2020/03/14 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 月の明るい、宵のこと。
――っはあ、はあっ…!
呼吸を酷く乱しながら、古代遺跡の朽ちかけた墓所を駆ける足音。
汗を滲ませて時折背後を振り返り、追って来る数匹の魔物を確認して唇を噛み締めて目を眇め、どうにか足を速めようとするが、
ぽた、ぽたぽたっ……
左腕に負った傷から滴り落ちる血と走る痛みに思うように走れない。
グール討伐の依頼を受けて、数人編成でパーティを組みやって来たが、俄かパーティは連携が上手く取れずに隙を衝かれて襲撃され、分断されてしまい後衛にいた自分は一人離散して――
「――ッ、やっ、この……っ!!」
とうとう早足のグールに追い付かれて、飛びかかられた。
ガ、ン!
咄嗟に握っていたスタッフを大きく振ってその顔面に食らわせて怯ませるが、間髪入れずに後続のグールに脚を掴まれて引き倒され、
「―――ッ!!」
声にならない悲鳴が夜の墓所に響き渡った。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 夜道を駆ける男が一人。
遺跡のそばのキャンプ地に冒険者の集団が駆け込んできたのが少し前――負傷者多く、手当に協力するうち、行方不明者が一人いるとのこと。
その名を聞くや、後のことは比較的軽傷の者に任せ、剣を手に墓所へ向かう。
幸いにして月明かりは男の疾駆を助け、程なく耳に聞こえた叫び声にますます焦燥――
「ティアッ!」
――ほどなく現着、複数のグールに群がられている少女の姿を前に、名を呼び直後、こちらに注意を向けさせようと雄叫びをあげながら、抜き身を構えて突進する――
■ティアフェル > くっそう、他の奴らどこ行った?!
と恨みがましく考えながら、足首をつかまれて転倒しながらも、掴んできた一匹を蹴り飛ばし。そうしている内にもまだまだ続々と湧いてくるグールが左右からスタッフをつかんできたり、横顔を蹴飛ばされたりと……悲惨。
コレは死ぬかも知らん……と一瞬遠い目をしかけたところで、
「はいっ?!」
突然名を呼ぶ声が響き、群がっているグールとともに発生源へと顔を向けると、
「なんで!?」
石造りの朽ち果てかけた墓標の並ぶ中を縫ってこちらへ駆けてくる顔に目を見開き、そして、新手に向かって奇声を発しながら数匹のグールがそちらへ飛びかかって行った。
■エズラ > 「おおおおおりゃっ!」
真正面から襲いかかってくるグールの片腕を肘の先から斬り飛ばし、返す刀で頸椎を切断、もの言わぬ骸へと還す。
続く個体の脇腹に肩から勢い良くぶつかって体勢を崩しつつ、姿勢下げ、別個体の顎先へと切っ先を突き上げ、片方の眼窩から剣が生える――
「呪文が使えるなら治癒だっ!」
猛然と剣を振るいながら、今のうちに回復せよと叫ぶ――
新手に気を取られたグール達は、少なくとも今のところ、少女への興味を喪失しているように見える――
■ティアフェル > 物の数でもないと云うようにグールどもを蹴散らしてく様子に一瞬、なんでいるの、という疑問は吹っ飛ばされてとにかく回復、と。
「そっちよろしく!」
腕に咬み傷、顔に打撲、あちこちに痣――と致命傷ではないがボロボロ。敵を引き付けていてくれる内に。速やかに集中状態に入り、詠唱を口ずさみ術式を編み始めた。
『痛みを取り去り・傷を塞げ・癒しの光・ヒール』
スタッフを己に掲げて唱えると、淡い暖色の光が生まれ傷を塞ぎ癒していく。
その間にもグールたちは群れを成して剣士の方へ襲い掛かっていき、切断された魔物の腕や足が飛び、断末魔が響き渡り静かな墓所の宵を荒らしていた。
「――っ、は……、やばかったぁ……。
って、わぉ、殲滅する気?」
回復を終えて多少の精神疲労感に首を振り、立ち上がるとグール無双状態に瞠目し。取り敢えず手近な一体を後ろからスタッフで殴り倒し。
「――エズラさん! なんで! ここに!?」
こちらに注意を向けてくる奴を蹴倒して距離を置きながら声を張った。
■エズラ > 統制されていない素手の敵――さらには知能をほとんど手放して集団ならば、そうそう後れを取ることはない――
とはいえ、当初想定していたよりその数が多かったため、一、二度斬撃を加えるたびに距離を取る戦法。
