2023/07/17 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にラーンさんが現れました。
ラーン > ごと。 ごと。 ごと。

規則正しい荷馬車の車輪の軋む音が響く。
森林をうねるように伸びる街道の馬車を牽くのは、鷲の上半身に馬の身体を持つ、いわゆるヒポグリフ。
時折、きゅるる、と何かを伺うように鳴く声が響くが、人慣れしているようだ。
荷馬車の御者台で、フードを深めに被った娘が「だいじょぶ」と親し気に声をかけている。

「──……王都まであと少し…。 そしたら、しばらく留まってゆっくりしよ、ね?」

ヒポグリフに歌うように囁きかけながら、軽く手綱を揺らした。
陽射しは強く、しかし森林のせいか木陰が多く、吹き抜ける風が心地いい。
荷の仕入れが思いのほかうまくいき、荷馬車はずっしりと重い。
そうなると盗賊が気になるところだが、今のところ旅路は順調。
そろそろ商売も手広くなりつつあり、護衛に冒険者を雇うことも考えるかと、思考の隅でぼんやりと考えていた。

「久しぶりだし、品揃えも人の顔も、色々替わってるかな…」

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にケストレルさんが現れました。
ケストレル > 荷馬車が進む先に、人影が現れる
長身に冒険者然とした装備を纏った男は、背後からの物音に気付くと振り返った
額にも首筋にも珠の様な汗を浮かばせ、心なしか表情は疲れ気味
そんな男が荷馬車を視認すれば、ほわっ、と表情が和らいで

「こいつぁツイてる! おーい!ちょいと、王都に行くんなら乗っけてってくれねえかい」

御者台へ向けて軽く手を振りながら声を掛けつつ足を止めて
そのまま荷馬車が追い付くまでその場で待ってみる
依頼帰りに乗合馬車も捕まらず、とぼとぼ徒歩で王都まで帰還しようとしていたと察せられることだろう

ラーン > リズミカルに響く馬車の振動。
時折、風によってさざめく風音を鳴らす森林から響く、小鳥や獣の声音。
ある種単調だが心休まるホワイトノイズの中、別種の声が耳に届いた。
僅かに首を傾げれば、馬車を牽くヒポグリフ──カルーエンが「きゅい」と鳴いて、どうする?との視線。
前方で手を振る姿に、さてどうするかと思案していたところに、さすがにそのまま轢くわけにもいかず、手綱を軽く引くようにして速度を緩めた。

「おいくらで?」

胸の前で、人差し指と親指で円を作って見せた。
にっこりと、それなりに整った顔立ちが深めのフードの隙間から垣間見えるだろうか。
表情はにこやかだが、目は笑ってない。
世の中、そんなに甘くない。というやつ。

ケストレル > 「そう来るよな。 まあこの日射しの下を歩いて帰るよりなんぼかマシか。
 丁度依頼帰りでね、その報酬の一割ってとこでどうだろう、確か―――」

断られればそれまで、と道の端に寄って待っていた男は荷馬車が速度を緩めた事にほっと胸を撫で下ろす
しかし、御者が乗車賃を訊ねれば、ははぁ、と苦笑めいた乾いた笑いと共に溜息を口から漏らし
依頼の採収品でも納めているのだろう、腰に提げていた革袋を一瞥すると依頼の報酬金が幾らだったかを記憶を探り
思い出した金額の一割分を、御者へと告げる

「ついでに道中の護衛なんかも請け負うぜ、生ものを運んでるなら冷却を掛けてやっても良い。
 荷が増えるだけよりかは、よっぽどお得だと思うんだがどうだい」

自身の腕の程と魔術も扱えることを売り込みながら、パタパタと手で顔を仰ぐ
改めて見れば馬車を牽くのはヒポグリフか、と物珍し気に視線を向けて
猛禽めいた自分の顔立ちを自覚してる身として、勝手に親近感を抱いた

ラーン > 「がめついと思うだろうけど、こっちとしてもさらに重くなる荷でうちの子と車軸に負担かけたくないの。
音聞いて、わかるでしょ?」

 ちょいと親指で示す自身の背後。
 魔獣に牽かせているとはいえ、しっかりと重量感のある馬車の轍音は、ここに至るまでに聞こえているだろう。
 小さく肩を竦めると、少し考えて後方へと顎をしゃくるような仕草。
 荷馬車に乗れという仕草だろう。
 苦笑するようにうっすらと笑みを浮かべ、僅かに遠い目になった。

「この子のおやつ代だと思って頂戴。優しいいい子なんだけど、唯一食い意地が弱点なの。
 お仕事は結構。
 お店と契約を通さない商売なんて、危険極まりないもの。
 それで痛い目を見たことなんて、一度や二度じゃないから」

