2015/11/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にエレミヤさんが現れました。
■エレミヤ > 行く先を照らすようにして明かりの灯る杖を頼りに洞窟の中を進む姿がひとつ。
時折聞こえる硬質なものが擦れるような、ぶつかり合うような音に小さく身を震わせながらも、少女の足並みは存外しっかりしていた。
ギルドに併設された酒場で聞いた噂話――何やらメグメールにある洞窟の中に希少なマジックアイテムがあるらしい。と、言ったもの。
嘘か誠か、兎角、少女の好奇心と向上心がこの場に至る原動力になったのだ。が、
「……か、帰りたいよう…!」
既に洞窟から出たくなっていた。
周囲にそれらしい小路もなければ突き当りもない。どこまで行けば良いのだろう。
■エレミヤ > 最近では比較的に魔術の扱いも安定してきてはいるものの、咄嗟の時に弱い事も自覚している。
それの克服も兼ねて洞窟に一人やってきたと言うのに、入って小一時間でギブアップ宣言である。
然し、泣き言を言いながらも少女は洞窟の奥へ、奥へと進んで行く。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にフランネルさんが現れました。
■フランネル > そんな彼女の行く手に、緑に淡く輝くふたつの何かが現れたのはその時だった。
そのふたつの光は、ぎしり、きしり、と、心持ちによっては不快にも聞こえる軋みを暗い洞窟の中に響かせながら、
少しずつ、少しずつ、魔法使いの少女へと近づいていく。
近づくにつれ、その金属的な軋みには粘着質な歩みのような音が混じり、やがて、彼女の魔法の明かりが届く範囲に、真っ黒い人型の何かが踏み込んできた。
と、そこで、そのふたつの緑は光を放つ瞳であることが彼女にもわかるかもしれない。
■エレミヤ > 恐る恐ると言った態で進んでいれば、ふと進行方向になにやらぼんやりとした輝きが見える。
やっと宝への切っ掛けが、と喜んだのも束の間、耳が捉えた異音。軋むような音は岩に囲まれたこの場所では自然には鳴りようのない種類の物だ。
そして両の眼が捉えたのは黒塗りの輪郭。
血の気が引いて、少女の顔色が一瞬で悪くなる。
近付いてくるそれに身体を強張らせ、ただただ杖をきつく握り締め――黒いそれが光りの範囲へと入った瞬間、恐怖の臨界点が突破した。
「―――…、…っ、…っ!!?!」
声にならない悲鳴を上げてぶんぶんと勢いよく杖を振り回した。
すでにボロ泣きである。
相手の正体を探ろうと言う気持ちすらへし折れていた。
■フランネル > フランネルには、別に他意はなかった。
暗い洞窟をうろうろしていた時に見えた魔法の明かりに、なんとなく歩み寄っただけだのつもりだった。
ご挨拶でも、と、思ったその時、魔法の灯りが宿る杖が、よく冷えた洞窟の空気を切るように、がむしゃらに何度も振り下ろされる。
「あん、やん、ちょっと待ってですよ」
反射的に、自分も持っていた杖を前に構えてそれを受け止めると、硬い音をさせてふたつの杖が何度もぶつかり合った。
必死の打撃は思ったよりも重く、それを支えるために足を踏みかえると、被っていたフードがめくれて、ふわりと亜麻色の髪がこぼれる。
「大丈夫、大丈夫ですってば。人間ですから。ちょっと目が光っちゃってますけど。ね?」
恐慌状態の彼女の攻撃を受け、止めるのを繰り返しながら、フランネルは困ったような笑顔を浮かべ、いつもよりは必死に語りかけた。
■エレミヤ > 狙いも定めずに滅茶苦茶に振りたくる杖。その動きからもあっちいってと言わんばかりの少女の気持ちがありありと出ていた。
然し、杖を握る手に伝わるぶつかり合う振動だとか、恐慌状態の最中に入って来る声に、一瞬頭が冷える。
そして、明かりに翻る亜麻色の髪。
「――――…、……!?!!」
重ねて続けられる言葉に、漸く杖を振り回す手が止まって数秒、再び声なき悲鳴が。
人様に向けて杖を振り回してしまったと言う、重い事実が少女を襲う――!
