2018/09/09 のログ
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(イベント開催中)」にバルベリトさんが現れました。
バルベリト > 「いやもう、なんつぅか。
こんな装備で沼に足入れたら沈むしかねぇなこれ。」

どこから見ても騎士団長というより、耐久力試験。
否、物理的な意味での破壊力を確かめる為の装備ともいえる。
フルプレートは肉厚の鋼で造られ、鎧の内側に衝撃移しの護符を多数貼り付けている。
それこそ魔王の奮う大魔法であろうと、一撃だけなら耐え凌げるだろう。
カイトシールドは前身をすっぽりと覆い隠せるほどの巨大な盾。これには防御力を高める為の護符と、衝撃を吸収し均等に散らせる魔法が掛けられている。

頭部を覆うフルフェイスヘルムには意識の保護と共に、受け止めた衝撃やダメージ。戦闘記録を直接王城の研究部署に届ける機能がついている。
意識の保護はいうまでも無く、気絶や昏倒防止の意味合いが強い。
こんな重装備のデカブツ、連れて離脱する事事態難しいだろう。

「いくら筋力強化しててもこいつぁきついな。」

片手でグレートソードを持ち、片手でカイトシールド。
どちらも両手で扱うのが妥当な超大型の武具である。
常時筋力強化を発動させているが、自分の魔力の貯蔵量は並みの魔術師程度。
もって数分のデータ収集だろう。

『隊長、9時の方向から大型1機。今誘導しています。間も無く目視できるかと。』

バルベリト > 数日の間、先ずデータを集めたのは相手の検知方式。その範囲。
熱検知、振動検知、音声検知などなど。
数キロ先から敵意を向けただけで反応のある機体もあれば。
火をつけた炭を矢に括りつけ、座標を決めて射出した際に光線で機械的に打ち落とすタイプもいる。

―――大体だが最大危険距離と、感知形式等を纏めて王都や近くの部隊、ギルドには逐一流す。
もっとも、種類の多さの前にはどの程度の役に立つかは定かではない。
得た情報を活用するのは彼らや研究者の役割だ。
……その後は特定の固体にマーキング。動体感知形式の1匹を誘導し、自分の前に連れてくる事にした。

耐久力と攻撃力。どのラインまでなら戦えるかの実戦形式のテスト。
つまるところ、体のいいモルモット役である。


―――ズシーン―――ズシーン……。
遠くから聞こえる地響き。なぎ倒される樹木の音。
振動は重装備の自分の体でさえ揺れ動く。そうして――一目散に森の奥から飛び出てきたミレー族。
今回の調査隊の1人だが、彼が素早く平原地帯へ駆け抜けて行った。

『では隊長後はよろしく。』
「お前ぜってぇ良い性格してるよな…」

さぁ、ご対面だ。自分よりも高い全長。
太い金属の腕。前身が仄かに発光し、それにより自分の姿が闇夜に浮かび上がる。
眩しさはフルフェイスヘルムの機能の一つで緩和されている事もあり問題が無い。
寧ろ相手の位置が判る為に、自分の助けともいえる。

バルベリト > 動体感知形式に狙いを定めたのは、ターゲットの切り替えが判り易い、そして扱い易い基準だったからだ。
ミレー族が動く事に反応して追跡してきているが、それ以上の大きな動きと敵意を向ければ、ほぼ無条件で自分に目標が切り替わる。
それはここ数日のテストで明らかにはなっていた。

カイトシールドを地面と垂直に構える。全身は盾の後ろ側。
彼らの武器である槍の一撃を盾で受け止められるかどうか。
盾で受け止められず、鎧でも受け止め切れなければ無様な串刺しになるが。
――盾には考えうる限りの防御呪、符。そして槍からの衝撃を均等に盾全体に分散させる術式が刻み込まれている。

「オオオォォォォ!!!」

野生の獣の様な咆哮。音声や物音で感知してくるタイプは事前に遠ざけてある。
このテストの間は、他の固体が間に合う事は無いだろう。
声を振り絞るのは――やはりというか、槍の穂先。鋭く、鋭利なそれ。
それに真正面から向かうというのは、恐怖に心を縛られ。足が竦まないようにする為の本能的な行動でもある。

金属同士が衝突し、耳障りな金属の擦れ合う音。
パァン、という発砲音の様な音と共にカイトシールドの防御呪が吹き飛び、均等に衝撃が広がった結果肉厚の鋼で出来ている盾の全体に細かな皹が走る。
貫通こそしなかったが、2発目を受けることは不可能だろう。

―――静寂が一瞬。いや、数秒。槍を奮ったアンゲロスが一撃で仕留められなかった事から、行動の形式を変えるための時間と。
自分はカイトシールドを地面に突き刺し。その陰で脚力に筋力強化を集中させる自分の次の行動の準備時間――。

バルベリト > 先に動いたのは己だった。
強化した脚力で、重装備ではあるが高く跳躍する。高さ5メートルを超えるアンゲロスの頭上に、大上段に振り上げた大剣を手にして落下を始めている。
強化された脚力により、跳躍の速度も又強化されていた。

それが今大きな差となって結果として現れている。
2手目に選んだのはアンゲロスの行動は、光線により最速で傷付き、防御力が著しく低下した盾諸共打ち抜こうとする行動。
光線は高度な魔力密度で練られ、データを目にした記録班は目を剥くかもしれないが。
防御呪が殆ど消し飛んでいたカイトシールドは容易く貫通され――その後ろ。ほんの僅かな時間の前まで自らが居た場所を穿ちぬいている。