 口約束と、成り行きは商売の世界では危険。
 ちゃんと契約を結ぶ、それがモットーだ。
 取り回しのしやすい小さめの荷馬車だが、それでも荷物が重なっている、それにどう乗るかは彼次第。
 フード越しに、に、と歯を見せるような悪戯めいた笑みを投げた。

ケストレル > 「そりゃ御尤も。
 じゃあもし護衛が入用な時はギルドに依頼出してくれりゃ、間が合えば安値で請け負うぜ。
 ソイツのおやつ代分を浮かせられる程度には、な」

ひらひらと手を振って荷馬車の後方へ回る
積まれた荷物にたじろぐ様に肩を竦めたが、手狭なのと暑いのを秤に掛けて
動きの邪魔になりそうな胸当てや腕甲を外すと、荷物の隙間に収まる様に乗り込んだ

「どこから来たのか知らないけども、魔獣連れとはいえ一人で荷運びしてるだけあってしっかりしてらぁ。
 ……ところで、乗ってから聞くのもなんだけど、御者台の隣とかそういうのは無理?」

木箱と木箱の間に身体を折りたたむ様にみっしりと納まって
分かっちゃ居たけど思ったよりも狭かった、と自分の体躯を呪う
上背に比べ目方は軽い方なので装備分を込みにしても車軸にもヒポグリフにも負担は少ない方だろう
装備だけ乗せれば良かったか、と反省するも後の祭り

ラーン > 「それはどうも。
 でも、お仕事は相場でお願い。
 ちゃんとお仕事してくれる人相手からは、依頼料を値切らないことにしてるの。
 きっちり、仕事分は働いていただきたいから。動き惜しみをしてもらいたくないからね 」

 多少の経費を出し惜しみして、寝返られるのも裏切られるのも真っ平御免。
 軽やかにそう告げながら、男が荷室へと乗り込んだのを確認して、軽く手綱を撓らせた。
 再び、ごとごとと、リズミカルに荷馬車が揺れ始める。
 
「まあ、色んなところ……行ったり来たり?
 多少は性格悪いくらいじゃないと、この近辺ではあっという間にカモられるものねえ。

 ──……ん-。 却下?
 名前も知らない暴力稼ぎができる男を、丸腰状態の自分の隣に載せられるほど純粋無垢じゃないのよ」

 くすくすと小さく笑いながら、軽やかに悪意なく言い放つ。
 暴力稼ぎ、とは露悪的に表現つつも、護衛ができるほどの腕だとすれば、大きく間違ってはいないだろう。
 荷馬車が様々な荷物でひしめいているのはその荷を買い付けた自分自身が一番よくわかっていることで。
 無慈悲に却下しつつも、道歩きを優秀なヒポグリフの歩みに任せ、振り返る。
 少し考えて、自身の真後ろに積まれた濃茶の樫の木箱を指さし。

「その、並んだ平べったい箱。重ねて、上に座るといいわ。
 中は油紙に包まれた布地だから、多少重量がかかっても平気だから。
 風が通るし、そこそこ遠くまで見えて快適でしょ。
 あ、でも水とか零したら、損害賠償請求するからね?」

ケストレル > 「そういう事なら。
 とはいえギルドによっちゃ中抜きが酷かったりするから、そこは見極めてくれよ?
 ――まあ、釈迦に説法かもしれんが」

仕事人として契約を重んじる姿勢は感銘を受けなくもない
そうするだけのプライドがあるのだろう、と勝手に推察してしみじみと頷いた
多少は見習いたいものだし、見習って貰いたいと思う相手がちょっと思い出せるだけでもわんさか居た
荷馬車が動き出し、王都に着くまでに身体が固まってしまわなきゃ良いが、と案じ始め

「ほーん、仕事とはいえあっちこっち行けりゃ見聞も広まるだろうし。
 年若そうに見えたけど、存外苦労してんだねえ……

 ――あ、やっぱり? デスヨネー
 拾って貰えただけ御の字御の字……」

露悪的な表現に対しても気分を害した様子も無く
然もありなんといった様子で膝を抱える。彼女の言い分も尤もだ
一帯の危険度は冒険者たる自分もよく分かってるし、女の一人旅ともなればそれは数段は跳ね上がる
用心するに越した事は無いもんな、と理解を示す。……が、やっぱり窮屈で仕方ない

「――ぉん? ええと、平べったいってぇと、これ?
 おお、そりゃ助かる。無事に王都に着いたところで熨斗イカにでもなったらどうしようかと。
 水は生憎さっきまでに飲み切っちまってさ、早いとこ帰って一杯やりてえと思ってたとこでさ。
 あ、名乗り遅れたが俺はケストレル、王都で冒険者と……まあ家の都合で騎士もやってる。 ――お姉さんは?」

