2021/08/13 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にノイシェさんが現れました。
■ノイシェ > 街道から少し離れた場所に位置する森の中。
緑の天蓋に覆われ月の光も満足に届かない鬱蒼とした宵闇の中を、ふわりと蛍のように彷徨う魔法の明かりを伴って歩くのは、金色の髪と長い耳を持ったエルフの女の姿がひとつ。
「ふぅ……この位、集まれば十分かしら……。」
小さな溜息と共に、その手に携えたトランクケースを確認するように視線を落とす。
中身は此度の探索に用いる為の道具一式と、一通りの探索を終えて採取した薬草や植物の根などの類。いずれも店の商品として取り扱う薬品の材料や、魔法の品の触媒とする為のものばかりで。
■ノイシェ > 夜も更けてきたので、そろそろ街まで戻ろうか――そう考えていた矢先、ふと視界の片隅に何かを捉える。
慎重に様子を伺い、周囲に魔物や獣の気配が無いのを確認してから魔法の明かりを其方へと向けて、ゆっくりと足を進めてゆく先は一本の大樹の根本へ。
「これは……確か、この辺りに生息する魔物の……。」
掲げた魔法の明かりを受けて不気味な光沢を放つのは、大樹の根や幹にべっとりとこびり付いた半透明の粘液。
一見すれば唯樹液が滲み出ただけのようにも見えるものの、明らかに何らかの目的を持って擦り付けられた、植物性のものとは異なる体液。
その持ち主である魔物の姿を直に見たことは無いが、知識としては知っている。主に外れの森や洞窟に生息する魔物の一種で、その体液や身体の一部もまた、薬品の材料や魔法の触媒として重宝されているものだった。
■ノイシェ > 携えたトランクケースの中から空の薬瓶を取り出し、樹の幹にこびり付いた体液を指先で掬い取る。
にちゃり……と粘着質な音色を奏でて糸を引く感触に眉を顰めながらも、一掬い、二掬いと指先で掬い取った体液を瓶の中へと移していって。
「とりあえず、こんなものでしょうか……。」
そうして瓶の七割程度まで満たし終えると、瓶の蓋をきつく閉じて。取り出したハンカチで指先に纏わり付いた体液を丁寧に拭い取ってから、今一度手にした瓶の中身を淡い緑色の瞳がじっと覗き込む。
「……傷薬の他にも、媚薬の材料や魔法生物の素体としても用いられるのでしたっけ……。」
知識の中にあるその用途を思い出しながらぽつりと呟きを漏らす。
主に傷薬の材料として取引されてはいるものの、女が働く店で扱うのならば間違いなくその用途は後者だろう。
加工したものとはいえ、あまり飲みたくはありませんね……などと、未だ指先に残る纏わり付くような感触を思い出しては小さく漏らして、手にした瓶をトランクケースへと仕舞い込む。