2018/04/26 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にボブさんが現れました。
ボブ > (硬めの厄介な太い樹を切り倒す事に成功した若き木こりの男は一仕事終えた一休みとして清流流れる川の畔へとやってきて
両手で川の水を掬い上げれば、頭の上からかぶり、頭を左右に振り、水の粒を振り払っていって)

「ぷはあぁぁ~~~、つっかれたぁ~~」

(頭を水で濡らしたまま、声を上げれば川岸の草っぱらの上で仰向けに寝転がりながら声をあげている男)

ボブ > (難敵とも言える相手に勝利をした木こりは風が穏やかに流れている川岸の草っぱらの上に寝転んでいたが
大きく息を吐きながら、寝かせていた上半身を起こし)

「はああぁぁぁ~~~、あいつを倒したからってそれで終わるわけじゃないんだよな……
あいつを倒したからこそ、あいつを作業場まで下ろして、幹のでこぼこを適度に調整しないといけないんだよな」

(木こりの仕事はただ樹を倒すだけでは終わらない……それを分かっているからこそのため息を吐きつつ、
ゆっくりと立ち上がっていけば、木こりが倒した太い樹の場所へと向かい、仕事の続きに取り掛かっていった)

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からボブさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にロカさんが現れました。
ロカ > 鬱蒼と茂る木々のお蔭で昼猶暗い街道外れの森。雨露を孕んだ草地を踏みしめ、襤褸布めいたローブを引きずり、白色の光を携え彷徨い歩くはこの地で命を落とした亡霊――……

「~……」

では無く、ランタンを携えた一人の青年であった。夜の森、一層暗闇を孕む森の中、慣れ親しんだ場所を辿る気安さで、青年は時折倒木を乗り越え、拾った剣の鞘で伸びた蔓を押し退けながら歩を進めていた。

「……愛しい 僕の 恋人よ どうか教えておくれ 僕が君から離れぬ様 どうか教えておくれ 君の愛を そして憎しみを」

微かに紡ぐのは、森の精霊に捧げる歌だ。森の恵みを、その見分け方、効能を伝える伝承歌の童謡でもある。旋律は単純の様に見せかけ、微妙に入り組んでいる。
歌い慣れたその音を紡ぎつつ、一度立ち止まる。足裏で地面を確認する様、足踏み。

「愛しい 僕の 恋人よ 恥じらい 隠す 喜びの」

そして田舎の気安さからか、俗っぽく下賤でもあった。多少耳年増な輩であれば聞けばにやつく隠語を恥じらいも無く紡ぎ、徐に屈んで幾重にも重なった枯れ葉と茎を掻き分ける。
腐葉土と化した層を掘ると、淡く色づき慎ましやかな膨らみを覗かせる植物が見えた。

「朝では遅い 夜の帳が降り始めた頃 どうかつんでおくれ 誰にも取られぬ 誰にも見せぬその内に……」

歌通り、これが地上に出てしまう程成長すると途端味にえぐみが増し、先端に蓄えられた魔力が”濁る”らしい。無学の己にはよくわからないが、この植物を必要とする老婆がそう言っていた。
夜の森は危険であるが、この時間帯でしか手に入らぬ物が無数にあるのだ。

ロカ > それを根元から掘り起こし、数個腰に括り付けた袋の中へと入れる。何でも取り過ぎは厳禁だ。
供給過多は価格の崩落を招くだけだし、何より森の怒りを買う。そして万が一の時、荷物は軽いに越した事は無い。
コツコツと、だが確実に。幸いにも、地道な作業は苦で無く、寧ろ青年が好む事であった。

「美しい 僕の 恋人よ 絹越しにしか 許されぬ 熱を持つ その体」

暗闇の中輪状になって群生する茸。紫掛かった色が実に美しい。しかし、胞子に微量の毒があり、直接触れるととんでも無い痒みと腫れを齎す。
それを利用し、クリームや糊状の物に練りこむ事で作る媚薬を作る事が出来る。何やら思い出したか仄かに目じりを火照らせ、数秒後緩く頭を振る。
袋に手を突っ込んで裏返し、根元を攫い毟る。一握り、と、オマケ分を採取したあたり、今夜はお楽しみの様だ。

