2019/02/08 のログ
リリー > 「ほん、っとに壊さないでよ?
今の私はこれ直せないんだからね。」

口酸っぱくなってしまう。
実際の所はアーティファクトなので何をしても壊れることは無いのだが、
女がそれを思い出すのはもう少し後の事であった。

「え、いらないの? いらないならしないわよ。」

女は冒険者の仕事はあまりしたことがないので、こういう時どうすれば良いのか
実際よくわかっていない。
なので、首を傾げられるとそういうものなのかと納得してしまう。

「ふっふ~~~ん。 どうよ。」

少女がびっくりしていると、嬉しそうに胸を張る。

「…って、そんなこともできちゃうのね。」

女がマジックアイテムの補助を動けて漸く使える魔法に似た威力の技を少女は何もなしに使っている。

巨大な杭が花を串刺し、永遠に動けなくなる様に女はまた驚かされてしまった。

「良くやったわね。 強いじゃない、ラファル。」

女も片手でブイサインを返しながら、刺さったままのブレードを消去する。

「…は~~。 なんとか勝てたわね。」

ラファル > 「………えへ?」

 口酸っぱい言葉には、にこやかに笑ってみるけれどうん、とは言わない。
 むしろ言えなかったりする。アーティファクトは、ドラゴンの弄りで壊れないだろうか。
 アーティファクト知らないドラゴンはちょっと心配。

「いいよー。だって、同じ依頼を受けたんだし。
 報酬はギルドから出るし。」

 幼女は別にお礼が欲しいわけでもない、依頼を受けた時点でのズレだからこれはむしろギルドの方の不手際でもあろう。
 大ジョーブ大ジョープとぱたぱたと、てをよこにふる。


「すごい、おねーちゃんみたい!」

 自分の姉も魔法使いである。なのでこれはできるのであろう。
 だからこそ、少女は胸を張る相手に、パチパチと拍手を一つ。
 それから、ぴょい、と、植物から飛び降りて、とてて、と相手の方へ。

「ふっふー、ラファルは有能なのである、まる。」

 彼女の感心している声には、幼女も胸を張ってみせる。
 冬だというのに胸をベルトで隠しているだけの半裸とも言える姿であったりする。
 その肌は動いていたからか、ほんのりと桜色に色づいていた。

「これでも、ストライダーだかんね!
 リリーも後衛のクラスみたいだけど、一人ですごかったよ。」

 前衛のいない後衛職は、死亡率が高いとよく聞くが。
 一人で問題なく戦っていたこと、到着の際に見たので、それをすごいね、と言い返す。
 そして、息を吐いている彼女の近くに移動し、大丈夫?と見上げるのだ。

リリー > (…助けてもらってるからこれ以上は言わないけど、
今だけはこの娘の笑顔で微妙に不安を覚えるわね。)

できるだけ、顔には出さない様にしているが、
どうしても怪訝な顔色になってしまう。
眼はジトーっと少女を見つめている。

「そうだったわ。 これ、採取って聴いてたんだけど
完全に殺しちゃって大丈夫なのかしら。」

ギルドの不手際とはいえ、せっかくの報酬が減額や無くなったりすれば一大事。
女は今更のようにあたふたしている。

「あなたのお姉さんもこういうことできるの?
凄い姉妹なのね。」

拍手を貰うと気持ちが良い。
女は頬が緩んでいた。

「本当にそうね。 ありがとう。」

女は自分より背の低い少女に視線を合わせようと、腰を曲げた。
両手を膝の上に載せた状態でにっこりと笑みを見せる。

(…よくみると凄い恰好ね。 寒くないのかしら。)

じっくりと顔を突き合わせると、ラファルの服装が目につく。
今は冬だと言うのに、結構露出している。

(…可愛いから、見ている分には嬉しいけど。)

「ストライダーって、強いのね。
私は後衛って言うか、本当は錬金術師だから戦闘は苦手なのよ。
…ありがとね、ラファルちゃん。」

戦闘に関する知識の乏しい女はストライダーと言われてもピンとこず。
とにかく、凄腕なんだろうと言う認識。

心配そうに見上がられちゃうと、女は咄嗟に笑顔を作った。

(年下の子を心配させるわけにはいかないわ。)

