2018/08/04 のログ
芙慈子 > 姿を現した少年に声をかけられ、立ち止まった少女は顔だけをそちらへ向けた。
炎に照らされた顔は、炎の揺らめきに合わせて陰影も揺れ、表情が分かりにくいかもしれないが、一貫して穏やかである。
やはり濡れた様子のない顎を引き、紅を引いた唇が、まだ歳若い少女の声を出し。

「“こんなところ”をあるくのはヒトだけですか?獣だけですか?
 貴方も“こんなところ”をあるくのですから、それ以外を見たこともあるでしょうに」

まるで冗談でも言われたかのように、少女は鈴の鳴るような笑い声までこぼす。
“それ以外”の存在に、ここにいる理由などあろうがなかろうが無意味だと言いたげに。

「ふふ。あまり声をだすと獣をよんでしまいますね」

笑った口元を隠すように袖を添えながら。
一見無邪気だが、やはり存在としては不可解で多少の禍々しさもあろうか。

ブレイド > 人もいない。
文化の臭いもしない、草生い茂る湖の畔。
そんなところで穏やかな表情を見せる少女の放つ言葉はまるで言葉遊びのそれ。
声や姿の印象よりも、大人びたような言い草だ。

「ちげぇねぇ。違いはねぇが…それ以外ってのは、ヒトでも獣でもねぇもんってことか?
そんなおっかねーもんはみねぇな…このへんではよ」

言葉遊びのような少女の返し。そしてコロコロと涼やかな音色の笑い声。
からかわれているのか舐められているのか。
ため息混じりに苦笑する。

「ま、そうだな。獣なんざ来たらたまったもんじゃねぇ。
だけど、獣なら敏感じゃねぇのかね。『それ以外』ってやつの…
気配ってもんにはよ」

可憐な少女のようにも見えるすがただが
言葉の端や表情、何より気配は不穏を匂わす。

芙慈子 > 「そうでしょうか。それならここは意外と安全ですね。
 貴方だって、よほど大物でないかぎり獣退治は出来るのでは?」

「このへんでは」という言い方に完全に納得した様子は見せなかったくせに、納得したフリをする。
歪な存在ではあるものの、無用に口論したり敵意を見せたりはしないタイプであった。

「―――貴方だって、人間ではないのでしょう?」

さも不思議そうに首を傾げる。
フードの中が見えるわけではないが。
少女にとっては魔族の自分と、人間ではない種族の少年と、同列ではないにしても遠い存在ではない様子。

ブレイド > 「買いかぶるなよ。アンタほどじゃねぇが、この細腕じゃそんなだいそれた事はできやしねぇさ。
それに、無駄な殺生やら暴力やらはオレだって好きじゃねぇよ。
獣だって好きで襲いかかってくるもんでもねーだろ」

相手の調子に合わせるように笑いつつも、警戒は続ける。
敵意、害意があるわけではない。
だが、何かあったらよろしくない。
探りを入れる段階ではあるだろう…と思っていれば、かけられた言葉に驚いたような表情を見せる。

「っ………!?アンタもかい?奇遇だな」

内心焦りを感じたが、なんとか言葉を絞る。
その言葉から彼女も人間ではないのだろう。
彼女のように確信があってのことではないが、言葉の調子からそう受け取る。
害意がないものであればいいのだが、少しばかり緊張が走る。

芙慈子 > 「おやさしい方なのですね。残念です。そういう方は長くは生きません」

平然と。しかし本人なりに本気で残念がっているように眉を下げ、言う。
種族の違いはあるだろうし、育った環境の違いも大きい。
「貴方、長生きしませんね」とさらりと言った形になるのだから、怒られても仕方のない言動。
それでも本当に悪気はないのだ。

「………あぁ」

大した意図もなく指摘したことに対し、相手が張り詰めた様子を見せたことになにか察する。
繕う声の調子が、表情が、なんとも正直な少年だから分かりやすい。

「私は九頭竜山脈の奥地でそだちました。
 ほかの地域のことにはうとくて、よく分からないのですが…虐げられている種があるとか」

自らの種族を探られて警戒する者は限られるだろう。
あくまで少女の勘と予測でしかなかったが、言葉にしてみる。
なにせ分かりやすい彼のこと。否定しても反応で真実か否か、すぐ判明するだろうとの考えもあり。

