2020/02/22 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「あぁあぁ!もうー!!」

冒険者が狩場にしているとある洞窟の奥深くで、魔物の脳天をスタッフで勝ち割りながら焦燥と苛立ちを混じらせた声を上げるヒーラーが一人。
ただいま所属する固定パーティもなく、冒険者ギルドで簡易パーティのメンバー募集を行っていたため、試しに参加してみれば寄せ集めも甚だしいぐだぐだなパーティで連携もまったく取れず――魔物に襲われてあっさり散開してしまい、はぐれて迷って今に至る。

「後衛職だけでどうしろって云うのよ…!?」

ヒーラーの癖に多少の体術は心得ており、雑魚くらいなら何とかなるが。それにしても囲まれればやばい。

「湧いてきたしぃぃ!!」

気付けばどん詰まりでコボルトの群れに包囲されていた。

ティアフェル > とにかく死にたくなければ手当たり次第ブチ殺していくしかない。
問題は体力が持つかどうか。
細腕の割に意外な馬力でガンガン殴り倒していくが、やがては肩で息をし出してスタッフを握る手も痺れてくる。

「くっそ、まっだ……いるの……?」

もう勘弁してくれと吐きたくなる弱音を飲み込んで、

「せい!!」

横合いから殴りかかってくる一匹をスタッフで薙ぎ倒し、その隙に正面から飛びかかって来る一匹の顔面を蹴飛ばした直後に斜めから新手に引き倒されて首筋に咬みつかれ、悲鳴が上がる。

「っあぁ!!」

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にイルルゥさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からイルルゥさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にイルルゥさんが現れました。
イルルゥ > 「―――――!!」

遠く、獣の咆哮が洞窟に響いたような。
気が付けば、黒いフードを被った小柄な冒険者が傍に立っていて。
どうやらコボルトの集団を飛び越え、助けに来たようだ。
その姿は、寄せ集めの冒険者パーティを何とか纏めようとしていた姿だ。
体躯が小さいからと相手にされず、結局効果は無かったが。

「大丈夫ですか、っ、!、ティアフェルさん」

一撃。
踏みつぶすように体重をかけ、ヒーラーの肩口に噛みついたコボルトの頭を粉砕し、解放しようと。
あまりの凄惨な殺され方に一瞬コボルトが怯む。
コボルトの肉片がかかってしまうだろうが、我慢してもらうしかない。

「他の方はすでに撤退しました。傷は癒せますか!」

切羽詰まった声。
ここに来るまで、彼女もコボルトの集団を蹴散らしてきたため、魔力残量が少し減っている。
だからこそ、取り残されていた彼女が、自己ヒールできなければかなり辛くなるが…

ティアフェル > 「……ッ!」

痛みに顔を歪めて乗りかかっていたコボルトを引きはがそうとしていたその時、遠吠えにも似た咆哮が聞こえたような気がした次の瞬間には、救助に間に合った仲間がすぐ傍にいた。

「イルルゥ…?!」

瞠目して声を上げたと同時に、

「げっ……」

瞬殺されたコボルトの脳漿が頬っぺたに飛んできて反射的に顔をしかめて口を閉じ。それから乗っかっていたコボルトを身体の上から退けて転がし、上半身を起こすと。

「大丈夫じゃないけど、イケル! 回復はできるからちょっと残党をよろしくー!」

周囲のコボルトは危険な新手に遠巻きにしながら、隙を窺うようにまだうろついていて。無謀にも勢い任せに飛びかかって来る奴もいそうだ。
コボルトを散々どつき倒していたスタッフを傷口に掲げて詠唱に入りながら、彼女の背後に忍んで。

イルルゥ > 「……よかった、です」

ティアフェルには背を向けて、コボルトと対峙しているから表情は見えないだろうけれど。
噛まれた割には、元気そうだ。
コボルトは毒も持っていないため、ヒールできるなら問題ないだろう。

