2018/08/16 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」に山吹さんが現れました。
■山吹 > 自然の溢れる街道筋。
ある程度人の手が入ったその場所から離れれば、野盗や害獣、魔獣の住処となる。
……とはいえ、どの場所でも凶悪な獣が目を血走らせている、というわけでもなく。
さらさらときれいな水の流れる川沿いは、どちらかといえば静かな物。
街道からもそこまで離れているわけでもない、……近道をしようとした旅人が通ることもそこそこある場所。
透明度の高い川の水に、強い日差しを受けてさらさらと揺れる木の葉の影と、魚の影がゆらゆらりと揺れる。
そんな静かな川辺に、魔獣の気配。
ずしり、ずしりと地面を踏みしめながら、血を思わせる……には、ちょいと薄い赤茶色の獰猛な毛並み。
鋭い牙や爪を隠し持つ妖気の塊がその姿を草むらから………
■山吹 > だいたい体長は40cmほど。
抱えられるサイズの米俵にちょこんと手足のついた魔獣が、尻尾をゆらゆらと揺らしながら川沿いを歩く。
ぽかぽか陽気で毛並みもほこほこ。
のんきを具現化したような顔立ちの魔獣は、その場でんーーっと伸びをした。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にスーファンさんが現れました。
■スーファン > 足回りが一通り固まり、少しばかりの余裕も生まれた。
宿で健やかに目覚めたとある日。不意に、それならば久方ぶりに釣りでもしに野へ赴こうと思った。
釣りは好きだ。釣果に関わらず水面に糸を垂れ、長閑な時間を堪能出来る。
幸いにして特別誂えの旗袍は寒暑を防いでくれるのもあり、私は夏晴れを気持ちよく謳歌していた。
川辺にて奇妙な動物を目撃するまでは。
「……………」
川幅広く水は澄み、所々に座るに適した岩も在る。
凡そ釣りには最適だろう場にて居座る謎の珍獣は、猫に似ているようにも見える。
「………面妖な……」
樽に茶トラの毛皮を貼り付けたような姿。面妖と云わずしてなんとする。
如何な精魅の類であろうかと、草むらより様子を覗うのだが、
これが中々どうしてただの動物にしか見えない。
もしやこの国では一般的な動物なのだろうか。そうとも思った。
「……………」
動物か、魔物か。判断をつけるべく草むらより竿が振った。
長い糸の先にはパン屑がつけられ、珍妙な生物の側に落ちるだろう。
■山吹 > 川を覗き込んで、少しだけその魔獣は頭を垂れる。
半人半獣の彼にとって、人としてのあこがれは「男らしい姿」であり、妖怪としてのあこがれは「身体の大きい威厳のある姿」なのだ。
「……もうちょっとこう、身体が大きくなればいいんだけど。」
ぼそりと言葉を漏らす。
本音。まごうこと無き本音。これが聞こえれば知性ある魔獣であることはよく分かるだろう。
「……ん?」
てくてくと川沿いを歩けば、目の前にパンくずが落ちているのが分かる。
それが普通の動物でないことはすぐに理解できよう。
何故なら、野生動物ではあまり見られない、「対象はともかく、まずは周囲を見回す」という動作が入ったからだ。
……そのあと、ちんまりとした前足でちょいちょいつついて、くんくんと匂いを嗅ぐ姿は動物でしかないが。
■スーファン > 「………佳い。」
佳い。何がと問われたら先ずあの足の運びだろう。
あれならば歩くよりも転がる方が明らかに早いだろうに、
地を這うような、ぬめるような足運びを見せている。
パン屑をつつき、匂いを嗅ぐ様などはどうみても珍種の猫か何かのようだ。
「……ン。だが、しかし……ふむ。」
周囲をくるりと首(首があるのかは判らないが)を回して見せることなどには眉を顰めもするものだ。
智恵を見せるならばそれは、何某かを経た事の証明だ。
「………さて。」
私は竿を引いた。引かれるままにパン屑を伴った糸は竿に巻き付き、次いで草むらより姿を現す。
目の前の動物にまこと智恵があるならば、私が釣りを仕掛け、試したのだと察せれるかもしれない。
■山吹 > 目の前のパンくずが、まるで生きているように空を舞い、何かがキラリと光る。
…………はっ
がさりと草むらから人が現れるのであれば、まずは驚く。
しまった見られた。というかあの光ったのは釣り糸か。
しばらくはそのとぼけた顔のまま、硬直する。
そしてまずはその小さな手で顔を洗い始める。てしてし。まずは落ち着け俺。
……その上で、ちら、と見上げる。
動物だと思っているならこのままトボけてやり過ごせばいいかな? なんて甘い考え。
本当の野生動物ならダッシュで逃げている状況なのだけれど、そこは気がつかない。頭が回らない。
■スーファン > 「……………」
暫しの硬直の後、謎の動物と目が合った。
身の丈は明らかに此方が上であるにも関わらず、不意の遭遇に対する態度がそれである。
