2018/07/29 のログ
タマモ > 雨は小雨程度ではあるも、それなりに強い風が吹いている森林地帯。
そんな中で、争っているのだろう、何やら激しく打ち合う音が響き渡っていた。
ここは自然地帯の中でも森林の多い場所、珍しい動物やら植物やらが魔物と共に生きている。
まぁ、そこで争いになっているのだとすれば…それらを求めてきた冒険者やらが、魔物と遭遇したのだろう。

小雨とは言え雨降る中、いつもの唐傘も差さず、ゆらりゆらりと彷徨っていた。
特に目的は無い、気晴らしの散歩…それに気付いたのは、そんな時だ。
視線がその方向へと向けられ、少女の歩む先が、そちらへと変わる。
俯き気味になっているからか、その表情ははっきりと見えない。
だが…その唇は、笑みのように弧を描いていた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」に三ッ葉さんが現れました。
タマモ > 争いに響く音と連なるように、雨風が強まりを見せる。
歩んでいた少女が一度だけ足を止め、ゆっくりと空を見上げる。
その時にちらりと見えるだろう瞳は、以前よりも更なる赤味を湛えていた。
その意味は主に二つある。
一つは、その精神が人間よりもより妖寄りとなった事。
もう一つは…それに比例して、加虐心が増している事だ。
今の少女は、普段から比べてかなり危険な存在となっていた。

再び俯くように頭を垂れ、音へと向かい歩み出す。
相変わらず、ゆらゆらと揺れながら歩く様は、危なげと感じるか…それとも…

三ッ葉 > 「ここは……どこぞの森か……?」

ふと気がつけば、見知らぬ植物の生い茂る森の中。
先程まで何をしていかのすら覚束ない。そして何よりも酷い脱力感。

「……遠い異国か、はたまた異なる世界か。」

力が湧かぬ、信仰の力が届かぬ状態への推測。
不快、ひたすらに不快。
近くから嫌な、酷く嫌な臭いがする。妖狐の臭いが。

軽い頭痛のする頭を抑えながら、錫杖を杖にしてあてもなく歩き出す。

タマモ > ぴくん、少女の耳が揺れた。
歩む先に感じるよりも、強い気配。
ただ…今の己には、非常に不快なものだ。

「………イナリ…いや…違う…」

ぽつりと呟く言葉、紡がれた名は、ここに来て出した事の無かったものだ。
己が居た地に居るはずである、天狐の少女。
だが、すぐにそれを否定した。
気配の質がそもそも違う、本当にその相手が来たのならば、近くに居ればすぐに分かる。
つまり…その相手とは違うも、同類なのだろう。

「ならば、加減は要るまいな…?」

歩む方向が、その言葉と共に変わる。
近くに感じた、新たな気配の元へと。

三ッ葉 > 強まる雨。錫杖を持つ狐耳の少女を避けるように降りしきる。

……臭いは近いが、非常によろしくない。
危険な臭いがする。今の自分にどうにかできるかという酌量を超えている。

見えぬ相手の力量に震え、耳と尾っぽが逆立つ。
しかし、逃げることは出来ない。
臭いが強くなる。向こうから近づいてくる。
自分が逃げれば被害は大きくなるに違いない。
異なる地といえど、それを許容することはできなかった。

タマモ > 「荒れておるな…非常に、不愉快なものじゃ。
………そう…お主達のような、己の力に頼れぬ者達と同じくしてな…?」

声の届く距離となれば、そちらへと向けて言葉を掛ける。
天狐、神の僕となり、力を得た者達。
今の荒れた天気と同じように、気に入らない。
そのまま、更に歩みを進めれば…相手の姿も、見えるようになるだろうか?

