2023/04/28 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にunkownさんが現れました。
unkown > ――薄雲に月が隠れ、空気は温かくも雨の香りが少しだけ混じる夜。

メグメール街道の直ぐ脇に鎮座する大岩に魔獣が寄り掛かり大欠伸をしながら、人の頭ほどもある大きな果実にかぶりついている。

その食べた方は酷く汚く、あたり一面に果汁と果肉の破片と甘酸っぱい香りを撒き散らし、長く細い髪状の触手の合間から覗きみせる眼を細めて、満足そうな笑みを浮かべている。

魔獣は夜行性である。
目覚めてある程度時間は経っているが、まだ眠気から完全に離れられていないのか、果実を貪る動きは酷く緩慢であるが、果実の糖分がまわり始めると眼には徐々に輝きは甦り、ケフゥと大きなげっぷと共に甘い果汁の香りがする息を吐いた後に、やっと動き始めた頭で今夜はナニをしようか?等と悩み始める。

お腹は膨れた。
眠りも十分。
ならば獲物を探し歩くのも良いかなと、考えれば辺りを見渡しもする。

月明りが弱い夜。
体毛の色合いと混じり魔獣の姿は見え辛く、体臭も果実の香りに上書きされて、匂いで魔獣を察知するのも難しいだろう、今夜はそんな状態だからこそ周囲には普段どおりに夜行性の動物達の気配もあれば、鳥達が時々鳴く事もある。

unkown > 魔獣のことは知らなくても魔獣が喰らっている果実を知る者は多いだろう、なんせ中々に希少な果物でとあるポーションの材料にもなるモノなのだが、そんな希少なものであろうと無かろうと魔獣は喰らいたいが為に喰らい、果実の最後の一欠けらを一口を大きな口で丸呑みをすると、溢れんばかりに果肉から滲む果実に口端から甘い果汁を滴らせる。

「グルァ……グルルルル………。」

大岩に寄りかかって座り込んだ状態から食事を終えて、早速獲物を探しに動こうと、背中で大岩をザリザリと削り擦りながら緩慢な動作で鈍重な動きで、立ち上がると背を丸めたまま歩き始めるが、どちらへ、どこへ行こうか?と鼻先を持ち上げて、美味しそうな匂いがしやしないかと、スンスンと辺りの匂いを嗅ぎ始める。

自己進化、自己増殖がコンセプトの魔獣にとって獲物を探すことは非常に重要で、そのために嗅覚も聴覚も視覚も鋭敏なのだ。

実際にゆっくりと吹く夜風の中に紛れる幾つかの匂いを嗅ぎ分けて、その中に面白いものが混じっていないか、しきりに鼻を動かして探っている。

特に敏感に感じ取れるのはニンゲンの女の匂い。
今のところ夜風に混じるにおいの中には感じれない。
けどもだ……二大欲求を満たし終えた体はもうひとつの欲求を求めて疼き始めてさえいた。

だから意気揚々と魔獣は進む。
人が多く群れ集う場所を狙うのもいいだろう。
或いは馬車が通りかかるのも待ち伏せるのもいいだろう。

魔獣はまた夜の闇へと消えていくのだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からunkownさんが去りました。