2019/05/09 のログ
カーレル > 護衛たちの視線が此方に突き刺さる
が、しかし、大男に凄まれるのは慣れているし視線がいくら突き刺さった所で死ぬことはない
むしろ、大きな体をした男たちが小声でゴニョゴニョ話し合っている姿が滑稽に見えて、
そちらへ視線を向け返しては何やらニヤニヤしながら煙草を短くしていって

煙草を吸い終えても終わらぬ話し合いに、昼寝でもしようか、と思っていれば駕籠の中より
彼女が出てくる気配に立ち上がり、欠伸に滲んだ涙を拭った

「守られてる方がよっぽど肝が座ってら…見習ったほうが良いんじゃないかね」

くつくつと笑い声を零すとじろり、と呆然としていた護衛たちの視線が一斉に此方に向くから、
犬かなんかを落ち着かせるように、どうどう、なんて口にして
歩み寄ってくる彼女が手を差し出せば、如何にも演技ったらしく膝まづいて頭を垂れて見せ細い指先を取って

「この身に変えましても。急ぎます故、道中、駕籠のように快適にとは行かず難儀をお掛けしますが…
 ………まあ、なに。天気もよろしく風も心地よい日和です。頬に受ける風は駕籠の中より心地よいでしょう」

貴婦人にかしづく騎士なんかを気取り、取った手を持ったまま、にっこりと彼女に微笑みかける
すると、さて…と一呼吸置いてから、素早く彼女を姫抱きにしようと膝裏を掬い上げ

「頭巾を被って頬に風なんて笑っちまうよな…悪いが、急ぐは急ぐ
 大変だろうがまあ、これも仕事なんでね…」

抱き上げてしまえば素早く軽やかにその場を離れる
背後で護衛たちが何か叫んでいるような気もするが、足を止めること無く馬を止めた傍まで駆け、
彼女を下ろせば先に馬に乗り上がって

「流石に跨がらせるわけにゃいかん服装だな…白い脚を晒して街道、王都内を走るわけにゃいかん…」

計算外だった、と渋い表情を浮かべつつ、馬上から彼女に手を伸ばせば引っ張り上げて横乗りに促そうとし

春芳院 > (呆然とした面を晒す護衛とは対照的に、其れを治める様な口ぶりの彼。何処か可笑しく、声音に溢してしまう位笑みを深めたら。目の前に跪いては指先を取る姿は主君に忠誠を誓う騎士の如く。疑念は小さくなり、代わりに護衛等目に入らぬ位に気分が良くなった。)

「些か、駕籠の中でじっとしているのは飽きていた所やったから、嬉しいどす。実は、乗馬は初めてで……、一度乗って見たくて……。」

(垂れた頭が不意に上がる瞬間、端正な微笑が視界に入ってきたのだから尚更唇は饒舌に滑る。乗馬で感じる空気は頭巾越し乍も如何な物だろう、心躍り。彼に見とれているうちに、何時のまに浮く自分の身体。“え…っ!“と眸を丸くした時には、既に抱き上げられ所謂“御姫様抱っこ“成る体勢に変わっていた。眸をぱちくり、瞬かせ乍段々意識した頃には若干頬が紅に染まり。)

「あ……、あの……、すみまへん……!重いやろ……?
……あ、嗚呼。早う急がんとね。おたくはん、うちを無事に送り届ける迄気が気であらへんやろ……。急ぎましょうや。」

(戸惑いと嬉々、複雑な感情が入り交じり乍兎に角急がねば成らないと、彼の為すが侭に従う。自分達の保身しか考えぬ護衛達の叫びは、とうに耳には入れる気も無く。漸く足が地に着けば、伸びる手に素直に重ね。引っ張られて馬の背中に横向きに腰を下ろせば、駕籠とは異なるもぞもぞ動く馬の不安定さに身体が若干揺れて。落馬しないか不安気に顔を歪ませつつ。だからこそ、安定を求めようと自然に彼の背中にしがみつこうとするだろうか。彼に身を預け、旅立つは王都への帰路で。)

カーレル > 笑い声が聞こえれば少し安心する
これより先、王都までの馬上でずっと疑われっぱなしというのもなんだかやり難い
それが仕事だから、と言ってしまえばそれまでだが、せっかく女性を馬に乗せるのだ、
であればお互い気分良く王都まで駆け抜けたい

「俺のようなのが従者で申し訳ないがな
 乗馬、なんて上品には行かないだろうけど安全に行くよ」

彼女の声に駕籠の中にいたのとずいぶんと印象が変わってくる
ひょっとしたら、想像に過ぎないのだけど彼女も天気もよいのに狭い駕籠の中でうんざりしていたのかもしれない
そんな想像しながら抱き上げると、その身体は思いの外、軽く驚く彼女に首を横に振ってみせるのだ

「いや、羽毛でも抱き上げたのかと思ったよ
 …流石に羽毛は言い過ぎか。何、気にするな…俺のような市井の何でも屋が抱く事なんてないだろう御婦人を
 腕の中に留めておけるなんてのは約得みたいなもんだ」

何処と無く彼女の声が弾んだように聞こえたのはきっと気の所為だと思う
頭巾の奥でほんのりと色付いた頬に気がつくこと無く、急ぎで馬上に乗り上がり彼女を自分の高さに引っ張り上げる
不安げに揺れる瞳に、手綱を器用に片手で引いて、もう片方の手でしっかりと彼女の腰を抱く…約得、約得

「そりゃあまあね、急ぎでなけりゃ悪さをしてしまいそうだよ
 …さて、冗談はこれくらいで、しっかり掴まっててくれ。揺れるだろうし楽しんでる間はないだろうが、
 馬を信頼してくれ…案外、賢い生き物だからな。俺を信頼してもらうよりかは幾分、良いだろうさ」

冗談交じりに口にすれば、馬の脇腹を軽く足で叩き走り出す
巧みに馬を操りながら、なるべく揺れないように彼女を気遣いながら、一路、王都へ向けて馬は駆け出すのであった―――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原)小さな湖」から春芳院さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原)小さな湖」からカーレルさんが去りました。