ラファル > 「~~♪」

 ジト目に気がついたのか、少女は視線を話してぴぴぷーと口笛を吹き吹き。
 こう、誤魔化せてませんが本人ごまかしてるつもり。

「えっと、確か種だったよね。
 種なら花とか枯らしても大丈夫だよ。
 ほら、あそこに殻にくるまっているのが種だし。」

 新しい種は手に入らないけれど基本こう言う食肉植物は倒さないと被害が増えるし。
 それに、これが最後のというわけでもないし問題ないだろう。
 ひょい、と軽く跳躍して、殻の繋がっている蔓をスパンと切り落として、種が入った実をもって降りる。
 そして、背中のバックパックに入れるのだ。
 魔法のカバンだからか、でっかい実がすぽんと入ってしまう。
 これで大丈夫、と。

「おねーちゃんは、魔法を中心にお勉強してるから。
 でも、冒険者じゃないからねー。」

 一緒に冒険とかはしないよ、と幼女は笑う。
 すごい、と言われて鼻が高くなるのだ。

「えへへ。」

 素直に、優秀だと認めてもらえて少女は頬を染めて、てれてれ。
 ニッコリとした笑に嬉しそうに笑ってみせた。 
 視線を戻してみれば、自分の体を見てる彼女の視線に気がついて。
 にまー。と不敵に笑うが、笑うだけであった。

「ん、そりゃあ、ストライダーは盗賊系の上位クラスだもの。
 とは言っても、移動系や、隠密、隠蔽のスキルが中心だからアサシンとかに比べると戦闘力は下がるだろうけどねー。
 というか、錬金術師で苦手なのにあれだけやってるというの、ほんとすごいと思うよ?」

 ストライダーというのは、簡単に言えば隠密である。
 ぶっちゃけて言えば、戦士のように前に立って戦うのではないのだ。
 長距離の移動や、隠れたりしての情報収集とか、そっちの職業なのである。


「むりしちゃだめだよ?」

 幼女、じいいい、ととっさの作り笑いを見つめてから言葉を放つ。
 職業柄、そういうのには敏感な模様

リリー > 「ま、いいわ。
これが私の相棒よ。
多分壊れないと思うから触っていいわ。
私以外の魔力には反応しないからあまり面白くないかもしれないけど。」

子供らしい誤魔化しに気が抜けたのと、今更ながら壊れないことを思い出して。
右手に持っていた小さな魔法銃を少女の前に差し出す。
銃と言うよりは銃型のお守りのようなものであり、弾を詰めることすらできない。

「よく覚えてたわね。
ていうか、こっちの世界でもそういうバックパップちゃんとあるのね。
私もそのうち用意しないと。」

人の頭よりも大きい種を転がして帰るつもりであった女は
魔法のカバンの登場に喜んだ。
あとはこっちの世界ではどれくらいの価格で流通しているかだ。

「そうなの?
やっぱり冒険者じゃないのにこういう仕事を受けるのは無謀だったかしら。」

なんとなく、深窓のお嬢様的なイメージを膨らませて行く。

「えへへ。」

頬を赤くしている少女の無邪気な笑みに、顔の締まりがどんどん無くなる女。
自分が子供もイケル口だったんだと知って内心驚くも、目は身体を見てしまう。
少女の不敵な表情に気が付くと、ハッとした表情でようやく視線を逸らした。

「その割には随分と強かったじゃない。
もっと大きくなったらどれだけ強くなるのか楽しみね。
…私の場合は仕方なくよ。 手っ取り早くお金を稼ごうと思ったら多少は危ない仕事を
しないとね。 それに、困っている人を放ってはおけないでしょう?」

隠密クラスと言いつつ、前衛を張っていた手腕に女は恐れ入っていた。
そして、自分のことに触れられると女は照れくさそうになる。
止むをえず戦っているのであり、素直に喜ぶべきか微妙なのだ。

