2023/07/23 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 王都から離れる事、数刻。近隣の村落に通じる街道。
普段から人の往来が多い道を遮るように柵が設けられ、
脇には幾つかの天幕が建てられて、簡易的な陣営の趣きを為していた。
街路に立ち、通行する馬車や通行人を差し止め、積み荷や身分の検査を行なっているのは王都の兵士達。
曰く、最近、山賊や盗賊の類が出没するために検問を敷いているという名目であるが、
実際は隊商からは通行税をせしめ、見目の良い女がいれば取り調べの名を借りて、
天幕でしっぽりとお楽しみという兵士達の憂さ晴らしと私腹を肥やすための手段に他ならなかった。

「――――よし。次の奴、こっちに来い。」

でっぷりと肥った商人から受け取った賄賂を懐に入れて、隊商の馬車を通せば、
列をなしている次の順番待ちの通行人に近寄るように告げるのは一人の兵士。
何よりも厄介なのは、彼らが紛れもない王国兵士であり、市井の民が逆らえない事だ。
そして、その事を理解している兵士達は、国の為ではなく利己的に民を食い物にしている最低最悪な屑揃いであった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にラーンさんが現れました。
ラーン > ごと。 ごと。 ごと。

規則正しい荷馬車の車輪の軋む音が響く。
うねるように伸びる街道の馬車を牽くのは、鷲の上半身に馬の身体を持つ、いわゆるヒポグリフ。
時折、きゅるる、と何かを伺うように鳴く声が響くが、人慣れしているようだ。
荷馬車の御者台で、フードを深めに被った娘が「だいじょぶ」と親し気に声をかけている。

「──……王都で仕入れを終えたはいいけど… まいったなあ…」

ヒポグリフに囁きかけながら、軽く手綱を揺らした。
どうやら検問らしきことを行っているようだ。
王都での荷の仕入れが思いのほかうまくいき、荷馬車はずっしりと重い。
今のところ、後ろ暗いところはないが……この国ではそれもなかなかに通用しないところがある。
余分な袖の下を包む余裕はあるだろうか…などと、思考の隅でぼんやりと考えていた。
緩やかに馬車の速度を止め、順列に並ぶ。
荷や身分の検めを行っている兵士たちの動きをなんとなしに見ながら、穏便に済めばいい──と小さく吐息をついた。

ジェイク > 商人からの賄賂を懐に収めて通した後、次いで列に並んだのはフードを被った女。
通常の馬ではなくヒポグリフの曳く馬車に乗った女の姿を見遣れば、口端を緩め。

「よし、止まれ。馬車から降りろ。
 行商人か? 随分と稼いでいるようだが、名前と行き先は?」

魔獣に曳かせる馬車がたんまりと荷を積んでいる事を横目に見ながら皮算用をする。
儲けているらしい商人から賄賂として通行税を徴収するのも悪くはないが、
幸いな事に彼女の前に通した商人のお陰で皆で分け合っても、数時間遊ぶ金は確保している。
金銭欲が満たされているならば、当然、他の欲望を満たそうと考えるのがヒトと云うもので。

「フードを取って顔を見せろ。最近は不審な輩も多いからな」

そんな尤もらしい大義名分を口にしながら、女の貌を検分しようと命令を下す。

ラーン >  大人しく手綱の命じるままに止まる魔獣に、軽く羽毛と毛皮の境となる首元ああたりを宥めるようにポンポン叩き。
 言われるままに、一度御者台から降り立った。

「行商人です。こちらが、通称許可証──ラーン・ルシェと申します。
 稼いでいるというよりは、これは仕入れ荷です。」

 務めて穏やかな口調でそう口にしながら、自身のこれからの商売ルート、ゾス村を含めたいくつかの町村の名を口にする。
 そこで、地産では賄いきれない生活雑貨を商いに行くのだ、と。
 深い色のフードを首から下ろせば、はらりと黒い長い髪が溢れ落ち、作り物めいた白い造作が露となるか。

「ご覧の通り……一介の、行商にございます」

 紅い瞳に少し困った色合いを浮かべ、淡く口唇に浮かべる愛想笑い。
 普通ならば、仕入れ値を8割にする程度には通じるが、さて。

ジェイク > 差し出された通行証へと目を通して、その内容に不備がない事を確認した後、
積み荷の方へと視線をやりながた、行き先を告げる声に耳を傾ける。
彼女の用意した身分証、ならびに商売ルートに不審な点は一切認められず、
何かの罪を犯している証拠は微塵にも見付からない事だろう。
だが、不運な事に、そのフードが落とされて美貌が露わにされたならば、話は別で。

「成る程、成る程。ラーン、一介の行商人、ね。通行証は本物のようだが、……。
 ――――だが、駄目だな。最近、黒髪の魔族のスパイが暗躍しているという話があってなぁ。
 少しばかり、奥の方で身体検査をさせてもらおうか?」

仕入れ値を二割もマケさせるのに足る美貌は、兵士達の欲情をそそるのに一躍買う。
屈強な兵士数人が、顔を見合わせると口端をニヤつかせながら、逃げ道を塞ぐように近寄り。
ヒポグリフと彼女を引き剥がさんと試みて、奥の天幕へと連れ込もうとする。
分厚い天幕の内側に連れ込まれたならば、其処で行なわれるのは正規の取り調べではなく、
その容貌に欲情した下種な兵士達による乱暴狼藉である事は間違いなく――――。

ラーン > 少なくとも、商売上の手続きには後ろ暗いどころか影一つ落としていない。
半魔族として、被されがちな濡れ衣を跳ねのける唯一の手段は、公明正大。
税金だって誤魔化したことはない。
──とはいえ、今回の場合は運が悪かった、それに尽きるのだろう。
愛想笑いに、ねっとりとした視線が目の前の兵士からだけでなく一段熱を帯びたようで。
ぞわり、と小さく躰に寒気のような震えが生じた。

「………黒髪の魔族、なんて…あやふやな情報で動かれるのですか?
 大変ですね」

ちらりと視線を愛馬たる魔獣へと向けるも、その道筋を遮る屈強な男たち。
本来なら、荷を捨てる覚悟で愛馬で遁走がいつもの手段ではあるのだが──今回はそれは叶うまい。
まるで圧のように感じる兵士たちから、たじろぐように距離をとろうとすれば、自然と天幕へと追い詰められることになる。
そのやり口の自然さ、手慣れた動きに半ば唖然とした。
するしかなかった。
検めの順番を待つ他の者たちからも、気の毒気な視線を感じた気がするのは被害妄想か。
追い詰められるままに、黒髪の娘は天幕へと──踏み込むことになる。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からラーンさんが去りました。