2023/06/16 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアデライードさんが現れました。
■アデライード > それは良く晴れた昼下がり。
神聖都市から王都へ、院長に託されたお使い物をロバの背に括り付け、
その背に横座りに身を預けて、ぽくり、ぽくり、のどかな一人旅のさなかのこと。
「―――――…あら、……?」
前方に何か、黒々と横たわり街道を塞ぐもの。
きょとりと目を見開き、ロバの足を止めさせて、ひらりと降り立つ。
荷を乗せたままのロバをそっと叩き撫でて落ち着かせてから、
慎重に、一歩一歩近づいてゆき―――――
「あの、……もし、もし?
どなたか、おられますか……?」
黒塗りの立派な馬車、というより、馬車の残骸が横倒しになっている。
乗っていたであろう人の姿も、引かされていたはずの馬の姿も見当たらない。
ここで事故を起こし、横転した馬車をその場へ残して、
乗り手は馬にまたがり、どこかへ助けを呼びに行った―――――というのが、
一番有り得る展開、かとは思うが。
もしかして誰か、動けなくなっている怪我人が居たりしたら。
そう思えば、知らぬ振りで通り過ぎることも出来ない。
それに、そもそも、車体が街道をぎりぎりまで塞いでいて、
このままでは通り抜けるのも難しいのでは、という気もしていた。
近づいて、横倒しになった車体に手を掛ける。
半開きになっている扉から中を覗き込もうとしつつ、
「もし、もーし……どなたか、居られませんか……?」
声を投げかけて、影の濃い中へ目を凝らした。
■アデライード > 陽射しの降り注ぐ屋外から、覗き込んだ幌の下。
暗がりに目が慣れてくると、中が無人であることもわかった。
はじめは何の変哲もない、ただのがらんどうに見えたのだけれど、
しばらく観察するうち、天鵞絨の内張が大きく切り裂かれているのに気づく。
思わず弾かれたように顔を上げ、周囲へ視線を巡らせた。
「……賊……?」
初めに考えたのは、それである。
未だ夜が明けないうちに、あるいは早朝にでも、賊に襲われたのだろうか、と。
息をひそめて窺い見るも、周囲に疑わしげな影はない。
だから、襲われたとすれば、数時間も前のことだろうと―――――しかし。
他の可能性だって、もちろん捨てきれない。
言葉の通じない魔物の類だって、居ない、とは言いきれないだろう。
こんなにもさんさんと陽光の降り注ぐ昼日中に、ふ、と、背筋が寒くなるような。
ふるりと身震いをして、車体から一歩離れる。
こうしていても仕方がない、当初の予定通り、王都を目指さなくては。
そう気持ちを切り替えて、置き去りにしたロバが居るはずの方向へ向き直り―――――。
■アデライード > 「え、…… あれ、あ、あ?!」
振り返った先に、佇んでいるはずのロバの姿が無い。
なんで、どうして、いったいどこに―――――焦って辺りを見回せば、
街道脇の草叢に、掻き分けられたような跡を見つけた。
「え、えっ、嘘、うそでしょ……ちょっと、待って、ねぇ、」
慌てて駆け寄り、こちらも草叢を掻き分けて入り込む。
街道から逸れるのは危険だと知ってはいるけれど、ロバを回収しないわけにもゆかず。
日のあるうちにロバを回収し、街道に戻って旅を続けなければ、と、
そちらに意識を持って行かれるうち、馬車の残骸のことは半ば忘れた。
がさがさと草叢を掻き分けて進む音が、次第に遠くなり―――――。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアデライードさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にステイラさんが現れました。
■ステイラ > ルンルンと、鼻歌交じりに喜びヶ原の街道を行く一つの小柄な姿があった。
もこもことした生地で出来た服を着たその子供は、三角形をした獣耳を動かしながら、ご機嫌そうに歩いている。
街中であればそれだけでも目を付けられてしまう容姿であるが、幸いにも人通りはそう多くはない。
時折、馬車や行商人、冒険者が行き来する程度だ。
そうした時にだけ、精霊の加護で姿を誤魔化せばいいだろうと暢気なもの。
「ふんふん~♪」
少年は、そんな風に考えながら道を歩く。
なんとも暢気で平和そうな顔だが、その年齢を考えればそれも仕方のない事かもしれない。
可愛らしい彼はまだまだその容姿で性別が分からない程度には幼いのだ。
■ステイラ > そうして道を進んでいく最中に、少しずつ日が傾いていく。
空を見上げれば、まだ夕暮れという程ではないが、そろそろ夕方といった頃合いだ。
「あ……そろそろ寝床、よういしにゃいと…」
屋根のある場所で休むのは、どうやら今日は難しそうだ。
王都から里へ向かう道中は、当然、日帰り出来る距離ではない。
野宿になる事は分かっていたからこそ、そこまで焦りもしてはいなかった。
しいて言えば、木陰なり岩陰なり…どこでも良いから身を隠せる場所があればいい。
陽が沈み切る前に、きょろきょろと、手近な場所でよさげな場所がないかを探してみる。
或いは運よく、快い人物が馬車なんかを引いていないかを祈りつつ。