逃げずに平静を装うのは、知恵だ。つまりこれは魔物・妖物・精魅の類であり、
これを打ち滅ぼすのは道士である私の使命だ。
しかし──
「……ン。すまない、少し、試した」
緩い。
緩いのだ。この面前に居る珍妙な丸いものは。
顔もそうだが態度が緩い。まこと邪なるものならば、人を見れば襲うものだろう。
容貌で人を騙すならば、このような場所でそういった姿である必要もないだろう。
「君のようなものは、初めて視るゆえ」
などなど、様々な理論武装を張り巡らすのだが、結局は見目の可愛らしさに負けたのかもしれない。
人語などは判るだろうか?と、瞳を和ませ、しゃがみ込んで訊ねてみた。
■山吹 > ……………ぅ。
ガッチリバレていた。バレていたなら仕方がない。
「………別にパンくずに惹かれたわけじゃない。
不思議なものがあるなと思っただけだ。
人の子よ、このような場所にいれば食われてしまうぞ。」
声をできるだけ低くしようとするが、まあそれでも子供の声であることは隠しきれず。
すっく、と二足で立ち上がって、尻尾を地面に接地させてバランスを取ることにする。…ので、ちょっと不満げに、ぺーん、と地面に尻尾を叩きつけた。
その上で、尊大な口調で魔獣であることを分からせようとしてみる。
立ち上がっても、しゃがみこんだ相手と目線が合ってしまうのが悔しいところだが。
■スーファン > どうしよう。二本足で立ち上がられてしまった。
短い足で懸命に立っている。しかも自立に不安があるのか尾を添えている。
控えめに言って愛らしい。都に持ち帰れば愛玩用として高く売れそうな気さえした。
「……ン。問題無い。そういったものを誅するのが私ゆえ。
君は……其方はどうか?人を喰うのなら、焼いてしまわねばならないが」
抑揚を整えた尊大な口調は、無理をする子供のようだ。
つい、笑み崩れてしまいそうになるのを堪え、
私は竿でふかふかに見える腹をつついてみようと手を揺らす。
■山吹 > ……そ、そうなんですか。と一瞬心の中で敬語になる。
よくよく考えればこんなところに一人で来る女性が、そういう備えが無いはずもない。
正直そういう戦いになったらこっちに勝ち目はない。
「……人は食わぬから安心するがよい。
ここには魚でも取りに来ただけだ。」
竿でお腹をつつけば、ふかぁ、っと竿の先端が中に入り込んで。
くすぐったかったのか、もぞりと身を捩ってすたんと四本足で着地する。
「………くすぐったい。」
本音が漏れた。手でお腹の毛並みを整えようとするが、あまり手は届いていない。
「………と、とりあえず。えーと。
……私は山吹という。この森……には住んでいないけど、まあ、よくこの森にいる獣だ。」
■スーファン > 竿は緩やかに毛並みに埋没した。
さわり心地の良さそうな感触に知れず口端が緩みそうになるのを抑える。
「……佳い──いや、すまない、つい。」
くすぐる意図は無かったから、謝辞を送りゆっくりと立ち上がる。
手は互いの袖口に入れて恰も悠然とした道士らしく、
瞳は細めて感情を絞り、口元には緩く笑みを湛える。
どうみても、腹に手が届いていない様子などは直視に耐えかね、
不自然に顔を逸らした格好にもなった。
「……ン。ヤマブキ。私はスーファンと云う。シェンヤンの道士だ。
そして、君の名は言い辛い。この国の魔物か?字ではなんとする」
一瞥するような状態で互いに名を名乗るも、目の前の毛玉は姿も妙なら名前も妙である。
どうも、マグメールの音とは違う気がしたもので、
ついついと近寄り、手頃な枝など取って彼(?)の側にしゃがみ込もう。
流石に逃げられてしまうだろうか。
■山吹 > ……くそう、いつか格好いい姿になって憧憬の視線で見られたいものだ。
別に嘲られている感じもしないが、どちらかと言えば幼子に向けるような視線であることは何となく分かる。
「………道士。実際に見るのは初めてだな。不思議な術なり使えるのか。
スーファンと言ったか。私の名前は…………」
枝を持ってきたが、ちょっとよく見ろとばかりに腕を伸ばす。
枝を掴んだら抱えるしかできぬ。
したん、と四本足で着地したまま、前足で器用に漢字を描いていくとしよう。
傍にしゃがみこんだ相手に見えやすいようにしながら、「山吹」と描く。
簡単な文字でよかった、などと思いつつ。
道士の横顔を見て、思ったより近いのか、こちらもぷい、とそっぽを向く。
中身は少年(のようなもの)だ。
■スーファン > 「道士と言っても修行中の身の上だ。火と水の精に恵まれたゆえ、そういったものを使う」
少しの謙遜を添えた所、毛玉より前足が存外に伸びて地面に文字を描いて行く。
ちらりと見える肉球に触れてみたいと思ったが、克己して耐えた。
「……ン。成程、『山吹』。シャンチュイか。佳い名前に思う」
シャンチュイ。姿にあった可愛らしい響きに満足に頷こう
「それでシャオシャンは魚を取りにと言ったが、どうやって採るつもりだったのだ?