ブレイド > 「だろうな。オレもそう思う」

まるで喧嘩を売るような言い草。
悪気もなさげにいうものだから、言葉そのものに偽りはないのだろう。
こちらもこちらで怒る様子もない。ピクリと片眉が少し上がるが。
冒険者にとってそんな甘さは命取りだし、なにより、冒険者が長生きなんてするわけがないのだから
彼女の言葉には同意するしかなかった。

「…だったら、どうする?
それとも、畜生と話す口はねぇとでもいうか?」

なにかに納得したような少女の言葉。
見透かされているような、遊ばれているような…値踏みされているような。
少しばかり眉をしかめつつ、吐き捨てるように。
それと同時に、フードを落とせば見て取れる猫の耳。
隠す意味がないなら、かぶったままでいる必要はない。

芙慈子 > 唐突に突き放したような言葉に少女はきょとんとしたが、
フードを外す仕草を見ると東国由来の黒い瞳が輝く。

初めて見る本物のミレー族。
少女は気を遣う様子もなく、しげしげと猫耳を見つめた。
尻尾もあるのだろうが、それ以外は人間となんら変わりない姿。
それが逆に興味深い。

「なるほど。露顕すればそのようにいわれるから隠すのですね。
 おもしろいです。貴方をそのようにあつかう権利が、人間でない私にもありますか?」

肯定するでもなく否定するでもなく、笑みを含めた声音が問う。
蒼白い炎に照らされる顔も実に愉快そう。
玩具を与えられた子どものように。

ブレイド > 「どうだかな、しらねーよ。
他所の国がどうだか知らねーが…オレ自身はそんな権利は認めてねー。
誰にもな」

自分を虐げる権利など、誰にも許さない。
この国の人間であれ、他国のものであれ、それは変わることはない。
故に少女の質問には、鋭い視線と少し荒い言葉を返す。
彼女が自分がそれであると勘付き、彼女自身が人ならざる何かであるから耳を晒したに過ぎない。
みられる視線自体は気にすること無く。

「で、アンタはなんだ。
人ではないなら、なんなんだ?
そんな目でこの耳を見るってこたぁ、ミレーでもねぇだろ」

楽しそうに笑う少女。
見た目の年相応の声色に見えて、その奥に見えるそこの炎のように
蒼白く、底知れぬ気配。遊ばれている。なんとなくだが、そんな気はする。

芙慈子 > 「あらがうのですか?…うふふ。次期王がおやさしい方だといいですね」

箱庭の人生を見て楽しむように。
少女の調子はどんな話題のときもあまり変わらない。
どちらかといえば表情に富み、言い方に機嫌のよしあしが見て取れる少年とは逆。
ただ、そんな少女にも多少の反応の違いはあり、質問が返ってくると笑みを薄め。

「お分かりになりませんか?
 ……いいえ。本当は感づいているのでは?」

細かく分類すれば多種多様な種族も、大まかに分ければ見当がつくはず。
薄めた微笑みを再び濃く滲ませ、少女は袖で口元を隠しながらなにか呟く。

――――詠唱。
足元で好き放題に生えていた草花が蔓のように伸び、少女の着物の裾に巻きついていく。
紅く毒々しい花が蔓に咲いては、花弁を落として散っていく。

「応援しています。どうせながく生きないのでしたら、もがいてください。
 ――――それでは、しつれいします」

蔓が少女の全身を覆ったとき、その姿は霧のように消える。
同時に炎も消え失せ、光源は夜空の明かりだけとなるのだろう。
少女がいた証として残るのは、魔力による急成長を強いられ、枯れた植物の残骸だけ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/湖」から芙慈子さんが去りました。
ブレイド > 「……ちっ…」

言われ放題。
完全に遊ばれていた。
不思議な術と共に姿を消した少女。
おそらくは…魔族。おそらくは、だが。
それにしたって、異端というか、異質というか…

「応援なんざ…心にもねーことを…」

吐き捨てるように残しつつ、改めて警戒する。
暫くその場で警戒を崩すこと無く…それでも何事もなければようやく肩の力を抜くだろう。

「採取場所荒らしやがって」

一瞥したかれきった植物の残骸の中に、依頼にあった薬草をみつつ
大きくため息。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/湖」からブレイドさんが去りました。