三ッ葉 > 「……くふ、妖狐というのはどいつもこいつも臭くて仕方がないのう。」

錫杖をシャンと鳴らし、大災の元へと仁王立ちで迎える。
荒々しい御魂。混ざり合って定かではないそれに向き合う。


「よくよく嗅げば、妖狐のそれより醜悪よな。なんなんじゃお主は?」

精一杯の虚勢。だが、一歩も退かぬ堂々とした振る舞い。妖狐なんぞに遅れを取るわけにはいかない。

タマモ > 「元を糺せば同じ狐じゃろうに、自分は特別だと、思い上がっておるのは…どの天狐も同じのようじゃな?
まぁ、人を喰らい力にし、それを自慢するのも同じか…」

仁王立ちする相手が視線に入り、向けられる言葉に、どこか呆れた表情を浮かべるか。
もう数歩進み、足をそこで止める。

「ふふ…そうか…確かに、今の妾は…醜悪じゃろうてな…
細かい事は気にするだけ無駄じゃ、今の妾は、妾自身でさえ…」

普段を知る相手からすれば、明らかに異常であると分かる。
だが、今回の相手は初見だ、それに気付けはしないだろう。
堂々とした相手の様子、気にする風も無く、ゆっくりと顔を上げる。
ほぼ紅で染まる瞳、そして、その表情は獲物を目の前にした狂人に近いものだった。

三ッ葉 > 「言の葉はまだ通じおるか。いや、そうでもないかの。」

異常。全身の毛が逆立つのを感じる。これほどまでの妖気はかつて出会ったことがない。
正気があるようにも見えるが、言葉の通づる相手ではなさそうだ。
万全であれば……いや、どうなるだろうか。

勝ち筋は無きに等しい。だが降参はできない。プライドが許さない。仮にしたとしても無意味だろう。


「--ならば、その思い上がり……試してみるかッ!」

ダッと相手から見て右に転がるように駆け出し、先制で複数の御札を投げつける。おそらく無意味だろうが、試して見る価値はある。

タマモ > もはや、今の己にとって、相対する少女の力の差なんてどうでも良い。
まだ天候が荒れていなければ、少しは少女に救いはあったのだろうが…
情緒不安定な心に、追い打つ荒れた天候が、それを深化させていた。

「………打つが良い、受けてやろう…」

視線は…少女の動きを完全に捉えている。
だが、投げ付けられた札に対し、やはり反応はしているのに…動かない。
間違いなく、避けようと思えば避けれる、そんな感じだ。
なのに…投げ付けられた札は、その身に貼り付いた。

「この札は…妖力に対し、有効ではあるな?
じゃが…そうでない力に対しては、どうじゃろうか?」

妖力を元としている力が、その札の効果か、それなりに減少するのは分かる。
今ならば、普段の頑丈さもないし、自在に尻尾を操る事も少し難しくはなっているだろう。
しかし…力として常用しているのは、妖力ではなく、超能力。

札を身に貼り付けたまま、すっと片手を少女へと向け…振り下ろす。
その途端、上から何かに押し潰されるかのような圧力が、少女へと降り掛かった。

三ッ葉 > 「……あなやッ!?」

急速に落下する身体をなんとか錫杖をしがみつき、倒れ伏す事は回避するが、圧力で動くことはできそうにない。


「姑息な真似を……しおってからにッ!
 灰燼になるがいい!天火方陣・煉獄!」

動けぬ態勢のまま、今できる攻撃を放つ。
少女の周囲の地面から強烈な炎が発生し、相手の辺りを燃やし尽くさん限りに広がりを見せる。

タマモ > 「加減してやっておるのじゃ、動けはせんが、五体満足じゃろう?」

くすくすと笑い、再び、ゆっくりと歩み始めた。
動く事の出来ない少女の元へ、一歩、また一歩と。
…と、続いての力が発現し、周囲に炎が噴き上がる。

「………姑息じゃと?…言うてみよ、天狐。
今の何が、どう姑息なのか…妾に説明するが良い。
そして、こんな札を使い、力を封じようとするのは…姑息ではないのだとな」

次の瞬間、その場に焼き尽くそうとする少女の姿は消えていた。
先程の超能力の一つである念動力に続き、瞬間転移である。
代わりに、動けぬ背後から掛けられる、問い。

「後はな…ここは、どんな場所か分かっておるのか?
あんな炎を巻き起こし、自然が焼けると思わんのか?
そうなった時、困るのはどんな存在じゃ?
他を愚する前に、己の愚行がいかなるものかを考えよ」

