2016/04/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
チェシャ=ベルベット > 日中でも太陽の光が差し込みづらいほど木々や枝葉に囲まれた森のなか。
人の手が及びにくいその場所は下草が無造作に伸びて、冒険者か何かでなければよほどのことがない限り人が訪れることはない。

茂みをかすかに揺らしながら木漏れ日の隙間を縫うように夜色の体毛をした小さな猫が足音もたてず歩いている。
どこかの野良猫が迷い込んだかと思えば、その体には藤編みでできた小さなかごが括りつけられている。

チェシャ=ベルベット > 時折魔物と遭遇することもあるこの場所ではなるべく忍び足が基本だ。
普段から隠密に徹するチェシャにはなれたもので、獣道を判別して歩き
最低限の音だけを立てて、そのへんの樹の下に生えたきのこや薬草、つるや木の実などをぽいぽいと器用にかごへ放り込んでいく。

見る人が見れば鳥獣戯画の世界であり、またそのかごに入ったものが主に魔法の飲み薬に使われる材料であることを知ることができるだろう。

なぜわざわざチェシャがここまで赴いたのかといえば大事な主人が先日、
敵対関係にある魔族と相打ちになって屋敷へと戻ってきたからである。
主人の偉大な魔法使いとしての力を信じていなかったわけではなかったがこの結果にチェシャはおおいにうろたえた。

魔族に対する怒りもあるがまずは主人の体を癒やすのが先決だと、教わった魔法薬を作るために材料を集めに来たのだ。

チェシャ=ベルベット > 猫の姿では到底手の届かない場所になっている木の実もなんのその、
軽やかに樹皮に爪を立ててするすると登ると猫のバランスを活かしてあっさり手に入れる。

とはいえこの姿でかごにものを詰め込むにも限度がある。
主人にものを収納する魔法を教えてもらっておけばよかったと思いながら
(主人はけしてチェシャが扱えないような過ぎたる魔法をそうやすやすと教えてはくれない。
 何事も計られたように万事が整った時にだけきちんと教えてもらえるのだ)
一旦荷物の整理をしようと猫の姿からひらりと身をかえして少年の姿に戻る。

ピンと猫の耳をたてて周囲に誰の気配もないことを悟ると体にくくっていたかごを一旦外して中の物を吟味する。

チェシャ=ベルベット > なるべく拾う段階で吟味はしたつもりだが状態が悪いものや細かな傷があるもの、
雑に放り込んだせいで傷んだものなどは取り除く。

主人の口に入るのだからなるべく良い物を持って帰りたいのは従者として当然の勤めである。
そもそも、あの神にも等しい主人がまさか負傷して帰ってくるなど思いもしなかったわけで
こうして自ら薬を煎じるなどというとやたらと緊張してしまうのだ。

ある程度見繕ったところで再びかごに仕舞いこみ、摂り過ぎた分はその辺に捨てた。
ぐるりと周囲を見渡した後、魔物の気配がないことを確認すると再び身を翻して猫の姿に変じる。

満杯になったかごをよたよたと背負い込むとそのまま一目散に王都へと戻るため茂みを揺らしながら猫の姿は消えていった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からチェシャ=ベルベットさんが去りました。