「一人で生きてるとそうも言ってられないのよ。
それにほら、私は大人だから。」

両手を腰に持ってきて、ことさら胸を張る女。
どうだと言わんばかり。

ラファル > 「わーい。
 ……ふんふん、くんくん。

 ――――魔法の増幅器にも見える。」

 差し出された魔法銃、矯めつ眇めつしながら匂いを嗅いだり、じいっと見つめたり。
 銃というものをよく知らないので、銃弾を込める所がないことを不審に思うこともなくて。
 ただ、魔力が流れるための装置という認識に収まるのだ。

「だって、ちゃんとお話は聞かないとダメでしょ?
 それに、聞かないで任務に失敗してしまったら、冒険者として失格だしさ。
 そう言う失敗してたら依頼を受けられなくなるでしょ?

 バックパックはあるよ?その辺の………魔法道具店でも売ってるし。
 いいのが欲しいなら、魔法使いの人にお願いしたらいいんじゃないかな。

 ……こっちの世界?」

 カバンに関しては普通の店にあると言おうと思ったけれど、そう言うという言葉に少しだけ修正。
 むしろ、こっちの世界という言葉に興味を惹かれたのだ。
 何か不思議なことを言ってる、と。

「てか、冒険者ギルドは加入している冒険者以外には依頼をまわさないものだけど……。」

 無謀とかそれ以前に、そもそも受けられるはずがないもの。
 登録してないの?でないと報酬もないよ、と。

「ほら、ボクゆーのーだから?
 女の子には、いろいろ秘密が多いんだよ?

 うーん、錬金術師、ならお薬とか売って稼ぐとかの方が安全だと思うんだけどな。」

 強いのはまあ、幼女は人間ではないから、なのである。
 まあ、それを言うのもなんか憚られるので、ゴニョゴニョごまかしてみた。
 お金を稼ぐ必要性は理解できるが。
 それなら、こういうことじゃなくて、錬金術師らしい方法のほうがいいのではないだろうか、と思ったのでそれを言う。

「え、大人だからこそ、出来ること、できないことを見極めて無理をしないんじゃないの?」

 自分の師匠の教えは、無理はするものじゃない。
 無理をしたら破綻が来るから、そうならないように準備をして、状況を整えるものなのだと。

リリー > 「匂いとか嗅ぐの?
その発想はなかったかな~。
…当たり。付け加えると、身体能力もあがるのよ。
だから私でもさっきの化物の攻撃を避けたりできたわけ。」

子供が玩具を弄って終わりかと思っていたが、
思ったよりもしっかり調べられた。
増幅器であることをピタリと言い当てられると、背中に冷たい物が触れたような感触を覚える。
別に隠すこともないので、彼女の目利きのよさを褒める。
魔法を解除すると、銃はいずこかに消えてしまう。
戦闘が終わった時にいつもやることだ。

「そんなに問い詰めないでよ。
こういう依頼あまりやったことないんだから。」

年下に怒られてしまい、眉がへの字になってしまう。

「へえ~、それじゃ早速これの報酬で買おうかしら。
材料と道具さえあれば自分で作れるんだけどね。
…あ、私事故で別の世界から来てるから。」

バックパックのが一般的に流通しているを知って喜んだり、
そもそも簡単な錬金術さえできない現状を悲しんだり。
女の表情は目まぐるしく変わる。
そして、少女に食いつかれた内容についてはこれも隠すこともないと
さらりと答えてしまった。

「あ、ちゃんと登録は終わっているのよ?
そういう意味じゃなくて、戦闘タイプってわけでもないのに一人で来たのは不味かったかなと思って。
ラファルのおかげで今日はなんとかなったけどね。」

汗ばんだ髪を掻き揚げ、微笑んで見せる。

「有能ね~~。 こっちの住人は皆こうなのかしら。」

こっちの世界の冒険者が戦う姿をまともに見たことが無かった女には、
少女の抱えている秘密の内容まで想像が及ばなかった。
単純に皆身体能力が高いのだろうかと思っている。

「私もそうしたいんだけどね、元手がないから錬金釜も材料も用意できないのよ~~~。
…まあ、そういう考えもあるわね。 でも、それは私とはちょっと見解が違うわ。」

錬金術で生計を立てる、無理はしない。
どちらも尤もなことである。 しかし、どちらも今の女には選ぶことが出来ない状況で。

ラファル > 「あ。

 ……えへ、ほら、匂いとか、気になるし、ホントは、ちょっとガジガジしてみたいけど我慢したし!