するりと伸びる手が、少女の首を掴もうと伸びる。
それが叶うのならば、そのまま、少女を地面へと引き倒そうとするだろう。
叶わぬならば、次に少女がどう動くのか、見定めようとするのだが。

三ッ葉 > 「くふふ、「それが限界です」……の間違いじゃないかのう?」

冗談ではないとわかっているが、つい煽ってしまうのは癖なのか。
表情は笑っているが、頬にはタラリと一筋汗が伝う。


「ぐぅ……わ、わちは良いのじゃ!こんなか弱いおなごなんじゃからなぁ!」

痛い所を突かれ、まともな返答を返すことができない。

ふと、目の前から消える少女。だが、位置は掴める。
あまりにも醜悪な臭いを背後から感じる。

「……この雨じゃ、そこまで広がらんじゃろ。それに、そこまで余裕もなさそうじゃからなあ。」

なんとか顔だけ動かし、少女の問に答える。
そして首筋に伸びる手が目に入るが、動くことができない。

タマモ > 「ふむ…そう思いたくば、そう思えば良い。
これが、嘗ての限界であった、丘一つを潰す力であると感じられるのであればのぅ?」

そう、嘗ては怒りのままに全開で放ち、丘一つ、そこにあった大砲と人間ごとすべてを潰した事がある。
そのせいで、ある男との戦いに負けたのは…本当に不覚だったと今でも思う。
それを、平然と答えてやる。

「そうかそうか、では…そんな弱い女子が、妾の様な醜悪な妖狐に挑んだらどうなるか、分かるな?
それと、広がる広がらないの問題ではない、遣うか使わないかの問題じゃ。
もっと他に、周囲に害を与えずに使える力もあるじゃろうに…少しは選ぶが良い。
ともあれ………仕置きの時間かのぅ?」

向ける顔に、ずぃっと顔を寄せる。
そして、言葉の終わりに合わせ、動かぬ少女の首筋に手を添え…
前倒しに、少女を引き倒した。

三ッ葉 > 「ぎゅっ……」


動かされるまま地面に倒される。抵抗する力は今はない。
ああ--、なんてみっともない。
情けなくなる。こんな戦法をとらないといけないことが。

二人の少女の頭上の木の上。、錫杖を持つもうひとりの少女が立っている。分身だ。
そのまま相手の少女目掛けて錫杖を突き立てんと飛び降り、襲いかかる。

これが最後の手であろう。かわされれば、彼女にこれ以上の手はないだろう。

タマモ > 「のぅ…お主は、妾を感じ取れたな?
なぜ、妾がお主を感じ取れない、そう思った?」

押し倒した少女に、囁くように、そう伝える。
そう、でなければ、姿を見せる前にお互いの感知なんて出来なかったはずだ。
襲い掛かってくる、少女の分身。
そちらへと、空いた手を伸ばし…その手を広げ、握る動き。
襲い掛かって来ていた少女が、何かに掴まれた様に空中制止をするだろう。
握り潰すのは簡単だ、だが、あえてそれはしない。

「で…お主にとって、不意打ちは卑怯な真似ではない、そう言うか?ん?」

責めるような言葉、それと共に、軽く衣服でも引き裂いておこうか。
まず、反省の一つくらいはしろ、と言わんばかりに。

三ッ葉 > 「くくく、ふふふふ、くはははっ!
 いやぁ、まいったのう。降参じゃ降参。わちの負けじゃ!煮るなり焼くなり好きにするが良い。」

全ての策を使い切り、どうしようもない状況。笑う以外なにができようか。倒れ伏した方の個体が目だけ少女に向け、降参の意を伝える。

「ふむ……そういう趣向がお好みか妖狐。」

空中に静止したままの個体が、服を引き裂かれる様子を見ながら表情ひとつ変えずに冷たくそう言い放つ。

タマモ > 「そうか、負けを素直に認めたならば…もう良い」

こうも、言葉と行動の噛み合わない神の僕もあったものか。
無駄に生真面目で完璧主義に近い天狐、そんな印象を持っていたが、考え直させられる。
それが逆に、己を悩ませていた矛盾を少し和らげた。
そこまで、己の考えに完璧である事を求める必要は…ないのかもしれない、と。

