2020/04/17 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 森の中」にオブシダンさんが現れました。
オブシダン > 月明かりが木々の間から差し込む深い森の中。
薬草や魔法薬の材料になる霊草の花が生い茂っている場所。
薄っすらと、魔力を含んで淡く輝く花々。

その花の一輪に、黒い蝶がとまっていた。
月の灯りにも染まらず、花の光にも染まらない黒い翅。
ゆるり、ゆるりと開いては閉じ、閉じては開くそこから零れる黒紫の燐光。
淡く明滅して、花々の狭間に散っていく。
春の色合いを含んだ夜風に混じって散る鱗粉で、燐光。
何処か幻想的なそこを黒く、黒く、淡く、仄かに染めていくようで。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 森の中」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > 数時間前のこと。

その日一日の労苦、ギルドからのモンスター討伐依頼を終えた遊牧民。酒場でミートパイを頬張っている時に慌てた表情の医者が飛び込んできた。その場に居たギルド員に噛みつかんばかりの彼いわく、「急患に必要な薬草の原材料になる花を取りに行って来てほしい。誰か手すきの者を手配してくれ」

その依頼に挙手して、依頼主の医者に手渡された地図を見ながらの夜道。途中まで乗合馬車に厄介になった後に現場付近で降りれば、冬から春にうつろう夜の森の香りを吸いながらカンテラを片手に月明かりの森を進み。

「わあぁぁ……っ!
すてきな場所……。
えっと。……あれが依頼にあったお花かな?」

妖精たちの隠れ家。または、巨人が見下ろした街明かり。
絵本の世界のよな景色に光る霊草の花に目を瞬かせ。表情緩む。
いっそう眩しい一本の花に目を向ける。

「なんて、きれいな蝶……」

幼い頃からの野外生活に、黒い蝶を見た体験はまだ含まれていなかった。夢見心地の光の尾をひく羽の色に目を奪われ。
いつしか、依頼の花を摘もうとする手はその蝶のほうへ向かって。ゆるやかに、それを手と手の中へ包もうとする動きに移ろい。

オブシダン > 娘が目指す薬草。薄い紫の花弁を持つ花は此処にある。
黒曜の翅をもつ蝶がその肢を休ませている花弁がそれだ。
手を伸ばし、花弁を摘もうとするならば、蝶はまるで幻のように消えてしまったことだろう。
けれど、けれども――もし、その翅に指を伸ばすのならば

ふわり――と、蝶が翅を拡げる。
舞う黒紫の薄片が、少女の指に触れて、淡雪のように消える。
包み込もうとする指先から逃れるように、けれども、そっと指先に止まる。
近くで見れば、翅の一筋一筋が酷く複雑な紋様を描いているのが見えるか。
薄っすらと仄かに黒く光を灯すような翅。そこから、ふわり、ふわりと鱗粉が舞う。
逃れないのならば決して主張はせず、空気を彩るような甘い匂いが鼻孔を擽っていくだろう。
夢見心地な彼女の心を、更に夢の中へ、より深い幻の中へと導いていくような香。

タピオカ > 霊草の花の白い眩しさは、蝶の色とはまるで違うのに。
すべてのその淡い輝きは、蝶の翅を由来しているようだった。
目的の薄い紫の花びらよりも、全ての光の源たるものへ先に指が伸びてしまうのは、冒険者としてそれなりに経験を積んだ自分でも理解できないものだった。衝動的だった。そしてその事に何ら疑問を挟まない表情で、まるで最初から蝶が目的だったように伸ばす手首。小指の腹に触れた黒紫の薄いかけらは雪のように消えるのに、ほんのり温かくすら感じ。

「あっ、ぁ……!
……えへ。こんばんは、小さな隣人さん。
その翅、凍った冬の湖に透けるオーロラみたい。きれい」

一瞬指先から離れゆくように見えた蝶に慌てながら。自分の指先に留まる姿に嬉しそうに小さな挨拶をなげかけた。
森に住む精霊に向けるような親しい口調で、翅が描くルーン文字の感想浮かべ。
もっとよく見ようと近づく鼻先に、甘い香。

「あ、れ……?……僕……」

息するたびに意識が沈む。ベッドもないのに、自分は見えないぬくもりの毛布に包まれていた。
そのことに違和感を覚えるも、春の日差しの昼下がりにも似た心地には逆らうこともできない。ふわりと身体が浮かぶ。実際には、導かれるままに黒い蝶の夢の中へ落ち。がくり、両膝が落ち。

オブシダン > 投げかけられる言葉に、蝶は何も答えはしない。
ただ、静かに鱗粉を零しながらその指先で憩うのみ。淡く、柔らかく、静かに静かに。
黒紫の燐光がいつの間にか、少女と、黒蝶の周囲を染め上げていく。
さながら、淡雪がいつの間にか視界を白く染めているように。

そして、彼女の意識は消えていく。
請け負った依頼も、時間も、空間も曖昧になっていくように。
その青緑の瞳に映る景色は花園から変貌していく。
一体何が見えるのか―――それは、黒い翅と、少女自身だけが知ることで、知ればいいこと。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 森の中」からタピオカさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 森の中」からオブシダンさんが去りました。