2015/11/11 のログ
エレミヤ > 「…ううっ…はいぃ…っ!」

グラフィーナの言葉に、張りつめていた物が緩んでいく。涙声になりながら、ぐすぐすと鼻を啜ってはありがたそうに彼女の出してくれるカップを受け取った。温かい。ぬくもりである。
そうして続けられた問い掛けに、ハーブティーを一口飲んで一息。小さく頷き、

「モンスターの襲撃に遭って…いえあの、皆は絶対平気なんです。あの、その…それに驚いた私が…トラップを踏んじゃって…岩が…こう……ですね…転がってきて…逃げてる内に…いつの間にか………。」

モンスターの襲撃と言っても相手はスライムだったのだ。問題はいきなり現れた魔物に驚いてドジを踏んだ事だ。少女の声は説明をする内に段々と小さくなっていく。とても恥ずかしい。穴があったら入りたい。そんな気持ちでちびりちびりと飲んで、林檎を齧って。
然し、ゆっくりしている余裕は無いらしい。慌てた様子でハーブティーを呷り――

「っ!?けほっ…けふっ…ぅ、うう…ッ」

慌てすぎて気管に入る間抜けっぷりを披露した。
少しずつ、周囲に増えていく気配があるとも気付かずに。

グラフィーナ > 微笑ましい様子に女の口元にも、笑みが浮かぶ。手を伸ばして、わしわし、っと少し乱暴に少女の髪をかき混ぜて

「なるほどねぇ…エレミヤつったな。さっきもちょっと思ったんだが…。まずは、落ち着くことだな。慌てたら、半分の力も出せやしねぇぜ?」

あんまりといえばあんまりな状況に、思わず笑ってしまいながら、慰めるように大きな掌で頭を撫で、がんばれよ、と励まして。

「ほら、まずは、深呼吸だ。大丈夫、エレミヤは今、一人じゃねぇだろ?」

だから、まずは深呼吸な、と立ち上がり、荷物を取って、その背中を撫でてやりながら、腰からナイフを一振り、さやごと抜いて手渡して。

「このナイフをやるよ。怖いのが出たら、ここに指を当てながら『ブレイク』って叫べば、光るから。目くらましくらいには使えるだろ」

ちなみに、私お手製なんだぜ?なんておどけるようににやりと笑って見せて、手渡すのは柄にびっしりと銀の装飾が施された探検。魔術師であれば込められた魔力にも気がつくかも知れない。

「来たぜ。まぁ、大船に乗った気持ちで、ゆっくり帰ろうぜ」

(通路の向こうから、ぎぃぎぃ、と聞こえてきた獣の声に、さ、いこうぜ、とエレミヤの背中を押して促して…ゆっくりとこの場から立ち去ろうと。)

エレミヤ > 頭を荒っぽく撫でる手に思わず目を閉じてしまったものの、その荒っぽさが何処か心地良い。
擽ったそうにはにかみながらも受け入れ――

「う、うう…。…はい、頑張って落ち着きます。」

瞬間、叱られた犬猫の様にくしゃりと表情が渋みを帯びた。
先ずは落ち着きなさい。両親にも、兄姉にも口酸っぱく言われている言葉だ。納得した様に、言葉をゆっくりと飲み込むように頭が縦に揺れる。それから、彼女の言葉にぱちりと瞳が瞬く。

「―――…はいっ!」

満面に笑みを浮かべて強く頷いた。一人ではない。それが今、少女には何よりも心強い支えになるのは間違いないだろう。グラフィーナに手渡されるナイフを受け取る。
施された銀装飾は素人目にも美しい。それに加えて、そこから掌に滲む様な魔力の波長に小さく感嘆の吐息が少女の唇から零れた。聞こえてくる獣の声だって、今は怖くない。

「グラフィーナさんは魔法使いみたいですね…!」

跳ねた声が、少女の中に怯えや怖れが無いことを彼女へと伝えるだろうか。
杖に嵌る宝石が先とは異なる色に淡く光り、その粒子が二人を守るように膜を作った。
温かな手に促される儘歩き出し、洞窟を抜けて行こう――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」からエレミヤさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」からグラフィーナさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にシドさんが現れました。
シド > ――物みな夢にと寝静まる時刻。昼間の熱も夜露と宿る葉を幾度も踏みしめていく。
前後に開いた足、軸足と残した後足は無残に踏みつけられた草花から土が覗いている。
たとえ空気が鉄であろうと、かまわず両断せんばかりの風圧を上げて剣を振るっていた。
幾度も袈裟懸けに振り落とす度に汗張り付く服が鬱陶しいとばかり、冷たい夜気に晒した肌には幾度も汗珠が浮かんでいる。
髪先にも宿ること雫を払う間も惜しみて流れる様に袈裟懸けから払い下ろし、突きを繰り返す剣先が月光を煌き返していく。

夜分遅く人も寄り付かぬ森中で、重ねあう梢から眩いばかりの月が覗く許で素振りをする
その青年の顔は剣を振るう度に眉間に皺を寄せ、普段取り繕う唇は獣めいて歯が覗かれ。
隙間から息を斬り出しつつ、また虚空に一撃を呉ていく。

シド > 息が乱れる。肺腑が酸素を欲して忙しなく心臓を動機させるに音を立てて一度大きく吐いて気息を整える。
常ならば晩秋の夜風に寒さを訴える肌も、今は春風の如き涼風の感じるほど昂ぶっている。
額に浮かぶ汗珠は3つ、風に弄ばれ揺れる髪は7本、体に纏わる細微なものまで知覚するまで気は充実している。
久しき高揚感と満足感に我知らず口角を吊り上げながら、手合いに飢えた虹彩の葡萄色は獲物を探す。
獲物――といえど生物ではない。辺りから己を目隠しするように生え渡る木立達だ。

その一つ、取り分け大きな大木の前を捉えれば一足一刀の距離まで詰めていく。
振り落とせば剣芯がその幹に当たりて、弾かれるのオチ。
そう、分かっていても止められない。
盛り上がる二の腕に血筋が浮かび上がり、鍛え上げられた背筋を膨らませて剣を掲げ――

息を大きく整えていく。意識を集中させる。斬れる、今なら斬れる……そう願うように瞼を閉ざせば剣を奮った。

シド > 静謐な森に音が轟音が鳴る。倒木の音ではなく衝撃に大樹が揺れる葉掠りの。
奮った剣先は大樹の半ばまで食い込んでも、斬り抜けるに足りなかった。
その反動が全て返る柄持つ掌を、ゆっくりと離していく。痛みに歪む顔の儘に揉み解して。

「やはり自分の腕ではこれが限界か……剣の道は。」

忌みしげに倒れぬ大樹に嘯いてから体に纏う汗を白布で清めていく。滾る肌も、気の充実も消え失せて。
久しく人気ない場所で訓練赴く己に、帰るを促すように涼風が背を叩く。
脱いだ衣服を来たのならば逆らうこともなく、その足取りは帰路について。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からシドさんが去りました。