 なるほど、魔力を流して、その魔力で身体強化、というところ?」

 ドラゴンとしての習性で、思わず匂いを嗅いでしまったのだ。
 竜眼は魔力の流れを見ることが出来るのと、そういう鑑定のちからも持っているからである。
 消えていく魔法の道具に、消えていくなぁ、と眺めるのだ。

「じー。」

 問い詰めてはなくて説明してたのですが。なんか問い詰められたように思えたらしい。
 どう言えばいいんだろ、と彼女を眺めながら考える。

「それでいいと思うよ。でも、魔法の道具は高いし。
 自分で作れるなら作ったほうがいいと思うよ。

 別の世界……?神の世界……?」

 別世界となると一番最初に出てくるのは神のいる天上界。
 じゃあ、彼女は神様なのだろうか。
 でも、神様にしてはすごく……残念すぎる気がする。
 神様はこうもっとゴッドしていて、下界のことは鼻歌交じりでふふーんしてそうにも見えるがそうは見えないし。
 そうなると、どういうことだっってばよ?疑問符が空を舞う。

「うん、戦闘タイプじゃないなら、なおさら戦闘タイプの人とチーム組むべき。
 今日はボク間に合ったけど、次間に合うとは限らないよ?」

 微笑んだ相手に、まずはちーむつくるなりしてからくるべきだとおもう、としっかり言い切って。

「見解が違う?どんな考えなの?」

 元手がないとかそういうのは仕方がないし、そこに突っ込むべきではないと思ったのでスルーした。
 今回の報酬なら二人なので、分ければそれなりの額になるので、元手になるだろう。
 終わっている問題は大丈夫なのであるが。
 それよりも、自分の師匠の言葉とは違う見解があるらしい。
 その見解に興味がわいたので、教えて教えて、と目を輝かせる。

リリー > 「そこは思いとどまってくれたのね。
歯型とかは流石に困るから良かったわ。

そうそう、そういう感じ。
その年でなんでも知っているのね。凄いわ。」

女は今話している少女が実は人間でないなどと、想像すらしていない。
なので、女の中では天才少女のような扱いになりつつある。

「そうね。あんまり高価なら自分で用意するかもね。

別の世界って言ってもラファルの想像するような世界じゃなくて、普通の世界よ。
ここよりは平和で、私はそこで錬金術で暮らしていたわけ。」

頭の上にハテナマークが浮かんでいそうな少女に、自分の境遇を
簡単に説明する。

(おかしいわね。 こっちの世界では私のような異邦人も結構居ると思っていたのだけど。)

女も突然神の世界と言われてしまい、どうしたものかと首を傾げてしまう。

「そうね~。 今日みたいなこともあるし、今後は誰かと組んで受けるか
戦闘が絡みそうにない仕事をこなすことにするわ。」

ラファルの指摘はもっともなので、女はうんうんと頷いていた。

(そうは言っても、元の世界への手がかりは自分で探さないといけないでしょうし。
どうしたものかしら…。)

「立派な考えがあるわけではないわよ。
ただ、必要に迫られたら多少の無茶はしないといけないって私が勝手に思ってるだけ。
そうね、ラファルに危険が迫っているのを目にしたら私は一人でも助けに行くわよ。
だってこんな可愛い子に危ない目にあって欲しくないもの。」

期待に満ちた目で見つめられてしまうと、女はくすぐったい気持ちになる。
相手の瞳を見つめたまま、日頃から思っている信条めいたことを口にした。

「ラファルも自分のお姉さんが危ない目に遭ってたら、無理をしてでも助けに行こうと思うでしょ?」

ラファル > 「まーね!ボク、いい子だから!