僅かではあるが、瞳の紅が薄まり、金色が見え隠れし始める。
この少女を相手している内に、冷静さを少しは取り戻していた。

「む………あー…こういった趣向もまた、好みではあるが…
降参を認めた相手に、なお動きを封じたままで無駄な追い打ちは必要あるまい」

地面に引き倒した少女を見、空中で掴んだままの少女を見、改めて視線を戻す。
押し付けていた手を離し、翳していた手も戻せば、どちらも自由を取り戻すだろう。

三ッ葉 > 「そ、そうか……これまた異な事を。」

解放されるなどと思っても見なかったので、少し声がうわずる。理由は定かではないが、助かったとみて良いのだろう。

拘束から放たれると同時に倒れ伏していた個体がポンと軽い煙を出しながら消える。
どちらも本体。恥ずかしさはあまりなくとも、なるべく無事な個体を残したかった。


「……まあ他人の性癖にはとやかく言うまい。
 ほれ、ちょっと失礼するぞ。」

ペリペリと相手に貼り付けた御札を剥がす。
剥がした札は空中で塵になる。

タマモ > 「………何じゃ、無理矢理にされるのが好みならば、続けてやっても良かったんじゃが?
まぁ…好きにする許可は得られたのじゃ、一度とは言え、好きにさせては貰うつもりじゃぞ?
まさか、あの言葉が嘘だった、何て言わんじゃろう?」

この少女がもし正々堂々とした戦い方をしていたら、こうはいかなかっただろう。
天狐はやはり、思った通りのものなのだと、考えてしまっていたからだ。
そうではなかった事が、ある意味この流れを作り出した。
………まぁ、少女的には本当に不本意かもしれないが。

そして、結局はするんかい!と突っ込まれるだろうが、約束は約束なのだから、それは伝えておく。
札を剥がされる感触と言うのは…あれだ、ちょっと微妙かもしれない。
擽ったいと言うか、何と言うか…気持ちよくはない、うん。

三ッ葉 > 「む……まあ、一度口にした事。それをおいそれと破るほどまだ腐ってはおらぬわ」

天狐としては少し。多少なりとも俗物という意識もなくはない。本当にほんの僅かだが。
不本意だが、確かに敗北したのだ。これからどうされようが意を唱えるのは憚られる。


普段の神通力を持つ天狐ならばそのまま力任せに正面から戦っていたことだろう。
ただただ、必死だった。まだ力なき頃の忘れていた感覚を少し思い出す戦いだった。


「さて、逃げも隠れも増えもせん。好きにするが良い。」

錫杖を脇に置き、その場で正座をし、勝者の言葉を待った。

タマモ > 「ふふ…よい覚悟じゃ、たっぷりと楽しませて貰おうかのぅ。
………と、その前に、お主に一つ聞かせて貰おう」

にんまりと、意地の悪い笑みを浮かべる。
天狐が天狐として居る者を、相手にした事がないからだ。
何をしたら、どう反応するか…今からでも、楽しみで仕方無い。

が、気になる事があったので、それを問おうかと。

「格好はともかく、その手の…それじゃ、ここでは、そんなものを付けておる者が居らん。
もしや、お主は妾と同じ、ここの者では無いのか?」

問いながら、よいせ、と正面に屈みながら、顔を覗き込む。
あれだ、余裕がなかったので、今の内にまずしっかりと見ておこうとかどうとか。

三ッ葉 > 「うむ、お手柔らかに頼むぞ。わちの肌は絹のように繊細じゃからな」

自分の肌を撫で、億面もなくそう言ってみせる。
その様子からは照れや恥ずかしさは一切感じていないようだ。


「やはりここは異なる世界ということで良いのか。
 さっぱり神力を出せなんだ、おかしいと思うておった」

そう口では言うが、深刻に考えてはいない様子が見て取れる。確信こそないが、ふわふわとした存在感しか感じられないため、本当の身体はここにはないのでないかと感じているからだ。


