2019/12/08 のログ
■白冥花 > 一面純白の花に浸蝕された草原地帯。
その地に広がる薄く甘い香りは月の魔力の香りとも言えよう。
草木の香りとも果実の香りとも違う不思議と癖になりそうなただただ甘い香りは色もなく、だが着実に月光が届く場所全てに広がりつつある。
だが逆に言えば気の木陰や純白の花の咲かぬ場所には香りが届かない、不自然で歪な花の香りは徐々に濃度を増すことで、その香り届かぬ場所にすら香りを届け隠れている者を炙りだして花畑のほうへと誘おうとする意思があるかの如く香っていく。
幸いなことにまだ其処までは到達してはいない。
花畑の近くに立ち寄れば違和感を感じる程度でしかない。
その違和感を信じて離れるなら犠牲者にはならないだろう。
だがそれも流れ行く時間次第。
月光を浴び続ける白冥花は香りだけではなく、あちらこちらの地面を下に広がる歪な根っこをうごめかせ始め、もごもごと地面が盛り上がっては沈みを繰り返し、その身に集めた月の輝きに酔い始め持余す魔力と生命力で根を動かして直接獲物を探し始めだした。
■白冥花 > 大地の中を泳ぐ根の速度は非常に重たく遅く、土を抉り岩を削岩しながら進むための力強い進みというだけであり、是が一度大地から隆起してしまうと俊敏な姿を見る事が出来る。
耳を澄ませば大地が撹拌される音、それに驚き視線を周囲へと向けても土煙の一つもなく何かが大地の下を這う音だけが響く異様な自体に陥り始め、次第に月光を浴びて揺れる白い花達ですら風もないのに不自然に揺れ始めてもいる。
不自然なほどに白い花達は今しばらくは月光欲を楽しむようであるが、徐々にだが月の魔力に満足した花は広げた花弁をねじり閉じて蕾の姿へと戻っていく。
戻っていったものは今度は土の中へと沈んでいく。
土の中で再び時が来るまで眠りに堕ちるのも白冥花の習性であろう、だがまだ半数以上の白い花が咲いており、誰かがこの地へ誘われるのをまっている。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にヒュルフェさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からヒュルフェさんが去りました。
■白冥花 > 白冥花達は次第に落ち着きを取り戻す。
その体内に豊潤な月の魔力を蓄えて、1本、また1本と花を閉じてつぼみと変え、地面へと沈み、眠りに落ちていくのであった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」から白冥花さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > メグメールの一角に形成された魔族の根拠地。
オーガやゴブリン等、亜人の魔族が中心となった拠点は、それなりの数を揃え、人間の捕虜――所謂繁殖用の雌――や、物資を蓄えていた。
もう少し放置していれば、王都にとってそれなりの危機に成り得ただろう。
だが、そうはならなかった。人間を蹂躙する筈の魔族達は、無数の火砲と魔術の雨霰に晒されながら逃げ惑うばかり。
「此の程度では碌なデータも取れぬな。まあ、兵達の犠牲が少ないのは良い事だが…」
此れでもかと言わんばかりに砲弾を撃ち続ける軍勢の奥深く。豪奢な天幕の中で推奨に写されている戦況を眺めながら、少年は一人詰まらなそうに欠伸を噛み殺す。
本来天幕に詰めている筈の将軍達は手柄を大砲に取られる前に前線へと駆け出した。血気盛んな事は良い事だが、もう少し思慮深い指揮官が欲しいな、と溜息を一つ。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > メグメールに魔族の根拠地有、という情報を受けて出動する王国軍に、これでもかとばかりに資金と物資を注ぎ込んだ。
結果、オークやゴブリンの群れに対して最新鋭の大砲。聖魔法を付与された武器。遠距離範囲魔法に特化した魔術師の集団という大層な軍団が仕上がってしまった。
結果は当然の如く完勝。というよりも最早戦いにすらなっていない。一方的な虐殺。敗走する魔族すら砲撃と魔法で消し飛んでいく様な凄惨な光景が戦場に広がっていた。
「…流石に余り暴れすぎるのは控えて欲しいものだが…。とはいえ、民衆に分かりやすい勝利、というものも偶には良いのかも知れぬか」
天幕からのんびりと外へ移動し、戦場が見渡せる丘へと足を進める。
昼間とはいえ、真冬の風が吹き抜ける草原は肌寒い。吐き出す吐息が白く変わるのを眺めつつ、勝利と言う美酒に酔った兵士達の蛮行を見下ろしていた。
「……捕えられた女性達が怯えぬ様にして欲しいものだが…」
溜息の数が、また一つ増えた。