これは奏功し、少女が回復する時間を作れたようである――
「冒険者集団がオレのキャンプになだれ込んできてな――事情を聞いた!」
簡潔に状況説明をしつつ少女に合流、蹴倒されたグールの頸椎へ大上段から一撃を加え、行動不能に。
「しかしちょいと数が多いぜこりゃ……!」
迫るグールの顎先を剣の柄で強かに打って勢いを殺し、体当たりして転倒させる。
少女と背中合わせになりつつ、油断なく身構えて――
■ティアフェル > 「連中、わたしを助けに来るって選択肢を速やかに手放した訳かっ、憶えてろッ」
端的に聞いた経緯に察して、他の仲間は来ずに彼にお任せしたということにイラァ…と歯噛みし。その苛立ちに任せて、
「せあぁぁ!」
グールの首に向かってスタッフを振り抜いて吹っ飛ばし、そして背中越しに次々に湧き出してくる死肉食い達に舌打ちして。
「ほんとにねぇ――でい! どうしましょっかァァァ!」
口にしながらも、語尾ごとにつかみかかってこようとするグールをスタッフをフルスイングさせ、回し蹴りをカマし。
「――キリがないわね――、連中回復魔法にも弱いみたいだから、一発でかいの食らわせてみるわ。その間ガラ空きになるので――よろしくね?!」
生者を癒す術がアンデッドモンスターには逆効果となる。パーティ単位の大人数へ掛けるような全体回復魔法を試みようと提案して。詠唱中の防衛はお任せしたいと。
■エズラ > 「連中もダメージ深そうだったぜ――おまけに回復屋とはぐれちまったんだ、勘弁してやれよっ!」
相変わらず逞しい様子の少女に、どうやら負傷は癒えたようだと安心、額の汗を拭ってから剣を構え直し、二撃、三撃、半ばたたき伏せるように剣を振るう――
「どうやらそれしかねぇようだ――いっちょうこの墓所ごと昇天させちまうよーなのを頼むぜ!」
流石にむちゃくちゃな注文だが、それは少女を鼓舞するための妄言。
呪文の詠唱に入る少女を中心に、迫るグールを迎撃する。
腰にまとわりついてくる個体に苦慮しながら、何とか転倒しそうになるのを堪えつつ、その高等部に肘を打ち込む――
「離れやがれっ!死体に言い寄られても嬉しかねぇぜ!」
■ティアフェル > 「わたしを置いて逃げた罰よっ、もう二度と組まないからっ」
自分達も負傷したのはしょうがないが、それならさっさと自分を見つけて回復させれば良かったのに離脱したとは、薄情ではないかと忌々し気にのたまいながら、ガスガスと寄って来たグールの脳天にスタッフの先を連打して八つ当たりした。
「あのねぇ――除霊術じゃないんだからねっ!」
ふざけたような揶揄いに一言返しては、すぐに集中状態に入る。大技となるとそれなりに時間も精神力も消費する。真っ直ぐに立ってスタッフの先を天に向けて掲げ持ち、深い呼吸法から開始し。目を閉じて外界を遮断するように集中を高めていき。
『――――……』
低く呟く呪文は複雑な発声で言葉としてよりも歌のように紡がれていき。
それが終わるのは近づくグールを彼が何体仕留めた頃だろうか。
『数多の痛み・幾多の戦傷・那由多の鮮血――一切を癒せ・塞げ・取り払え――総てを癒す大いなる光――!』
一刻一秒を争う状況の中まだるっこしくさえ感じそうな刻を消費して、術者を中心にして周囲を一瞬昼間のような明るさで照らし出すような大きな光が生まれ、広範囲に作用する回復魔法。
それは、もちろん近距離で防衛してくれていた彼にも影響したし、群がって来る死肉食い共にも等しく効果を発揮し、光に包まれたグール達が昇華され灰になりぼろぼろと朽ちていった。
■エズラ > 「ぐおおっ……!!」
身体中に細かな傷をつけながらも複数の個体に取り付かれることだけは何とか防ぎ、立ち回る。
胴を薙ぎ、脚を断ち、時には顔面に拳を叩き込み――
後から後から湧いてくるグールの攻勢に流石に押され、いよいよ片脚、腰に同時に取り付かれ、冷や汗を流した頃――
「きたか!」
膨大な光が、文字通り墓所に昼間の明るさをもたらす。
群がるグール達が灰燼に帰すのと時を同じくして、身体のそこかしこに浮いていた負傷が癒え、体力がぐんぐんと湧いてくるのを感じたと思えば――
「……ふ~……上手くいったよーだな……――」
――すべては終わっていた。
