場所を手先で示されると笑顔こぼれる。そっとその場所に腰をおろし。荷物を降ろした。
「僕の名前はタピオカ。良かったら、隣人さんの名前も聞かせてよ?
せっかくだから、お名前で呼びたいな。
それから――、これ!お口に合うかな。
旅に出る前、おやつ用に作ってきたクッキーだけど。
良かったら召し上がれー?」
自分の胸に手を置いて、にこやかに名を語り。
彼女の名前を求める。
お近づきのしるしに、何か適当なものが無いかと布製の大きなリュックを手探り。
間もなく取り出したのは、小さなお弁当箱みたいなブリキの缶。開いた中にははちみつを練り込んだクッキー。中央に、いちごクリームが埋めこまれたもの。アーモンドとバターの香る焼き目のついた、フィナンシェも。
味覚は人と近しいかどうかわからないものの、勧めてみて。
■ネフライト > 「ふぅん、人の言葉って奥が深くて難しいねぇ。
場所によっても違うんだもの、覚えきれないわ?
感謝の言葉なら、私じゃなくて、あっち。
うん、どうぞ?」
人と接しようと思う事は稀だが、その会話に耳を立てる事は出来る。
だから人によって使う言葉の違いがわかる、自分に向けるその気持ちは悪くないのだけど。
そう言葉を返しながら、腰を下ろしお礼を伝える彼女へとチョイチョイと泉を指差した。
「タピオカ…うん、タピオカ、覚えた。
私はネフライト、って名乗っているの。
名前なんて別に良いかなって思ってたんだけど、付けてくれた人が居るから」
頭を傾けたまま、名乗る彼女の名前を覚え。
聞いて返さない訳にもいかないし、それを彼女へと教えておいた。
そうした後に、リュックを手探る彼女に不思議そうに見詰めていれば。
取り出された缶の中身を見せながらの説明。
これも聞き覚えの無いものだけど、その中から漂う甘い香りで食べ物か、との予想は付けられた。
自分が知っているのは、人の食べ物も変わった味がして美味しいという事。
勧める彼女を見詰めながら、どれが良いんだろうか迷う訳で。
「くれるというなら貰うけど、本当に良いの?
私が返せるものなんて、何もないのだけど」
迷いながらも、念を押すようにそう伝えた。
それはないだろうけれど、後から何かいわれても困るから。
■タピオカ > 「そっか、よろしくね、ネフライト!
明るい名前だね。花か、それとか、何かまぶしいものからとった名前かな」
彼女の名前を知れて顔に笑顔が広がる。
教えてもらった名を舌に載せて、発音弾ませた。
どうやら、誰かが彼女の体を示すようにつけてくれた名前の様子。語感から連想したものを浮かべつつ。
「あはは、物々交換してるわけじゃないよ。
僕は、ネフライトと仲良くしたいだけ。
友達になりたいだけ。
だから遠慮なく貰ってよ。
もし迷ってるなら、とりあえず!
こっちはいかが?」
人付き合いには二通り。
損得打算と、お友達。
自分は別に等価交換を求めているわけじゃないと、首を振りながらも笑む。
摘んだのはクッキー。口にすれば蜂蜜を混ぜて焼き上げた小麦粉のしっとりとした質感といちごのクリームの甘味が味わえるだろう。
指に摘んだそれを、お試しあれとばかり。
相手の小さな唇まで、そっと運ぼうと。