「僕は囚われの身 君に愛を乞う哀れな」

視線を持ち上げ、木の枝、特に葉が茂らぬ枝の部分を注視する。今宵の目的は闇夜の中で咲く特殊な花である。
根元を煎じて飲めば心の臓に、葉は疲労に、花は何とも言えぬ甘い蜜を持つ。贄草、棺草、躯花、物騒な通り名その儘に、魔物や動物…時には人の躯に根を這わせる花だった。
普段ならもっと深部にしか咲かぬが、今の季節になるとまた話は別である。

ロカ > 辿る視線が、不意に止まる。ふー…、と腹筋を窪ませて長く息を吐き出し、ランタンを左腰へと括り付けなおした。
どうやら目的の物を見つけたらしい。
軽く左右の手首を振り、背筋を伸ばして準備運動。ポケットに入れていた布の切れ端を引き摺り出し、掌に巻く。

不意に、歌声を途絶えさせる。何かを気にする様一度空を見上げ、小さく頷く。目的の大木まで、数歩。
森に生きる人間らしく大股の歩幅で距離を縮め、最後の一歩を跳躍とする。
靴の先に何か仕掛けをしているらしく、苔むした幹に足を滑らせる事も無く、長く節立った指先が木の凹凸を器用に探し出し上腕の力と脚力で上へ上へと体を運ぶ。

『びゅい!!!びゃあ!!びゃ!びゃあ!!!』

「……し、静か、に。……いい子、ぃ、いい子」

目的の物―……魔鳥の巣に辿り着くと、親鳥の気配と違えた雛が我先にと兄弟を押し退けて首を伸ばし、大口を開けて主張を繰り返す。
太い枝の根元に跨り、ぐうと背筋と長い腕を伸ばして

『びゅあ!びゃぁ!びゃああ!!!』

掌から垂れた布の端を、餌と認識した雛が我先にと啄み引っ張る。一度囚われてしまえば手が一瞬とは言え下がるところを見ると、雛ですら相応の力を持っている様だ。
巣の片隅―……ひっそりと頭を垂らし蕾を膨らませる棺草は、雛の食べ残しから生えている。指先のブレに苦労しながらも摘み、追い縋ろうとする雛を避けるため一気に体を起こし……

「!!」

青年の視界一杯に、羽が広がる。恐れていた、親鳥の帰還であった。
常ならば深層にしか咲かぬ花が、この時期この場所で採れるのは、この親鳥が深層に住む小動物、及び魔物を狩って来るからだ。
条件さえ満たさなければ、この魔鳥が危険視される事は無い。条件……例えば、留守中に、大事な雛と巣にちょっかいをかける、とか。

ロカ > 「ま、待って、な、何もしな、…い、もう、もう、帰る、から……!」

もう何もしない。用件は既に終えたから。
必死の説得を試みるも、怒った親鳥には効果が無い。そもそも、青年に鳥獣と言葉を交わす様な特殊スキルは無い。
旋回し翼を、嘴を叩きつける親鳥に頭を抱える腕は傷つき、ただでさえ不安定であった体が時折大きくバランスを崩す。
力をこめていた腿は痺れて来たし、絶対絶命のピンチ、残念!ここで青年の冒険は終わってしまう……かの様に、思われた。

腰に括り付けたのは、ランタンだけでは無い。先程収穫した茸…『娼婦の股座』もである。
こちらの頭を蹴たぐり、凶爪の餌食にせんと襲い掛かる魔鳥の股間へと、それは吸い込まれるかの如く投げ込まれ―……

その夜、魔鳥の絶叫が、森の中で響き渡った。

その叫びは何処か悩ましく、その声に誘われた結果新たな種が森の中で生まれたり生まれなかったりした事は、これ幸いにと逃げ出した青年にはあずかり知らぬ事である…。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からロカさんが去りました。