ラーン > 「わたしは基本的に、仲介料以外、護衛なら現地現地で到着ごとに支給する方針だからヒドイ中抜きはされていないと思うけど……。
 まあ、ギルドもある程度保険かけてないと、冒険者に裏切られたりするっていうから、ま、客層によっては仕方ないこともあるかなあって思う。
 理不尽と思うかもだけどね。
 その辺は、がっつり成長して店が手放したくないと思うくらいの一流冒険者になるってことで」

 ね? と気安く片目をつぶる。
 商売商売といいつつも、各国各業種やり方は様々。
 自分がやや守銭奴に傾いているのは自覚しているので、簡単に非難もできない。
 
「──……まー。 子供の頃から隊商にいたから。
 金勘定と契約はキッチリが基本……とはいえ、その分教養に欠ける自覚はあるワケ。

 悪く思わないでねー
 女一人で荷馬車商売って、気楽な反面、物騒にも事欠かないのよ」

 ころころ気楽に笑いながら、軽く、手綱を揺らす。
 後ろで荷物の上げ下げをする間は、少しだけヒポグリフの歩みを緩やかに。
 一応、お気遣いをしたつもり。

「そ。 それー。
 ただし、位置が高くなるとその分揺れもひどくなるから、転がり落ちないようにね。
 あー。王都ももうじきだし、わたしもお水は飲み切っちゃったな。
 あとは果実酒を少し仕入れてあるけど、商品だしね。
 
 …………喉、乾いてきちゃった。
 ね、カルーエン、飛ばしていい?」

 荷物を振り仰ぐようにして、紅い瞳に悪戯な笑みを浮かべた。
 カルーエンは推定ヒポグリフの名前か。
 バランスが悪くなるといったそばから、応えも聞かず魔獣を操る手綱を撓らせ歩みを速める。

「わたしは、ラーン。 見ての通り、あちこち回って、雑貨の行商の仕事してる!
 ちなみに、そこ、お姉さんじゃなくてお嬢さんのほうが、若い女の子には好感度高いわよ!」

 朗らかに笑いながら、荷馬車を加速させた。 
 落ちるか、落ちないか、慌てるか冷静か。 怒るか笑うか。
 そんな、商人なりの、ちょっぴり品定め。

ケストレル > 「まあギルドも商売だからしゃーねーとは思うけどもさ。
 依頼主も冒険者も微妙に損してギルドがホクホク顔してんのもなんか腑に落ちねえしよ。
 なもんで、時々はさっきみたいに個人で隊商護衛とか打診してたのさ。
 一流の冒険者ねえ……はてさて、その一流ってのは何を以て称せるのやらだ。
 ……ま、実家が太い奴が成ったとこで道楽以外の何もんでもねえんだけど」

最後だけは車輪の音にかき消される程度の小声で呟き、遠くを見遣って
初対面の行商人相手に言うほどの事ではないけれど、口から漏れてしまったのだから仕方が無い
ヘラヘラと軽薄に笑いながら時折肩や首を鳴らして

「へえ、隊商育ちか。 そんでこうして一人で、ってんならもう根っからの商人なんだな。
 まあ商いは帳尻合わせも仕事の内だろうし、余計な事ぁ避けるに越した事は無いか

 はっは、一度や二度邪険に扱われたくらいで不貞腐れるほど坊ちゃん育ちじゃねえさ。
 物騒なのは仕事柄重々承知してるしな、お互い気にしないでこうや」

言われた通りに木箱を何段か積めば恐る恐る腰を下ろす
多少軋みはしたものの思いの外頑丈な木箱はケストレルの体重くらいは容易に受け止めて
こりゃあ良い、と感嘆した後に荷物を動かす許可と速度を落としてくれたことに礼を述べて

「はいよ、まあ冒険者稼業なんてしてりゃ体幹はそれなりに鍛えられるしな。
 それに荷馬車の揺れくらいで転げてちゃ肩書が廃るってもんよ。
 ……ほぉ、果実酒か。良いねえ。 どうよ、王都に着いたら馬車賃ついでに飯でも……って、うおおっと!」

返事も待たずに加速し始めた荷馬車の揺れに、ケストレルの身体が大きく跳ねる
自分はともかく他の荷が崩れては何を言われたか知れたもんじゃない、と近くの木箱を手で押さえつつ
物言いたげな視線を御者の女へと向けて