その……見た所、難しそうに見えるのだが」
短い手足に長い尾。よもや尾を水辺に垂れて釣るのだろうか。
つい、と手がシャンチュイの背を撫でて、口から愛称のような呼称が転び出る。
シャオシャン──字にすると小山。可愛らしさに溢れている。
■山吹 > 「そちらでの呼び名か? しゃんちゅい? しゃおしゃん?
……まあ、呼びやすいならそれでもよいが。
スーファンとやら……
修行中とはいえ、この辺りでは遅れはとらぬと思っているから堂々としているのでぇっ…」
背中を優しく撫でられて、思わず声が止まる。
別に撫でられ慣れているわけでもないのだ。うん。
「………難しそうとは言うな。人の姿よりは余程楽に取れる。
それならば見ているがよい。」
ゆっくりと前足だけ水につけて、じ、っと待つ。
尻尾も垂らし、前足をつけた波紋すらも消えて。
何か、張り詰めた空気が広がる。
もしかしたらちょっと渋い顔をしているかもしれない。川側を向いているから見えないけど。
「………せいっ!」
見切れぬほどに素早く前足が動いて、ぱしゃぁっ、と水が弾け。
獲物がべしゃ、っと地面に落ちる。取るには取れた。
濡れた木の枝だったが。
■スーファン > 「……ン。無論、早々遅れを取るつもりは無い。神仙に比べれば児戯であろうと
十年かけて五火神焔法を学んでいる。君が善良であるならば、見る機会は無いだろうが……」
呼び名については誤魔化した。説明をすれば彼(多分)はきっと怒るだろう。
怒る様子が見たくもあったが、初対面では礼を失するに余りある。
それに今は彼が意気軒昂に示す魚釣りが気にもなり、水を差すのも躊躇われた。
やがて──
「おおっ!?」
多分、きっと、閃いたのは前足だろうか。
獣の如き素早さを見せて釣果は打ち上げられて地へと伏す。
問題はそれが木の枝だった事だが。
「………うん。採り方は、解った。うん、佳いものが見れた」
何と言おうか。いやそっとしておこうか。
私はそっと立ち上がってその場を後にしようとした。
■山吹 > ………何事も無かったかのようにまた前足を水につける。
絶対振り向きたくない。振り向けない。
恥ずかしさでぷるぷるするのを堪えながら、こほんと咳払いを一つ。
「スーファン、その内新鮮な魚でも馳走しよう。
……本当だぞ。」
念押しする声が背中にかかる。
もし万が一振りむいたら、地面に頭をべしょりとつけて、凹んでいる姿が見えるかもしれない。
……あー、カッコつけようとしてしまったぁー……
心の声だから外には出さぬが。
■スーファン > 呼びかけに振り向く
凄い格好でしょげているシャオシャンが見えた、見えてしまった。
「…ン。楽しみにしている。その前に君が退治されたり……は無さそうだ。
誰かに捕まったりしない事を祈っている」
抑揚が不自然に抑えられた言葉をかけて、それを別れの挨拶とした。
魚を釣りに来て奇妙な縁を釣った。
成程これも悪くないと、暫く歩いてから空を見上げる。
すると、しょげるシャオシャンに良く似た丸雲が青空に映え、街道でついに私は吹き出してしまうのだ。
周囲に誰も居なくて本当に良かった。父母や知り合いに見られたら、きっと心配されるに違いなかった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からスーファンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」から山吹さんが去りました。