「そんなに顔を近づけるな。接吻してしまうぞ?」

三ツ葉の顔は幼い顔つきというより、少し体躯に似つかわしくないどこか艶のある雰囲気をもっていた。
接吻は勿論冗談だが、してくるならば受けて立つという気概はあった。

タマモ > なるほど、だから違和感を感じていたのか。
それが分かれば、ふむ、と頷き納得した。

「ふふ…加減をするかどうかは、気分次第じゃな。
ともあれ、妾が満足するまでの相手をして貰う。
…が、まぁ、それならば、好きにするついでに案内をしてやろう。
お主とて、活動拠点と出来る場所なり、欲しいところじゃろう?
この付近は自然しかない、王都に行けば、色々とあるからのぅ」

自分が召喚された時は、国は違えど城内だった。
だが、この少女が現れたのは自然地帯だ、かなり不便があるだろう。
そう考えての意見だ、別の目的もあるのだが…今は秘密である。

「そうか、ならば、まずはそれからじゃな?」

挑発のような言葉に、さらりとそう答えれば、更に顔を寄せ…ちゅ、と唇へと軽く重ねるだけの口付けを。
そのまま、正座をしている少女の腰に腕を絡め、抱き寄せるようにして互いに立ち上がる。

三ッ葉 > 「王都……未だ王政のある地域なのか。」

ミサンガが日ノ本に伝来したのかなり近代化した後である。こんなものを身に着けているのはかなり変わり者の天狐である証であろう。
その時代にはソウリダイジンなるもの政の指揮をしていたと記憶している。


「拠点か……まあ、ここの自然をぶち壊してでかい社を建てるのも骨じゃしなぁ……」

その口ぶりからは冗談ではなく、わざわざ切り開いて建てようとしているように聞こえる。


「んっ……、さてここからどうするのじゃ」

軽い接吻を交わし、次なる行動を待つ。

タマモ > 「なかなかに、面白い世界ではあるぞ?
王政の世、そして人間とは違う存在も数多く居る。
妾等で言うところの、ふぁんたじー、と言うものじゃな。
………分かるか?」

分かる人間には、この一言で理解してくれる者も居る。
果たして、この天狐がそれであってくれるか…まぁ、でないと、説明が面倒と言うのもある。

「………自然は守るべきものじゃろうが、いきなり問題発言をするでない」

ゆらりと揺れる尻尾の一本が、ぺちり、と頭を叩いた。

「その前に、場所を変えねばな。
あれやって、その後にこれやって、なんぞ面倒でいかん。
同時にやれば、面倒もなく便利じゃろう?」

くすりと笑うと、身を寄せさせたまま、王都の方向へと視線を向ける。
ゆらりと、揺れ始める風景。
案内すべき場所への転移、次の瞬間には、二人の少女は目的地への移動を終えている事だろう。

三ッ葉 > 「ファンタジーならわかるぞ。金髪のツンツン頭の男が大きな剣を持ち戦ったりとか色々あったのう。」

かなり近代文化を嗜んでいた様子で思い出すように言った。
少し齟齬があるかもしれないが、大体伝わったであろう。


自然は守るものとぺちりと叩かれるやいなや、「あなやッ!?」と声をあげる。

「でもじゃなあ……格にあった社というのは大切じゃぞ。威厳的に。」

この天狐、自覚はないが、かなりの俗物である。


「まあ、外でといのも獣みたいで落ち着かぬしな。
 もう少し穢れがない場所のが好みじゃな」

転移しそびれぬよう、ぴったりと寄り添い共に転移した。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からタマモさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」から三ッ葉さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にマニィさんが現れました。
マニィ > 森の中、それが夏ともなれば人にとっては眩い程に昏い世界だ。
鬱蒼と生い茂った木々に遮られて日の光はろくに届かないし、
森自体が一つの命であるかのように巨大な気配を色濃くするものだから、
内部では感覚が狂ってしまうし、魔力の探知も期待出来ない。
自然に満ちる濃密なマナは大層魅力的に人間を拒み、迂闊に訪れた者の命を奪う。