 なんでも、ってわけじゃないけれど……?」

 なんでも知ってるというよりも、竜眼で見たまま、感じたままをそのまま言っているだけである。
 が、天才というふうに取られてしまった。
 たしかに、天性の才能という意味では、竜眼もそうなので、天才なのかもしれないけれど、ちょっと違う気もしたのだ。

「うーん……今回の依頼の報酬なら、多分買えると思うけれど。
 でも、ボクの大きさと同じのは難しい、かな?」

 生活もあるだろうし、それを考えれば全額は使えないだろう。
 自分の大きさは全額つぎ込んで帰るだろうというレベルなのである、結構大きいやつだから。

「普通の世界……。ここよりも平和なの?すごいな。」

 普通という言葉の難しさ。
 普通と言われて想像できるのが、この世界なのである。
 異世界であれば常識も違うので、ここよりも平和だという時点ですごい、になるのだった。

「うん、リリーのこと気に入ったし、呼んでくれれば、ボクも一緒に行くよ!
 師匠も一緒でいいなら連れてくるし。」

 誰かと組んで動くとき、声をかけてくれれば出てくるから、と少女は笑ってみせた。

「うん、確かに、必要な時とか不意な時の無茶は仕方がないね。
 でも、そういうことにならないようにしとけ、って、師匠なら言うんだ。
 危険にならないように、危なくないように、準備は必要だって。

 あと、多分、どう考えてもボクが危なくなる時は、りりーはもう絶対絶命の時だと思うよ?」

 危険な目というモノの思考に関して。
 戦闘能力だけではなく、種族的なものもある。
 ドラゴンであるラファルが危険な時は、人間のリリーは死んでいてもおかしくない気がする。

「ううん?
 だって、それは、おねーちゃんが身の程を弁えなかった結果だもの。
 弱い者は、死ぬよ、それだけだし。
 ボクは助けられるなら助けるけれど。無理なら無理しないよ。」

 野生の人竜は、姉が危険であろうとも、出来るならする。
 無理ならしない、その思考がサラっと出てくるのであった。
 それも、素敵な笑顔でニコニコ笑いながらである。

リリー > 「そうね、良い子だから色々教えてくれてるものね。
ふふ、なんでもは言い過ぎたかしら。」

この世界の知識がまだまだ不足しているだろうことは自覚している為、
ラファルのリアクションから己が何か誤解や勘違いを含んでいるのだろうと思う女。
それでも、女にとっては良い子である。
そして、良い子の頭は撫でたくなるものであった。
嫌がるようならすぐに手をひっこめるが、そうでないのなら頭を撫でる位はしてしまう。