「ごっ…ごめんなさいいいいいいっ!!?!!」
■フランネル > 「ふふ、大丈夫大丈夫。わたしも、自分の目のこと忘れてたですよ。こちらこそごめんなさいです」
困ったような笑顔で言いながら杖を下ろすと、洞窟の岩肌と金属の杖が擦れて、先ほどから聞こえていた軋むような音がまた鳴った。
洞窟の中の何かが靴裏に残っているのか、歩み寄ると何かぺたぺたと粘っこい音がする。
いまだ緑に淡く光る瞳で彼女を眺めながら、両手をゆっくりと伸ばして、フランネルは彼女の頭を慰めるように撫でつつ、かすかに甘い香りのする自分の胸元へ抱き寄せようと試みる。
「はい、はい。落ち着いてー、です。全然大丈夫ですからねー……」
■エレミヤ > 先程までとは全く別の理由に涙が溢れ出てくる。また、やってしまった。やってしまった、では済まされない事案多々、ではあるのだが。
然し、相手から返されるのは慈悲に満ちた台詞。少女の目頭がまた熱くなる。
よくよく聞いてみれば、音の正体は異音なのではなく、全て人の為す音。それも、ちゃんと確認すれば勘違いなど起こしそうにもないものだ。
「ほ、ほんとうに…っ、申し開きようもなく―――」
頭を撫でられながらもぐすぐすと情けなく鼻を啜りながら謝罪を告げていれば、不意、寄せられる力。
それに流される儘上肢が傾げば、ぽふり、と彼女の胸元へと納まった。
ゆったりとした声と微かに鼻孔を擽る甘い香りに、少しずつぐずっていた少女は落ち着きを取り戻し始め。
■フランネル > 「よーしよし。怖くないですよー……」
泣かせてしまった女の子を抱きよせ、ゆるゆると髪を撫でながら、いたわるような声でゆっくりと囁く。
両手でその細い背中を優しく抱いて、幼子にするようにぽんぽんと軽く叩きつつ、彼女が落ち着いて来た気配を感じると、一度その手は止めて、もう一度腕の中の少女を眺める。
華奢だが温かく柔らかい体は、強く抱きしめてしまうと折れそうなほどで。
明るいところで見ればもっと鮮やかであろう赤色の髪は、いつまでも撫でていたくなる柔らかさで。
涙に濡れて潤んだ瞳は丸く、童顔の印象を強めていたが、それが何よりも――。
やん、可愛いです。こんな洞窟で思わぬ素敵な出会いしちゃいました。
んふ、と、小さく笑うと、もう一度ぽんぽんと彼女の背を軽く叩いてから、ゆるくとは言え抱きしめた腕を放さないまま、少女を見つめてフランネルは訊ねる。
「わたし、錬金術師でフランネルと申しますですよ。今日はちょっと素材採掘に来たです。
あなたはどうされたんです? 冒険に来て、仲間とはぐれちゃったんですか?」
■エレミヤ > 心地良い相手のあやしに昂ぶりは落ち着き、すん、と最後に一度鼻を啜った所で涙の勢いも如何やら止まったらしい。
冷静さを取り戻し始めれば、いらぬ事を考え始めてしまうのが人の性。
収めた儘の頭部に感じる柔らかさ。女性の纏うローブで一見しては分からなかったけれど、とても、豊かである。うらやましい。
そんな事をぼんやり考えていれば掛けられた声にひゃい、と裏返った妙な返事を思わずしてしまう。ビクッと身を跳ねさせながら顔を上げ。
「え、エレミヤと言います。今日は一人で来て…あの、噂で、珍しいマジックアイテムがあるって聞いて…その、度胸試しと言いますか…なんと言いますか…。」
答える声は尻すぼみになった。
思い出すのは先程の自分の取り乱し様。度胸試しなど微塵も出来ていないのである。