2017/03/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にペインテイルさんが現れました。
ペインテイル > メグメール(喜びヶ原)自然地帯、その一角にある岩場の多い草原が存在する。岩場の影に隠れて希少なキノコが生えていたり、岩も良く見ると鉱石の類が混じっている冒険者には喜ばれそうな採集領域である。矮小なモンスターすら存在しない一見して安全そうなそこは勿論都合がいいように神様が計らった奇跡の地ではなく、其処を縄張りとしてウロウロとしている魔獣が存在するからである。その領域の主の名はペインテイル、小柄な狼に良く似た有り触れた魔獣ではあるが、その知能は通常の獣より高く、特徴的に大きな耳で風の流れを読み、耳を振りかざしての一撃など多彩な能力で自分より巨大な獲物を狩る事すらある魔獣で、ゴブリンやオーク程度の知性があればその魔獣は危険であり、近づくメリットはないと考えてか、結果としてこの魔獣が存在する地区は魔物の出ない安全な領域となっていた。

スンスン……スンスン…………
月の無い闇夜をまとったような黒い体毛
地面につきそうなほどに長く垂れた大きな耳
その耳先は人の指の如く厚みがあり5本に枝分かれしている。
そんな魔獣は今宵は縄張りを巡回し、他の同族やゴブリンなどの亜人が侵入していないか特に鋭敏は嗅覚を持って探っている。しかし、鼻腔に香るのは何時もの草と土と岩の香り、他にあるとすれば取るに足らない草食動物の香りしかない。
ならばと大地を踏み蹴り駆け回る速度を落し、緩やかに人が気晴らしに走るようなのんびりとした速度で草原を駆け巡る。

魔獣と呼ばれ、異形なる容姿をした黒き獣は「楽しむ」事を知ってる。人に届く程の知性とは言えないが、策を練る事くらい出来る知性は時として侵入者に友好な態度を取る事だってある。だがそれは対象者が魔獣にとって有益であり、性別は女に限る、と言う条件付である。

ペインテイル > 獣であれば本来同種同士でしか繁殖する事はない、稀に例外はあるが概ね同種同士が基本である。だがこの魔獣は例外が存在していない、更に言えば本来の基本である事同族同士で繁殖する事もない。ペインテイルと呼ばれる魔獣達は同族よりも肉体的に魔力的に強い他種族を襲い孕ませる事で遺伝子を継がせ、産ませた子は雄ではなく母体となった異種族に似て産まれる事で自分より強い存在に庇護をさせるのだ。そして生まれて成長した子は何時しか魔獣と同じ姿に変化する事が出来るようになり、魔獣と人の合間を生きる事となる。魔獣の遺伝子はその狭間で生まれた子が更に他者と交わる事で繋がり、不幸にも魔獣として生まれたモノがペインテイルとなる。中には母体が弱く、初めての子でありながら魔獣の姿をして生まれることもあろう、そうやって増えていく狡猾なる魔獣なのである。

月の光を星の輝きを飲み込む漆黒の毛並みは僅かだ艶やかに濡れて輝く、汗ではなく汗に似た粘液が体温の上昇で排出されたもの。暗い世界を見通す夜目の効く瞳は球体の形に磨かれた黒曜石の如くツルツルとしていて、動物特有の瞳孔が見えない不思議なもの。その瞳で数回瞬きをすると、近くにある大きな岩場を視界に納め、ゆるい速度で歩く動作から次第に徐々に大地を蹴る速度を上げ、前足の爪先で後ろ足で強く抉るように大地を蹴れば風の如き速度で草原を駆け抜け、視界に捉えてた岩場に飛び乗り、背筋を伸ばすと周囲をぐるりと見渡した。――鼻腔に僅かながらココに住んでいるモノ以外の香りを感じたのである。