「それそんなに高いの?
なら材料だけ買って自分で作った方が話が早そうね。」

依頼書に記載されていた金額では当分は仕事をせずに暮らせるほどのゴルドは貰えるはずなのだが。
何事も上手くは行かないのねと、女は独り言ちた。

「そう、とにかくここと違って平和なのは間違いないわ。
魔族もちゃんと居るんだけど、ここみたいにおおっぴらに戦争なんてしてないもの。」

もう少し、元の世界の事を話してもいいのだがなんとなく止めてしまった。
あまり話しだすといよいよホームシックにかかりそうだと自覚しているからである。

「ありがとう。 そう言ってくれると嬉しいわ。
御師匠さんもいるのね。 ラファルの技はそのお師匠さんから習ったの?」

面と向かって気に入ったと言われたら少し照れてしまう。
頬が赤くなり、口の端が伸びていた。

そして、新たな人物のことを聴いて興味が湧く。
彼女には姉だけでなく師匠もいるらしい。
はたしてどんな人なのだろうか。

「それはそうなんだけど、私はそこまで準備良くできないから。

…随分とはっきり言うわね。 それでも助けに行くわよ。」

戦闘能力の違いは花対峙で十分理解している。
それでも、口に出されてしまうとひっこめない女。
生来の負けず嫌いも顔をだし、張り合ってしまう。

「そこが考え方の違いって所ね。
どっちが正しいかは私ではわからないわ。
だからラファルはラファルが思うようにやればいい。」

こっちの世界も人によって考え方は違うだろう。
そう理解している女は意見の相違を埋める気は無くて。

ただ、見せられた笑みが多少不気味に見えたような気がする。

「…ところで、そろそろ街に戻らない?
折角種を手に入れたんだし、換金して色々揃えないといけないもの。」

ラファル > 「あ。 えへへ。」

 伸びてくる手が、自分の頭を撫でてくれるのだ、幼女は嬉しそうにその手に頭を擦り付ける。
 撫で撫でしてくれるのは大好きだ、落ち着くし嬉しいし。
 だから、嫌がるということなどはなく、彼女の気が済むまで頭を突き出して。
 むしろグリグリと頭を擦り付ける始末。

「魔法の道具は普通は高いよ。
 自分で出来るなら、自分でしたほうがいいと思う。」

 基本的に魔法の道具は、高いものである。
 冒険者でもあまり魔法の道具を持っていないのは絶対数が少ないからこその値段の高騰なのである。
 自分で作れるなら、普通の素材を買って作ったほうがいいのだ、と。
 まほうとはそれだけの、奇跡なのである。

「魔族がちゃんといるって、ものすごい表現だと思うよ?」

 おおっぴらに戦争という言葉、うん、彼女の世界という場所は戦争がないらしい。
 羨ましい限りである、平和なら空飛び放題だなーとか。

「んー。
 うん、師匠からはいろいろ教わってるよ!常識とか!
 あ、りりー可愛い。」

 はい、げろりました。
 幼女は一般常識を持っていないことを吐きました。
 まあ、実際の話ドラゴンで、人間の常識なんて持ってませんから。
 そして、赤くなった彼女に、ニコーっと、笑いながら言ってみる。

「んふ。
 じゃあ、待ってる。」

 助けてくれるという言葉に、幼女はにこー、と笑いながらいうのだ。
 戦闘だけがピンチの元でもないんだし。
 助けてくれるなら、助けてもらえるのがいいと。

「んい。
 じゃあ、帰ろう!」

 正しいかどうかの論争は不毛になる。
 だからあえて幼女はそれに返答をせず、帰ろうという言葉に、おー!と腕を上げて賛同するのだ。
 ちゃんと付いてきてね、と先をぽてぽて歩き始める。
 ちゃんと、彼女がついてこれる速度で、だ。

リリー > 「ふふふ……。」

突き出された頭をヨシヨシと撫で続ける。
女の子とじゃれていると言うよりは、子猫か何かと遊んでいるような感覚であった。

(私より強いんだけど、こういう時は凄く可愛いわね。
う~ん、この依頼受けて良かったかも。)

「やっぱりそうなるのね。
となると、私が作って売ればあっと言う間にお金を稼げちゃうってわけだ。
あとは材料の確保よね。 大量生産するとなると大量の材料が必要になるし。」

ようやく生計を立てるめどがついてきた。
これで錬金術師らしい生活ができるようになる。

こっちに来てずっと貧乏暮らしを続けてきた女は飛び上がって喜んでいる。

「常識は、まだ教わっている最中なのよね?」

果たして、全行程でどれくらいなのだろうか。
女はそこが気になってしまう。
あまり突っ込むと藪蛇になりそうな気もするので深く掘り下げたりはしないが。

「…もう、からかわないでよね。」

可愛いと言われてしまうと女はより熱っぽくなってしまう。
(…どうしよう。 子供相手なのに普通にドキドキしちゃっている。)

「任せて。 こう見えて私、それなりに出来る女なのよ。
とりあえず、街に行きましょう。」

待ってると言われると、満足そうに笑みを浮かべている。
後は頼りがいのある少女と一緒に街へ、そしてギルドへ向かったことだろう。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からリリーさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からラファルさんが去りました。