2021/05/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > ゾス村の南。夕方。
セレネルの海の潮騒の香りがほんのりと漂う野原は傾斜の緩い丘の連なりで、その間には大小いくつも川が流れている。
あるものといえば低木、獣道、空を飛ぶ鳥。
そして手つかずの、王位継承とも魔族とも無縁な地平線まで続く居心地のいい草原。
昼間は初夏の緑に瑞々しい風景は茜色の夕暮れに染められ、太陽が欠伸をしながら沈むところだ。

先駆者の旅人が残していったのであろう、足で踏み鳴らされただけの小道の脇に岩場があった。そこには、焚き火の煙が静かに立ち上っていた。

煙に気づいた者が居れば、蜂蜜の塗られたパンが焼ける香ばしい匂いにすぐ気づくだろう。
そして小さな鼻歌も。

焚き火のまわりに突き刺した棒にて手製のパンを焼き上げているのは褐色肌の小さな人影だ。
他にも吊るした鍋では野菜と肉の交じるスープがぐつぐつと音をたてている。

「うんっ!……今日のスープはいい感じにできそうかな。
あとはこれを加えてー、もうひと煮炊きっと」

小さな携帯用のスプーンで味見をすると満足げに頷き。
固形の香辛料をナイフで削って蓋をする。

春よりも夜が過ごしやすい季節。
気ままな一人旅の途中だ。
鍋の中からとけていくスパイスの食欲をそそる香味があたりに広がっていくのを覚えながら、見えた一番星に瞳細め。

タピオカ > 数刻後。
たらふく食べてお腹を満足させた冒険者は、食後の紅茶を小さなカップにて楽しんでいた。
一番星はいつの間にか一面の星になり、砂粒となり、宝石になっていた。
故郷の空にはその風景にオーロラが広がる事もあった。思いを馳せながら、そばに置いた背嚢から地図を取り出す。

王都からゾス村へは随分歩いてきた。
培われた土地勘と星の位置で、どこに自分が居るかぐらいはわかる。それでも、その位置と地図の位置を重ねる作業は楽しい。地図を近場の平たい岩の上に広げると、近くに咲いていた黄色い雑草花を摘み取って、置く。
この花が現在位置だ。地図上でもマグメール国は広く、実際に見回してみるとさらに広い。
ちっぽけな自分をどう動かそうか。紅茶を口にし、眠気がよぎるまで思案に暮れる野営の夜――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からタピオカさんが去りました。