「肥沃な土地には立派な森が育つもの。とは言えちょっと面倒くさいな、これは!」

頑丈なブーツに厚手のタイツ。足元の守りを固め、長袖の衣服をもきっちり着込んだ私が森の中で叫ぶ。
叫んでも輪唱する蝉どもに掻き消されてちいとと響かず、腹いせのように側の木を蹴ると数匹の蝉が飛んだ。

マニィ > 手には長柄の補虫網。肩には皮の鞄と虫籠を交互に掛けて、今日の私は何処からどうみても虫取り娘だった。
それも当然、冒険者ギルドに舞い込んだ依頼が昆虫採集だったからである。
曰く「メグメールの森に生息している、虹色の甲殻を持つ甲虫を採ってきて欲しい。」とのことで、
採取系の割には報酬がそこそこ良かったものだから、他の連中が請け負う前に請け負って来たと言う訳さ。

「……うーん見つからないなあ。ついでに薬の材料になりそうな物でも採取しようと思ったんだけど、
こうやたらめったらに入り組んでいたら探すのも一苦労だし、ヘタをしたら遭難してしまうぞ。」

進路の木に短剣で目印となる傷を付けつつ緑を分け入り愚痴を吐く。
人間のみならず魔獣の類すら拒む魔力を持った森は、それそのものは安全と言えるかもしれないけれど、
肝心の森の生物は対象外だ。蛭だの蚊だの野生動物だのは格好の獲物を感じ入り襲い来るだろう。
尤も、対策を怠る私じゃあないから、きちんとそういうのが嫌がるお香を炊いて鞄にくっつけるのは忘れない。

マニィ > 「……しっかし暑いなあ! しかもただ暑いだけじゃない、蒸し暑いときている! これは首尾良くいったら水遊場にでも遊びにいってもいいだろう。」

隆起した樹の根を乗り越え、周囲を見回しては嘆息をしてまた次へ。そんな事を繰り返すうちに私はすっかり汗まみれ。
休憩がてらに適当な根に腰を下ろし、鞄から水筒を取り出して水分補給をしながら思い浮かべるのは、何とも面白そうな円錐状の建造物の事。
お目当ての甲虫を複数見つけられでもしたら、ひょっとしたら報酬の上乗せだって有り得る訳で、
私のアメジストのような瞳が、好物を目前にした子供のように輝くのも已む無しってものだ。

「………ん?」

──と、その時だ。
意気軒昂に拳を握る私は地面の揺れを感じて立ち上がる。
規則正しく一定の間隔で訪れる揺れはどうも巨大な何かの存在を想起させた。

「んんー……?この先からだね。はて、こんな木々も鬱蒼とした所には不釣合いな気配だけれど。」

何かがあれば何かがあるものだ。この場合は不自然な揺れがあれば、震源が其処にあるということ。
私はいそいそと道無き道を行き、やがて一際大きな樹が倒れているのを見つけた。

そして、その樹にしがみついている、どうみても3mはあるだろう虹色の甲虫の姿も。

「………………………よし、帰ろう!!!」

帰ろう。
そういう事になった。

くるりと踵が帰って何も見なかった事にした。なった。
とりあえず帰ったら水浴びでもして、正確な依頼内容を教えてくれなかったギルドに苦情の一つも入れてやろう。
そう決意をし、それはそうと行き掛けの駄賃として蝉を虫籠一杯に詰めて帰路へ着いた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からマニィさんが去りました。