2020/04/15 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/純白の花畑」に白冥花さんが現れました。
■白冥花 > ――…其処は白と黒としか存在しない世界であった。
戯れに極稀に緑と赤が混じるが白と黒としか存在しない世界であった。
鼻腔を擽る香りは草土の香りではなく、白と黒、その内の白が辺りを浸蝕して犯す人の好奇心を揺さぶる甘き毒の香り。
夜空に浮かぶ白い月が一際冷たく眩く輝く夜だからこそ、甘き毒の香りは何時よりも甘く、嗅ぐ者の鼻腔を蕩けさせ、白い世界への好奇心を炙る。
メグメール(喜びヶ原)自然地帯
土と新緑と或いは朽ち枯れた色とが支配する草原の一角で有った場所。
今はその景色は遠く、其処は既に白い闇に包まれた領域と堕ちていた。
大地は白き花の花弁が粉雪の如く積み重なり。
新緑もまた白き花の養分となって朽ちて土にすら為らず吸われ消えている。
白冥花(ハクメイカ)。
月の光を浴びて、それを魔力と栄養に変えて育つ魔性の花。
その花弁や根は万病を癒し寿命を延ばすと言われている希少な花。
だが白冥花が過剰に一箇所に群生した場合。
花達は互いを喰らい合う前に株を分けようと、生息地を更に広げようと移動を始める。
――…今宵白い花が誘うのは『それ』
種子を運ぶ運び手か脆弱な種子を育てる母体・苗床か、それらが成長するまで花畑を守る花の騎士か、何れか或いはそれ以外の何かか、白冥花は甘き香りで好奇心を擽る事で此処へと誘い、調べて、犯して、植えて、咲かせるその瞬間を待ちわびている。
■白冥花 > 夜風が吹く。
一陣の風が白い花畑を過ぎる。
今だ冷気を帯びてひやりとする風が過ぎた後に舞い上がるのはその積み重なる白冥花の花弁、それが舞い上がり、舞い上がった時だけ僅かに地表が露になる。
――…其処に走るのはそこに存在していた新緑ではなく、白冥花の硬い茎、柔らかな蔓、禍々しい緑。
それ以上にその緑に混じる僅かな赤、例えるなら肉、或いは人の血管……小刻みに脈動する白冥花の白からは想像つかないであろう赤である。
それが露出した一瞬だけ、周囲の空気を震わせる鼓動がドクンッドクンッと聴覚が鋭敏なものは聞えるであろうか、生物の鼓動に似た白冥花達の鼓動である。
そしてそれもまた風が止めば白い花弁が空より落ちれば覆われ隠されて消えて、代わりに静寂が甘い香りが白い花に浸蝕された草原に花畑に広がり、また香りでもって嗅いだ者の好奇心を知識欲を煽り、此処へと誘うだろう。
訪れる者がいなくても白き花達の本能は甘い香りを広げ続ける。
静かに、何時までも、その時を待ちわびて……。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/純白の花畑」から白冥花さんが去りました。