2016/01/29 のログ
リーゼロッテ > 「物盗り…ここらですと、組合の人も回ってないですし、監視の目もないですからね」

恰好の狙い場かもしれなかったが、今夜は相手が悪かったのだろう。
深く追求するのは避け、隼の無作法を許してもらえれば安堵の笑みをこぼす。

「そうでしたか…あの、良ければ送りましょうか? ここからなら直ぐに送れますし」

と、再びぺちぺちと隼の体を小突いた。
相変わらず隼はそっぽを向いたままだが。

ルーキ > 「あぁ。……全く困ったものだが……対策も難しいからな」

確かに相手は悪かった。
男も相当の使い手ではあったのだろうが―――

「……ふむ。……有難いが、どうやらわたしはその子に嫌われてしまっているようだ」

隼を指差して笑う。
そっぽ向かれているから嫌でも分かることだ。

リーゼロッテ > 広すぎる街道周辺全てを見張るには無理があるだろう。
そう思いつつ、少女は同意するように何度か頷いていた。

「何ででしょうね…いつもこんなこと無いんです。もぅ、へそ曲げてないでちゃんとルーキさんの方見てよ? ちゃんと載せてくれるよね?」

困った様に微笑めば、隼の方へ視線を向けて、ムッとした顔で三度になる掌での小突きを入れる。
ペチペチと叩かれる隼はしばらくそっぽを向いていたが、不意に本来なら発しない、他者にも聞こえる思念で語りかける。

『そこの女、何者か分からないが魔の匂いが濃い。アイオーンの伝え鳥として、そんな者を乗せられない』

そう聞くと、びくっと体が跳ねる。
死骸を見た時よりも、ショックが大きいのか、不安の色が濃くなり、眉をひそめながら恐る恐ると彼女を見やっていた。

ルーキ > 恐らくは――と考えていたが、想像の通りだった。
此方にも聞こえてくる声に苦笑いを浮かべる。怒るでもなし、鼻で笑うでもなし。

「―――…確かに、わたしは人ではないよ。元は人だったが……」

腰に差している剣はしかし抜くに至らない。腕組みをしながら興味深そうに、彼女の反応を見守っていて。

「これでも魔族のはしくれだ。……だからといって早々人を襲うわけではない…ということをわかってほしいがな」

リーゼロッテ > 隼に、人聞きの悪い事を言うなと怒るべきか。
つまらない冗談だと茶化してしまうべきか。
そんなことも考えていたが、さもありなんと肯定された言葉に、再びビクリと体をはねらせる。

「魔族……。その、本当に…襲わない、ですか…?」

蘇るのは最近遺跡で出くわした出来事。
魔族と名乗った男に犯されかけた記憶は新しく、思い出すとぞわりと悪寒が走る。
ぶんぶんと頭を振り、薄茶の髪を揺らすも、瞳に映る不安という文字が消えない。
逃げ出すでもなく、怯え竦むでもなく。
彼女の出方を見るように、じっと見つめるだけ。

ルーキ > 「……襲う必要もないだろう?」

おどけた風に肩竦める。彼女が何を思い出しているかは知らないが――

「さっきの男を殺してしまったのは何というか――少し、力加減を失敗しただけだ。ぶっちゃけて言えばな」

さて、どうする?と。相手の反応を待つようにじっと、その顔を見つめる。

リーゼロッテ > 「…襲う必要なさそうなのに、襲ってきた魔族の人がいたんです」

元々魔族に対しての知識に乏しいのもあってか、同類と見えれば不安ということだろう。
おどけた様子をみても、警戒した野良猫の様にじぃっと見つめるばかりだ。

「…それはその、あまり…人の命ですから言いたくないですけど、仕方ない…ことですし」

悦楽を求めての殺しなら、もっと激しい結果が待っていたはず。
猟奇殺人の様な死骸になっている様子もないとみれば、言葉通りなのだろうと理解はしていく。
こちらを見つめる視線に気付くと、その視線に耐えられなくてゆっくりと視線を下へと落とす。

「ねぇ、ザムくん…私には、そんなに悪い人には見えないよ…?」

それでも駄目かな?と、懇願するように隼のほうを見やる。

ルーキ > 「……それは、災難だったな。大丈夫か?」

渋い顔をする。
それでもじいっ、と見つめられれば、苦笑いと共にひらひら手を振って。

「……いつもなら、暫く寝てもらうだけで止めるんだがな。悪いことをした」

隼に対し懇願する口調、それを聞けば緩くかぶりを振って…。

「いや、彼が乗せないと言っている以上、無理は言えないさ。……ま、仕方ないが、歩いて帰ることにするよ」

すまないな、と柔らかな声。

リーゼロッテ > 「…一応、大丈夫でした」

困った様に微笑みながら誤魔化すも、怖い思い出には変わりなく。
彼女も殺したくて殺したというわけでもなさそうだと、言葉と音から感じ取れば、張り詰めていた緊張の気配がゆっくりと溶けていった。