ようやくがっくしと地べたに座り込み、一息――体力自体は回復しているので、気疲れからである――
■ティアフェル > 術が発動して周囲一帯のグール達を灰塵へと還したが、精神力を使い過ぎてこちらも膝くだけになって地面にスタッフの端を突き立ててそれを両手でつかみながら、首を落としてへたり込んだ。
「っは、っはぁ、ぁー………。
もーだめ……疲れたぁぁ~………」
身体的にはともかく、お互い精神疲労が激しいようだ。
額を抑えながらのろりとした所作で彼を振り向き、
「いやぁぁ……キッツかったねえ……そもそも二人で片づけるような案件じゃないっての……。
報酬は折半だね……」
いち早く離脱した連中には分け前なしでいいだろう。報告すれば労力に見合った報酬が得られるはずというのがまだ落としどころ。
■エズラ > 剣を杖代わりにして納刀し、念のため周囲を警戒する。
陰気くさい墓所であるということに変わりはないのだが、少なくともグールの姿は確認できない。
「肝が冷えたぜ、流石によ~」
少女のもとへ歩み寄って手を差し出し、立ち上がる手助けを。
「ともかく、無事で良かったな――」
いつだって危なっかしい少女に、呆れ半分敬意半分、という表情を向ける。
先ほどの大規模回復呪文にしても、パーティの中で適切な働きに徹すれば、強力な存在であることは確かだというのに――
「いっそ、他の武器も携帯するようにしたらいいんじゃねぇか」
■ティアフェル > アンデット系モンスターに効力のある術だったため、墓所に沸いていたモンスターに関しては掃討できたようだ。
打って変わって静まり返り、月の光が青く照らす墓碑の群れの中、汗を拭って差し出された手を取って立ち上がり。裾を払って。
「ほんとにね――。ありがとう、今日も助かったわ。
なんだかいっつも助けてもらっちゃってるね」
微苦笑気味に頬を掻いて小さく首を傾げ。武器、と発された言葉にふるり、と首を振り。
「無理ねー。一応回復術師だから。装備に制限があるのよ」
せいぜいスタッフを頑丈なものにするか、メイスに交換するかどうかくらいしかできない。
肩を竦めて告げれば、
「で、他の連中は大丈夫なの? ってか――もう帰っちゃったかしらね」
戦闘不能で早々と離脱したのだから、ヒーラーの身柄は知り合いたる存在に任せて帰還している可能性も高い。戻ったところでその場にはもういないかもしれないなと考えながらとにかく、ここからは移動するかと。
■エズラ > 「なるほどな――あの連中には、テントにあるもの好きに使えとは言ったがよ――」
本格的にダンジョンへ潜ったり、討伐依頼をこなせるだけの物資や薬の類があるわけでもなし。
ともかく、少女の言にしたがってこの辛気くさい墓所からは離れ――一時避難所と化しているはずのテントへと戻って来たのであるが。
「……誰もいねぇ」
数人ほどいたはずの冒険者グループの姿はなく。
見れば簡易テーブルの上に置き手紙と小銭入れが。
それは自分と――少女宛のもので、ちらりと内容を眺めた後、ほらよと手渡し。
そこには――一応の謝罪と、もし命を落としていた時のためにということで、葬式代の足しにしてくれ、という何とも薄情な内容のもの。
「まぁ……あんまり、責めてやるなよ……な?」
あちゃあ、という顔をしながら、恐らくは怒り心頭、憤まんさめやらぬはずの少女の顔色を窺う――
■ティアフェル > 「………やあっぱりね。いーわよいーわよ、とっとと帰ってママのおっぱいでも吸ってなっての」
かくして、動き回る死者やら狩りに来た冒険者やらが去って静謐さを取り戻した、古代の墓所はまた静かな眠りにつき。
そこを後にしてテントまで連れられて来て見ると、人っ子一人いない。
っちぃ、と舌打ちカマしつつ悪態をついて。それから置手紙を渡されて目を通すと、全力でびりびりと破り捨ててついでに踏みつけ。
「憶えてろよォォォ! 事実通りの悪評振りまいてやるうぅぅぅ!!」
事実無根な悪評は振りまかない。今回のできごとをありのままに吹聴して回るだけで充分だ。
冒険者やめやがれ、と目尻を釣り上げて拳を握り。
「ねえっ!! 世の中これでいいの?! ここで責めないでいつ誰を責めればいいの?!
これで笑って済ませるってどんなドMですかアァァァア?!」
がし、と彼の肩をつかんで詰め寄った。