2021/08/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 青く深く暗い樹海の奥で――
っはあ!っはあ!っはあ!っはあ!
追い詰められたように酷く乱れた呼吸。地を蹴る足音は強く速く。
滲んだ汗を散らす表情は歪んで崩れて、唇を噛み締めていなければ潤んだ瞳から滂沱が散ってしまいそうになっていた。
必死に走って、駆けて――やがて木の根に脚を取られ縺れ転げる足。
「あっ――!」
ずさあ、と前のめりに倒れて膝を擦り、咄嗟についた掌から出血したが、それでもよろけながらも立ち上がって、また駆けだそうとする足は、止まるとそこで死んでしまうかのように焦燥に塗れていた。
「嘘でしょ……嘘でしょ…っ…こんなっ……」
うわ言の様に思わず声が苦し気に零れた。
後ろを振り返ることさえ恐ろしくてできない。見てしまったら、もしも最悪の光景があれば、もう走れなくなってしまう。
故にひたすら、昼なお鬱蒼と暗く、夕刻を迎えた今は血の様に赤い斜陽が薄く差し込む森闇の中をただただわき目もふらずに駆け抜けた。
■ティアフェル > ――事の発端は数刻前。
オーガ退治に訪れた冒険者たちの前に、事前情報とは相違した異様で強大なオーガにエンカウントしたところから始まる。
亜種なのか変異したものなのかは不明だが――通常のオーガの倍ほどのあろう体躯と異常な膂力を有した、全員が初めて目の当たりにするような風体にまず、タンカー役の盾持ちがそのガタイのいい見た目からは考えられないような細い悲鳴を上げ、いの一番に逃げ出した。
残った剣士、魔術師、回復術師は善戦し、それを討伐したものの――後発に現れたオーガ二頭を相手にする余力は残っておらず、唯一の前衛たる剣士は後衛2人を庇って対峙するのは不可能と判断し、散開して離脱する指示を下すさ。
それ程に、後衛二人は魔力を摩耗させていたし、前衛は体力を消耗させていた。
このままでは全滅だ。せめてバラバラに散開すれば、誰かは生き残れる可能性も上がる。こうなってしまってはとかく己の身を最優先に行動するしかない。
例え誰かが襲われた悲鳴を聞こうとも、振り切って逃げるしかない。
木擦れに混じり、どこか遠くで悲鳴が木霊した気がした。一瞬、背に冷たい汗を伝わせ脚が止まる―――かぶりを振って駆け出そうとするが、もう脚が限界を迎えがくがくと震えて走ってくれない。震えたまま、両足を引き摺るように前に進み。
荒く乱れた呼吸にうわ言が混じった。
「やだ……やだ、やだ…っ…」
視界が自然と霞む。
■ティアフェル > ―――また響く、引き裂かれるような絶叫。
聞くに堪えず耳を塞ぎながら、ずるずると引きずる足で土に己の進む跡を目印のようにつけてしまっていたが、それにも気を払う余裕すらなくただただその場から離れようと必死に森の向こうを目指した――
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からティアフェルさんが去りました。