高さの関係でそれは地面深くにまで到達する破壊力の高さを見せるも、標的はそこに居ない。
丁度そのタイミングで自らが落下を始めている――。

「ヴァル―――!」

背中の肉が盛り上がる。脚力の強化を解除して背中。肩、腕、胸、首の筋力強化に残る魔力を注いだ。
フルプレートを内側から膨脹させるような勢いで肥大化する筋肉。
大上段から半月を描く用に振り下ろされる大剣には、体重に装備重量。さらに遠心力と筋力が加算され――回避行動を取らない、鈍い動きのアンゲロスは防御行動に移る。

瞬く間にこの固体の周囲に生み出されるバリア。並の魔法では弾かれる脅威の防御力も。
自分の大剣の特性。結界殺しとも言える特性の前には意味をなさない。
剣が触れるだけでバリアが霧散していく。むき出しになる十字架の中の魔術鉱石。
そこと胸の中心にある魔術鉱石を線で結び。
その線を性格になぞるようにして剣は金属を食い破り、重量のまま、勢いのまま。破壊力を維持したまま金属を破断しつつ――。

「スレイヤァァァァ!」

2つの弱点を叩き切り。地面に突き立つ大剣。
響く地響きは先ほどのアンゲロスの移動による振動より遥かに大きく、遠方まで伝わるだろうか。
地面にクレーターとまではいかないが、衝撃により表土を吹飛ばし。
さらに岩盤にまで剣が突き刺さる、破壊力だけを追求した一撃。

真っ二つに裂かれたアンゲロスがゆっくりと。
左右の木々をなぎ倒しながら地面へと横たわるまで時間は必要なかった。
切れ目は綺麗とは言えないが――。

『プー。隊長ダサい。』
「お前後で茶を奢れよ。」

バルベリト > 一先ずデータ。耐久力、行動パターン、攻撃力、思考速度の切り替え。
これらは無事に届けられているはずだ。
後は自壊が始まる前に表面素材を少しでも採取する事が目的だが――。

いかんせん、破壊力が強すぎたのか。
鉱石が破壊された時点で自壊が始まっているのか。
金属を切り取る為のナイフを取り出したときには、この固体は既に腐食、或いは崩壊、または分解が進んでいる。
残る表面の金属は僅かにあるが――強酸に焼かれた様な酷い状態だ。
表面金属には殆ど価値はないかもしれないが。

「ギミックがわかんねぇなぁ。トリガーはなんとなくわかるんだが。」

自壊させず素材を手に入れるには、最低限相手の魔力の流れを阻害させず、自分の魔力を流さず、鉱石に傷をつけない。
どれかの条件を満たすとその瞬間に本体から分離された部分が自壊していく。
人間で言うところの血液のような物が金属の裏側、内部にでも流れていて、それがとある条件で暴走でもしているのだろうか?

「あー、こちらバルベリト。取り敢えず1匹処理。ほっとんど素材としては意味がねーけど、検体かつ素材として此処においとく。
研究班の指示を聞いてくれ、これ持ち帰るとなると相当面倒だぜ?」

バルベリト > 結論として、真正面から相対するには効率が悪すぎる。
特定の感知パターンを取る固体だけを誘導して各個撃破が望ましいだろう。
バリアの類には自分の大剣が特攻性能を持っている物の、金属を叩き割るような破壊力を捻出するのはそれなりに面倒だ。

よって遠距離から出力を収束させた魔法で露出している鉱石を打ち抜くか。
物理的な破壊力を準備出来るならそれで一撃必殺が望ましい。
戦う相性としては決して悪くは無いのだが、数が多くなればその分継続した戦闘の消耗が激しくなる。

フルフェイスヘルムを取り外し、フルプレートもパーツ毎に分解して荷馬車に運ばせる。
前身汗でびっしょりである。魔力を使った事や、筋力を強化したことによるもの以前に。
矢張りというか、槍の穂先に真っ直ぐ向った際の精神的な疲労が厳しい。

軽装になった己はその場でごろんと横に――。少し戦闘の熱を覚まし、恐怖が今頃になって心を蝕む事からの逃避を図る。
休息を取る傍らで、数人の騎士達が残骸を馬車に積み上げていく。
殆ど自壊した後では意味も無いだろうが、まぁ研究班が必要かどうかを判断すればいい。

「このレベルが雑兵で無尽蔵に湧いて来るのは問題なんだが。
神の使いって仰々しい噂の割に、シェンヤンの術である程度制御される様なもんなんかなぁ。」

バルベリト > 「小隊編成。一応山菜や野草、薬草を採る民間人には警告と警備を忘れないようにな。
4人編成で目、耳は1ずつ。索敵は確実性重視で。自分達に向かって行動をはじめた個体があるなら、すぐに退避開始すること。」

指示だけは端的に。疲れが自分の身体を周り、意識を少しずつ。思考力を削ぎながら眠りへと誘ってくる。
最低限の指示と、伝達事項。これらを伝えたうえで、自分の造った岩盤の上にて横になる。
自分の周囲からは気配と足音が遠ざかり――やがて自分は一眠りする事になる。


余談ではあるが、翌朝。筋力強化のツケで、全身筋肉痛にうなされる師団長の姿があったとか。

ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(イベント開催中)」からバルベリトさんが去りました。