2021/01/22 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 山岳」にジギィさんが現れました。
■ジギィ > 「う、はぁ~…」
冬は空が澄んでいて星が綺麗だ。
真っ黒な帳に白く霞んで見えるのは己の息ばかりで、ちらちらと瞬く星はじっと見ていると降ってきそうなくらいだ。
小さいころも良く木登りして、天辺で枝の合間から空を覗いたりするのが好きだった。
長じて好き勝手出来るようになってからは、独り、山の高みで眺めるのが趣味みたいになっていたものだけど…
(ひさしぶりだな)
ぐるりと殺風景な周囲を見渡す。
森を抜けて岩肌を登って、頂上まで来るのに半日かかってしまった。
草木も疎らなここは岩が多くて、遮るものが無くて眺めが良い代わりに、吹く風はまともに佇むものに吹き付ける。
その風に目を細めながら、マントの下で思わず両腕を抱く。
実用重視の毛皮のマントは寒さからきちんと身体を守ってくれるけど、それ自体が発熱するわけではないから、隙間から入る風には気を付けなきゃいけない。
少し離れた所に設営したごく小さなテントの方へと戻っていく。
テント自体は地を這うように低いし地面に埋火がほの赤く灯っているきりだけど、それでもこの殺風景な周囲にこの野営地は聊か賑やかすぎるくらいの彩に思える。
登って来る間に人気は当然のようになく、どう猛な動物も今はまだ冬眠中のようで、頂上ちかくで見かけたのは渡り鳥たちだけだった。
ひとりきり、静かな時間。
「……沸いたかな?」
傍においた薬缶の様子を見ると、その場に座り込んでカップへと注ぐ。
只の白湯だけど、ふうっと湯気を吹いて飲むと舌先に甘く感じるから不思議だ。
飲み込めばお腹が暖かくなる。
わたしを目を細めて、ふたたび星を見上げる。
「……変わらないな…」
■ジギィ > 軽くなったカップを傍らに置くと、マントの下を探って小さな笛を取り出す。
木の枝そっくりなそれは私の前腕くらいの長さくらいあって指と同じくらいの細さなのに、丈夫で折れない。
「…――――…」
唇にあてがうと、そっと空気を震わせていく。
音は風に紛れてごく微か。
わたし自身にも殆ど聞こえない調べだけど、精霊たちには届くらしい。
吹いているのは、小さいころに教わった叙事詩。
ちょっとした英雄譚。
英雄が樹の精霊と出会って加護をうけて、故郷の村を悪魔から救う話。
本当は歌いたいのだけど、竪琴を持ってくるのは億劫だったので笛で我慢だ。
「―――…」
ごく少しの小節だけ吹くと笛を下ろす。
ふうっと吐く息が白い。
膝を抱えて遠くへ目をやれば、人里の灯りが見える。
(…遠くへ、きちゃったなあ)
その灯りがよそよそしく感じるくらいには、感傷的になっているらしい。
ふと胸に押し寄せた寂しさは、あんまり楽しいものじゃない。
「――――…ねよ。」
改めて星空を見上げて宣言する。
明日の朝食は、今日登る途中に採って来た果物だ。果たして如何程舌を楽しませてくれるものか。
あらためて毛皮を身体に巻き付け直すと、埋火に更に灰を掛けて
テントへと潜り込んだ後は、明日の朝日を浴びるまで眠ろう…
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 山岳」からジギィさんが去りました。