2020/03/05 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にピフラさんが現れました。
■ピフラ > "森の中に秘湯が在り、それを汲んできて欲しい"
冒険者ギルドの掲示板に燦然と貼られた紙を見、颯爽と請け負ったのが今朝の事。
受付の人から『じゃあこれに汲んできてね』と渡されたのが巨大な壺で瞠目したのも今朝の事。
そうして、軽量化のエンチャントが施されて無かったら即キャンセルも辞さない大きさの壺を背負って
今、私は森の中に居る。
「ていうか温泉なんか汲んでさあ~どうするんだろう。飲むと健康に良いとかなのかなあ」
ボヤき、後ろから見たら壺が歩いているように見えるに違いない状態で残雪の残る森林地帯を歩く。
手入れされているとも、されてないとも言えない曖昧な小道は時折人通りがある事を想起させる。
きっと秘湯とやらもこの先にあるに違いない。きっと。
■ピフラ > 歩を進めていると木々の合間に揺蕩う白煙が混ざり出す。
この国は山脈から湯が数多く湧くそうで、こうして森林地帯にも其処彼処に点在するとか、しないとか。
「でもさあ~あの山脈って火山っぽくないじゃん?別の要因で湧いてそうな気もするというか~」
背負う壺に語り掛けても壺から返事は無い。むしろあったら吃驚する。
とは言え無機物と言えど今朝から私が背負い続けている壺。何となく仲間意識を感じちゃうのも無理からぬ事。きっと。
「いやあ中々良い軽量化のエンチャントだよねえ、ちゃん壺ってば。さぞかし名うての付与士と懇意にしてたり?」
「私はさ~そういう呪文は全然でさ~行く行くは覚えて行きたいんだけど──」
壺と軽快なトークを交えていると正面が開けた。やっと目的地か!と勇んで駆けると何という事でしょう。
其処には温泉に和気藹々と浸かる沼ゴブリンの皆様が居るのでした。
■ピフラ > 沼ゴブリンとは沼のゴブリンである。
大体沼地とか水辺に居たりする。魔物鑑定士の纏めた書によるとなんでも魚を捕ったりして生活をしているらしい。
近年、漁師との間で漁業権を奪い合う戦いが繰り広げられているとか、いないとか。
「いやー……お湯ちょっとくださ~い。って言って入るのもなんだかなあ……」
閑話休題。
沼ゴブリンの一団はそれはそれは楽しそうに憩いの一時を過ごしていた訳で
流石に邪魔をするのも如何なものかと私は考えてしまいもする。
「どうするよちゃん壺。このままだと君に潤いが無いぜ……」
木に身を隠した姿勢で背負った壺に問う。当然、答えは無い。
■ピフラ > 「……あ、待てよ。これはもしかして、沼ゴブリンの貴重な生態をうんたらかんたらでは?」
木々に隠れる私に天啓が落ちる。
颯爽と筆記用具を取り出して沼ゴブリンの皆様の行動を観察し始める事にするのだ。
「……普通に水遊びしているよーにしか見えんぞう。単に寒い間は水よりお湯ってだけなのかなあ」
「……あ、でも身体洗ってる。案外綺麗好き?へえ~」
沼ゴブリンの皆様は独自言語でやいのやいのと喋りながら温泉に興じている。
傍から見ていると人間と然して変わらない気がして、成程漁師と漁業権を争うインテリジェンスが存在する気がする。
もしやこれは平和的交渉が叶うんじゃあなかろうか?と思いもするけれど、叶わなかったら大ごとだ。
ぱっと見ただけで5~6匹はいるのだから多勢に無勢ってもんである。
「このまま居なくなるのを待つとして……沼ゴブリンが浸かった後のお湯でもいーんだろうか」
「いやでも管理されてない温泉だもんなあ。そこは私が気にしてもしょーがないよねえ」
木に身を隠した姿勢で再度背負った壺に問う。やっぱり、答えは無い。