2021/06/20 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にウーズさんが現れました。
■ウーズ > ――まるで祈りを捧げているようにさえ見えた。
手甲の指を組み合わせ、頭を垂れている。
ぼたり、ぼたり――と兜の隙間から黒い汚泥のようなものを滴らせながら。
落ちた黒は透明な泉に溶けて、拡がって消えていく。
此処は自然地帯にある森の中。
旅人や冒険者が街道を外れたり、森に出入りする時によく通る泉だ。
月が雲に隠れていても、澄んだ泉のせいかどこか清浄に見える場所。
丁寧に整備された、その縁にそれは存在していた。
人間の身長を遙かに超える巨大な黒い腐肉か、アメーバの塊のようなもの。
上半身だけが、汚れて朽ちかけているが魔力を帯びた鎧に守られる。
そして、まるで祈るように手を組み、頭を垂れている。兜の奥で双眸が熾火のように揺れた。
祈っているか――あるいは、祈りの形を真似ているのか。
いずれにせよ、撒き散らされる汚濁と、ばらまかれる瘴気のような気配は酷く、とても、この場には不似合いだった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にリリアさんが現れました。
■リリア > 不浄の化け物が現れたと聞かされたのが数日前のこと。
冒険者として、浄化に向かったが、現れた化け物の規模は想定より大きく、わずかに目をすがめ。
せめてこの化け物による汚染が広がらないよう、周囲一帯にいくらかの祝福と、浄化を施そうと。
なるだけ化け物に気付かれないように気配を消しながら進むが、さほど気配遮断に長けてはいない。
相手の攻撃射程を目算し、攻撃が届かないであろう位置に座って、神への祈りの言葉を唱えはじめ、少しずつ、化物による瘴気を浄化しはじめ。
■ウーズ > ぎし――と、鎧が鳴る音が響いたのは女の聖句が紡がれはじめたところだろう。
永遠にそうしていそう、と錯覚しそうな祈り染みた姿勢が解ける。
そして、視覚が機能しているかもわからないのにゆっくり、兜の視線が巡らされる。
彼女の目算は間違ってはいなかっただろう。
汚濁のように拡がる粘液も、当然その上に鎮座する鎧も、祈りを唱える娘には届かない。
けれど――そう、ひとつ誤算があるとすれば
「―――――」
ごぼ、ごぷ、ごぼ、ぶぐ――。
水音、というには濁り過ぎた音が兜の口元から零れる。
もし、知る者がいれば――とうに誰も使うものもいなくなった古代の言語の詠唱に似ている。
そう評したかも知れない『声』。
それは指向性を持った魔力となって、女へ届くだろうか。
腹部にある紋様。あるいはそれに共鳴するかも知れない。そういう魔力の波長だ。
■リリア > 「ッ——…!!」
下腹部に不意に感じた熱。
人の耳では声として認知できないような音に、ぞくりと体の熱が上がる。
「ぁ…っ、これ、は、…?」
がくりと身体から力が抜ける。
神の存在が具現化したのかと勘違いして周囲を見渡す様子は、完全に集中力を掻き乱されており。
その視線は、目前の異形へ向けられて。
「……神、なのですか…?」
不浄の存在をそう呼ぶことへの困惑。だが、自分の紋様を呼応させ、自分を屈服させるだけの力を持ったものを、そう呼ばざるを得ずに。
■ウーズ > ずるり――と泉の傍から異形が動く。
汚濁に塗れ、けれど昔日の輝きを喪わない鎧。
そして、朽ちかけたサーコート。それに覆われただけの膨大な質量。
黒い汚泥や触手のようなそれが――さて、神と呼べるだろうか。
けれど、共鳴する魔力は下腹の文様を活性化させている。それだけは事実だ。
――仮令、それが散文的な解析と魔力の共振に拠るものだとしても。
「――――」
娘が、神と問いかけるのにそれはYESともNOとも返ししない。
ただ、近付いていく。ずるり――ぐちり――と地面を飲み込みながら近付いていく。
動かなければ、最初に足元が黒い汚濁に覆われていくだろう。
そこから、じくじくと伸びる黒い触手が肌に触れようと近付いていく頃には
彼女の目の前に鎧があった。そして、その手が伸びる。
まるで、愛し仔の頭を撫でようというように。