2016/06/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にキーアさんが現れました。
キーア > 「つまり、つまり、その盗賊王っていうのは義賊だったわけだ!」

森林地帯。鬱蒼と茂った樹木の隙間を縫うように、月明かりが差し込む。所狭しとぎゅうぎゅう詰めに詰めた込んだような樹木の海の中に小さな広場ができていた。まるで何かが更地にしたような円は赤い血で染まり、そこに一人の男が一人の少女――あるいは少年にひれ付したまま、吶々と語っていた。

――主に、盗賊や夜盗の間に有名な英雄譚を

「いやー、そういう英雄譚っていうのは知らなかったよ。口伝でしか伝わってないんだろう? いやいや、それはやっぱり人から聞かないとわからないよなー。いやー、エルフを探してる時にいい出会いだった。ありがとう」

と、嬉しそうにほほ笑むキーアの前にいる男は身を震わせていた。
遡ること数分前。森の中を一人で歩く子供を見つけ、やれ売り払ってやろうと気軽な調子で声を掛け、縛り上げようとしたのが間違いだった。振り返ればこのような時間に子供が一人で出歩いてるほうがおかしい。
襲い掛かった男の一人は頭を魔法で編んだ槍で顔面を貫かれ、もう一人は腹を貫かれた。当然のことながら即死。3人目はもうそこで縮み上がり「何でもするから助けてくれ!」と叫んだ。その言葉に子は動きをぴたりと止めると笑顔で求めた。「じゃあ僕の知らない英雄譚を話してよ」と。

そして、今に至る。

「はい、それじゃあ帰っていいよ。いやぁ、出会いってのは大切だねー。僕もこれからは大切にしないといけないね、うん」

そういって満足そうに頷く少年に返り血一つついていない。
夜盗の男は怯えたまま脱兎のごとく逃げ出した。少年はその後ろ姿にひらひらと手を振って見送った。

キーア > さて、とキーアは魔法で編んだメモ帳に今聞いた話を書き込んでいく。
しばし、赤く染まった広場でペンを進めた後、「よし」とメモ帳を畳んだ。同時にぽんっと軽快な音が鳴ったかと思うとメモ帳はその手から消え去っている。

「やっぱり口伝は大切だねー。口伝と言ったらやっぱりエルフかな? と思って来てみたけどやー、こんなところにいるのかねー?」

キーアは目を細めて樹海の奥を覗き込もうとする。金色の瞳がちらりと光、青い筋を残して道を見る。
遠見の魔術や道しるべなどと言われる魔術行使だが、さりとてそれで見通せるわけでもないらしい。

「ま、行けばわかるっしょー。僕を殺すような奴が出るならそれはそれで会ってみたいし」

よっこいしょ、と腰かけていた岩から飛び降りるとキーアは樹海の中をぷらぷらと歩き出した。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からキーアさんが去りました。