「――――…」

こちらから襲いかかるのは危険だ。
戦っている間に、またティアフェルが襲われかねない。
既に、『噛みつく程度の隙はある』ことが知られているから。

じりじりとにらみ合っていたが、ついに獣により近いコボルトが焦れて飛び掛かってくる。

「―――っ!!」

その体にカウンターを合わせるように蹴りを入れ、魔力を一点集中。
少ない魔力を調節し、ピンポイントで致命傷となる臓器にダメージを与え、戦闘不能にする。
一時とはいえ仲間となった相手を傷つけた怒りをぶつけるように。

またも盛大に血を吐き、腹に小さいとはいえ風穴を開けて倒れた同胞を見てコボルトが怯み…段々と戦意を喪失していっているようで。
ティアフェルが集中できる時間は、何とか稼げるだろう。

ティアフェル > 「ギリギリセーフ! あんたはできる子だと思ってた! 他の奴らは案の定駄目だね。もう今日限り解散しよう、そしてわたしと組まない?」

痛みに汗を滲ませながらも余裕ぶって彼女の背中にそう投げかけて。
そして施術の際は集中して術式を編み上げて詠唱を紡ぎ、彼女を信頼してコボルト達の動向はおろか、他の事象に一切神経は向けられずヒールを発動させる瞬間は守備ががら空き状態になる。

その間にも飛びかかって来るコボルトを鮮やかに迎撃している頼もしい仲間。完全に壁となってくれているお蔭で、施術に集中でき。スタッフの先から現れた淡い光が咬み痕を塞ぎ癒していき。
コボルト達が戦意喪失して踏み込むのを躊躇している頃合いには回復を終え。仕上げにコボルトの肉片やら血やらを拭って立ち上がり。

「っし。完了! そっちは大丈――夫…だね。うん」

スタッフを握り直して戦線復帰して状況を見ると、ビビっておっかなそうにこちらを窺っているコボルトと増えている死体を見つけて首肯した。
彼女の背中から隣に並んで。横目でそちらを見やり。

「さて、どうする? このまま突破しちゃう?」

イルルゥ > 「固定というのは…………、私に近づかないでくれるなら、いいですけど」

脚に付いた血を払いながら呟く。
否定的な言葉になってしまったけれど、イルルゥの噂を知っているなら、それほど不思議な事ではない。
曰く、近寄りすぎたり触れようとすると怒る。
フードを取ろうとすると二度と冒険についてきてくれなくなる…と言ったものだ。

それさえ守るなら、今ティアフェルを守ったように、実力も思いやりもある冒険者だ。

「どうしましょうか。突破するとなるとまたティアフェルさんが襲われる危険がありますが…」

いくら自分が畏怖を与えたとはいえ、そのまま素通りは許してくれなさそうだ。
かと言って、人一人を抱えて逃亡する力は無い。

「―――他に手段は無いですね。合図をしますから、走ってください」

考えても、他に突破口は見つからない。
先決なのは一先ず洞窟の浅いところまで避難することだ。
そう考えた彼女は、コボルトの死体を踏みにじり、魔力を込めて死体を二つに割る。
それらを両手で持ち、コボルトの集団に投げつけて。
仲間の血と臓物を投げつけられたコボルトたちは半端な知性を持っているからこそ恐慌に陥る。

「今!」

それと同時、ティアフェルの手を引いて力強く走り出そう。

ティアフェル > 「んー……無理にとは云いませんけどさ。距離しか感じない」

頑なに近づくことを忌避する声に、小首を傾げた。どうせならできる子がいいが、できる子がイヤなら諦めるしかない。
明らかに何かを隠していますという様子に、あるいはその秘密を察する者もいたかも知れない。けれど、詮索する質でもないのでそっとしておくのみで。