「ラーン、ね! そいつぁ御親切にどーも!
 冒険者なんてやってると、見た目通りの年齢じゃない娘なんてざらに居るもんで、
 よっぽど幼く見えない限りお姉さんって呼ぶことにしてんのよ!
 特にフードなんて被られてたら尚の事な! 次から気を付けるよ!」

ケストレル自身二十歳を迎えたばかりでまだまだ少年の名残が多い
一目で年齢不詳の相手は年上と見て掛かるのもその一端だった
さほど年の離れていない相手にお嬢さん呼びする方が顰蹙を買いやすい、と揺れる荷台で舌を噛まない様気を付けながら弁解して

ラーン > 「冒険者に個人で仕事を発注するとか、わたし的には怖くてしたくないわね。
 ちゃんとギルドに噛んでもらって身元保証してもらわないと。

 わたしの基準から言えば、一流の冒険者というのは、そんなギルドが自分では損をしても、手放したくない客を呼べる冒険者……かな。
 だから、わたしみたいな弱小商人にとっては、仕事の経歴や、身元の保証のためにギルドを挟んでもらうのは重要なのよ。
 何年経っても、人を見る目に自信はないから」

 それ以上に、商人としてはまだまだ若輩。
 ちらり、と肩越しに背後を振り向けば、木箱を押さえつつも揺れる馬車に危うげもない様子の冒険者を確認。
 もの言いたげな視線に、悪戯成功と言いたげに、にんまり、意地悪く笑って見せた。
 その間も、手綱は緩めない。
 ヒポグリフの力強い走りに、荷馬車は音を立てて走り続ける。
 森林の濃い緑が瞬く間に景色を後ろへと流していく。

「ご飯、いいわね。それくらいはね!
 もっとも、ヒポグリフを厩に受け入れてくれる剛毅な宿を探すのが先だけど。
 日暮れまでに見つかるかどうか、賭けない? 勝ったほうが、とっておきの果実酒一本!
 上物よ?」

 商売はキッチリと堅実だが、ギャンブルはまた別なのか。
 楽し気に言いながら、慣れたように馬車牽く魔獣を操る。
 街道とはいえ一度馬車が石でも噛めば、一瞬宙を浮くように車輪が弾む。
 上下に大きく揺れながら爆走するのも楽し気に。

「そこは、フード一枚くらい、心の目で見分けて頂戴!
 お婆ちゃんですら、奥さんと呼ばれるよりお嬢さんのほうが、嬉しいものよ?」 

 笑いながら無茶振りをして、ヒポグリフの馬車は街道を駆けていく。
 王都の門が見えるのもあとわずか。
 馬車牽く魔獣の目から見れば、久しぶりに一人旅ではなくなった予期せぬ珍客に、主人が上機嫌に見えたかもしれない。
 規則正しい蹄と馬車の走行音が、街道に響いていたという──

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からラーンさんが去りました。
ケストレル > 「なるほどな、個人の行商からすればリスキーでもあるのか。
 それなら極力親切設計なギルドの窓口を紹介するに留める方が良いかも……。

 ギルドが損しても、か……だいぶハードルが高い様に見える
 何やかんやで代わりは仰山居るからなー……命も軽いし
 ま、だからこそ箔が付くってもんか……なるほどなるほど」

自分でも中堅どころには位置してきたかと思ってはいたものの、彼女の言う一流には遠く及ばないと思えて
となれば今後も精進を続けるほかあるまいと今後の目標を密かに立てる
本業は一応で騎士だけれど、こういうのは当人の気持ちが第一だろう
ガタガタと揺れる荷室は油断すれば重なり合う様に積まれた木箱が倒れて来そうで気が気ではない
それでも流れていく景色は美しく、それらを眺める余裕は多少なりとあって
抜けていく風に目を細めながら、王都への道を進む

「よっしゃ、なら良い店知ってんだ。
 ……とはいえヒポグリフ留められるとこなんてそうそう無いぞ? ああいや、衛兵の屯所ならいけるか……?
 よぉし、その賭け乗った! あとで泣きを見ても知らねえぞ!」

騎士と冒険者、両面生活で王都内の地理はある程度把握済み。というか、ある程度の把握は嫌でも求められる
その知識を総動員すれば負けはしないだろうとニヤリと笑みを浮かべて賭けに乗る
なお、ケストレルは賭け事に極端なほど弱い

「無茶苦茶を言うなぃ! まあ透視ってのは憧れない事も無いが!
 んまあ肝に銘じておくよ! お嬢さん、お嬢さんねえ……」

どうにも自分でも歯が浮く様な心地が抜けず、慣らす様に繰り返し呟く
その間もヒポグリフが牽引する荷馬車は街道を疾駆し、文字通り飛ぶような勢いで王都へと向かって行ったのだった――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からケストレルさんが去りました。