2023/05/04 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にunkownさんが現れました。
■unkown > 夜空に広がる雲は厚く、吹く風も湿度が高くどこかジメっとしていて、土の香りも緑の香りもいつも以上に濃密に街道に広がっている。
月明りもおぼろげで、普段以上に危うい空気が漂う薄闇の街道の中を重々しい足音共に魔獣は闊歩する。
細く長い体毛状の触手と触手の合間からのぞかせている真っ赤な眼は薄らと輝きを放つほどにギラギラと滾り血走り、口端からは絶えずうす甘い香りの唾液がだらりだらりと糸を引き地面へと落ちている。
誰が見ても魔獣が興奮状態なのが人目で判るほどに、実際に魔獣は一種の興奮状態に陥っている。
理由は単純明快。
三大欲求の内の二つだけが満たされた状態が長く続いていて、最後のひとつに対して酷く飢えた状態にある。
発情期に似て非なるモノ、魔獣はそんな状態で辺りに鋭い眼光を向けながら歩いているため、今夜の街道はその空気に気おされて酷く静かであった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にハクさんが現れました。
■ハク > 割の良い仕事だと、冒険者仲間に誘われ集まったのが太陽がまだ天高く登っている時間。
人造魔獣なるものが逃げ出したので捕獲するという依頼のようで、話を聞いて仲間と共にその依頼を受領する。
聞かされていた内容は「龍の因子を持つが出来損ないで、リザードマンじみた生き物」というもの。
「戦闘力はあるが臆病で逃げられたので、捕獲用に人手が欲しい」という理由での冒険者の招集だった。
ただ、「催淫効果を持つ甘い香りを放つ事がある」とも言われていたので、依頼主の貴族の用意した丸薬を皆服用している。
その丸薬の効果は一時的に嗅覚を弱め、かつ嗅覚による媚薬効果を抑制するものだ。
それならば安心と夕方ごろから喜びヶ原に仲間と一緒に足を踏み入れ……そして、今の時間まで痕跡も見つけられていない。
最初こそ固まって行動していたが、流石に効率がよくないと2人1組に分かれて探索を始め、ハクは猫のミレー族少年と一緒に川沿いにやってきていた。
「あぁ、うむ。それがしここで準備しておくので、行ってくるといいでござる」
他のメンバーへの連絡用に狼煙の準備をしつつ、『目標発見』の青粉塵、『緊急事態』の赤粉塵、『一時帰還』の黄粉塵を並べていつでも使えるように準備をしていた所で、相棒の少年が便意を訴えてきたので川下に行くように指示して近くの切り株に腰をかけた。
「……意外と長丁場になるでござるか?これ」
ううむ、と大きな狐尾を揺らしながら、少しばかり不満そうに声を漏らす。
■unkown > 乾いた空気よりも湿った空気の方が魔獣には都合が良く、土や草木の香り、この辺りだと少し離れた位置にある川の流れより香る水の匂いがあるが、魔獣はその複雑に絡み合う匂いの中で、一際芳しい香りを捉える。
これが乾いた空気だとこうは上手くいかない。
嗅覚は確かに鋭いが薄い匂いを追うよりも濃い匂いから目的の匂いを探る方に特化しているからだ。
狩人を生業としていた者から産まれた魔獣であれば、その辺りも多少違うのだが、残念ながらこの魔獣には狩人の遺伝子は無く、ましてや薄い嗅覚の香りを追う方に特化した能力は無い。
スンスン、スンスン
と体毛状の触手の合間から眼と同じようにはみ出した鼻先を持ち上げて、頭部を持ち上げながらもう一度匂いを嗅いでニンゲンの匂いを確認するが、どうだろうか、どちらも若い肉のようで一方は雄、一方は雌なのは判別がついたが、若すぎる肉は食いでもないし、襲ったところで種としての成長が得られるか不明だと判断し、それでも身を焦がさんばかりの本能が喰らえと疼かせてくるものだから、魔獣はゆっくりとした足取りで、二つの獲物の様子を伺う事にした。
濃いのは排泄をしていると思われる若い雄肉。
その匂いに幾分か邪魔されているが薄い香りは若い雌肉。
街道から茂みへと音も無くヌルリと這入りこみ、その二つの匂いのもとへと近づいていく。
発情により隠しようも無い体臭。
足音を消すという事すら知らぬ結果に生まれる重い足音。
何より久々のニンゲンに止まらぬ唾液の甘い香りを撒き散らして、距離を詰めていくだろう、一歩一歩確実に己の存在を隠しもせずに。
距離が縮まっても魔獣は直ぐには襲うことは無い。
まずはその姿を確認するだけ、若い雄に若い雌、二つの肉を確認して狩猟に値すべきか、判断をする為に。
――少なくとも本能は喰らえといっているが、だ。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からハクさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からunkownさんが去りました。