「けど、うちら近戦派で殲滅力には欠けるじゃん――」

この連中を地道にボコっていくのは骨が折れる。体力的にも厳しい。走れと指示する声に肯いて。

「ラジャ――って、うわお……」

親指をぴ、と立てたが。何の躊躇もなくコボルトを引き裂いて容赦なくぶち投げる模様に語尾が切れる。ヤバイわあ……と内心冷や汗をかき。そして、仲間の悲惨な様子に『こいつらヤベエ…!』とコボルト達が全力で怯んだので、その隙に手を引かれてその小さな手をぎゅっと握り込んで瞬発的に駆け出す。
コボルト達にとっては惨殺者に他ならない人間たちに反射的に飛びずさって自然と道が開かれ。
咄嗟に退き遅れたコボルトをスタッフで薙ぎ払いながら、魔物の群れを駆け抜けて行き―――

「っはあ、っは………と、取り敢えず……ここまで、くれ、ば……大、丈夫……かな……?」

夢中で走り抜けて洞窟の深部は抜けて、騒々しかった魔物の鳴き声も届かない退避場所である横穴まで来ると、肩で息をしながら汗を拭いながら周囲を見回し。

イルルゥ > コボルトがざわついている間に洞窟を疾駆し。
片手で、イルルゥも動揺するコボルトを押しのけて進む。
一瞬も止まることもなく、もし遅れそうなら力強く引っ張って。

やがて横穴にたどり着けば、一息。

「ふ…。……はい、大丈夫そうですね。声も聞こえません」

横穴に少し間を空けて体を預け。
イルルゥは息は切れておらず、ただ落ち着くために息を吐いている。

「少し休息したら出口へ向かいましょうか。依頼は失敗と判断されるかもしれませんが、命が無くなるよりはマシでしょう」

ヒールをしたとはいえ大丈夫ですか、と向き合って声をかける。
少しうつむき気味で…ランタンがあっても相変わらず表情は見えないけれど。
ただ、酷く心配はしているようだ。

ティアフェル > 手を引いてもらったお蔭でぶれずに進むことができた気がする。
小さいが強く頼りになる手。握ってる間に少し汗ばんでいて、安全な場所まで来ると緩々と離し。

「あー……助かったぁー……もう駄目かと思ったよ。マジ焦った」

ふぃー、と大きく息を吐いて洞窟の横壁に背を預けて汗を拭い。
どくどくとまだ弾んでいる心臓を抑えて。

「命あっての物種だよ。ありがとねー。わたしは大丈夫。イルルゥは? 怪我してない?」

覗き込んだりすると嫌がられるので、そのままやたらに距離は詰めないままで小首を傾げて尋ね。

イルルゥ > この程度なら、まだ大丈夫だ。
自分から触るのならある程度は、彼女の特性はそれほど発動しない。
少し我慢するだけで、冒険者仲間の命が救えるのなら

「―――…、間に合ってよかったです」

くすり、笑う声。
本当にギリギリだった。
あと少し遅ければ殺されていたか拉致されていたか。
どちらにしてもマシな結果にはならなかっただろう。

「いいえ、当然のことですから。ええ、大丈夫です
多少疲れましたけど、出口も近いですし」

故意に近づくことを嫌う以外は、友好的にしようと決めているイルルゥは。
こく、と頷いて、少しだけ顔をあげて笑う口元を見せよう。

ティアフェル > 「お蔭様でー。今回ばかりは本当……。陣形が崩れて魔物に襲撃されて真っ先に逃げていく前衛達を見て、ブチ切れながらもう終わったと思ったよ。びっくりする程野郎どもがへたれだったねえ」

当然のように陥ったピンチの中。結果的に駆けつけてくれたのはこの一番小さい女の子一人で。
額に手を当てて情けない……と嘆かわしそうに首を振り。今回のパーティはもうなかったことにしようと。

「で、他の連中は逃げたんでしょ? よく一人で戻ってきてくれたよね。イルルゥだって危ないのにさ」

 いい子いい子、と触れない代わりにその頭の上あたりの中空を撫でる手つきで。
 そしてついでのように。

「今回負傷者は出てなかった? まだ洞窟の周りにいるんだったら一応回復してやらないとね」

まだ、辛うじて冒険は終わっていない。クエストはお家に帰るまでがクエストです。だからパーティも解散はしていないとして。ヒーラーとしての働きはしようと。