「…でも」

だからといって、夜道を女の一人歩きで残していくのは不安でいっぱいになる。
自分なら恐ろしく思えることで、悲しげに潤んだ瞳を伏せるも…一間置いてから、先程よりは締りのあるふくれっ面で隼をベチッと叩いた。

「神様の鳥なら、女の子に怖い思いさせちゃ名折れじゃないのっ!? 私の事試すとか言って…そんな分からず屋さんになんて試されたくないもんっ!」

いつも平然とした態度も偶にムカッと来るし、今日だって私が寒いから海渡るのヤダっていったら呆れるし、と…日頃の鬱憤なのやら、ぐわっとまくし立てるように不満を吐き出しながら、駄々をこねる子供のように隼を叩いている。
叩かれている方は全く痛くなさそうだが、うっすらと涙目の少女を一瞥した後、彼女にも聞こえる思念で一言だけ答えた。
乗れと。

ルーキ > 「……そうか」

表情から何かを感じ取ったものの、追及するのも酷と気づく。
この話は一旦そこで取り止めにして、それから彼女が何をするかと思えば―――

「――――……そ、こまで言わずとも……」

まくし立てるような口ぶりに、見ている此方が止めたくなる始末。
困ったような顔をしていれば隼から了承が聞こえた。

「………本当にいいのか?」

そう確認の為に問いかけつつ、ここまでしてくれた気概を無碍にする心算にもなれない。

リーゼロッテ > 「いいのっ! いつもいつも私より長生きしてるからって子供扱いして…それだけじゃないもん、前だって――」

怒った猫のように総身の毛が逆立ちそうな勢いで彼女に答えるも、童顔の顔に貫禄がないせいで、全く締りがないだろう。
それからまた、ああだこうだと隼に文句をつけながら叩き続けていた。
それも了承の声にピタリと止まり、視線が彼女と隼の間を行き来し、呆気にとられた顔が見えるはず。

『このままじゃ寝る時も文句を聞かされる』

こうなれば乗せたほうがマシらしい。
自分を理由にされた少女の方は一層に不機嫌顔になり、数回ほど叩くも…落ち着いたようで、ぴとっと寄りかかり、ありがとうを静かにつぶやいた。

「ふふっ…じゃあ行きましょうか?」

ちょっとだけ涙の跡のある頬。
そんな顔を見せると、ひょいっと隼の背へと乗る。
鞍状の座面に腰を下ろすと、彼女の方へと手を伸ばす。
握り返せば、その手を引いて後へと引き上げて乗せるだろう。

ルーキ > 「……すまない。恩に着るよ」

大変そうだな、という顔を隼に向けながら。しかし少女の彼に対する対応が何とも微笑ましい。

「あぁ。……それじゃ、お邪魔しよう」

言うと伸ばされた手を握り、引上げてもらう。
少女のすぐ後ろに腰を下ろす形となるだろうか。今まで味わったことのない感覚に、少し呆気に取られていた。

リーゼロッテ > 彼女にも届くように、自分の為だと無愛想な返事をする隼に、再び溢れる溜息。

「どうぞです!」

満面の笑みで手を引けば、彼女を隼の上へ導いていく。
羽の重なった体を覆う鞍の感触は、馬とはまた違った感覚だろう。
あとは何やら取っ手状の握りがついていたりもした。

「ぁ、このロープ、ベルトとかにかけてくださいね?」

鞍から伸びた縄を彼女へと手渡すと、自身もピストルベルトの部分へとキュッと括りつける。
縄を確認し終えれば、いいよと合図を送った。
翼を広げ、空気を叩くと二人分の体重を物ともせず空に舞い上がり、風の冷たくなる上空へ。
王都へ向けて翼を羽ばたかせて加速すると、翼を綺麗に広げて滑空していく。
その速度は馬でも感じることのない、プロペラ機程度のかなりの速度だ。
彼女を目的の王都まで一気に送って行くのも、ものの10分少々で終わってしまうだろう。
希望の場所に彼女を下ろせば、少女は再び九頭竜山脈の集落へと、夜空へ立っていく。

ルーキ > 「ふむ。……まぁ、落ちたら元も子もないからな」

ありがとう、と縄を受け取り、腰辺りに取り付ける。
二人分の重さをものともせず飛び上がる隼の乗り心地は、今まで経験したこともないもので。
王都につくまでの間は中々新鮮なひと時だったろうか。

そして王都まで送ってもらえたならば礼を言い、九頭竜山脈へと飛び去るその姿を見送った―――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からルーキさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からリーゼロッテさんが去りました。