2022/11/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道/休憩所」にヴァーゲストさんが現れました。
■ヴァーゲスト > 王都からメグメール街道を進むと到着する分かれ道。
迷宮が数多存在すると言われる無名遺跡、対魔族の為に今も日夜活動しているタナール砦、港湾都市ダイラスへと向かう道と、俗に言う自然地帯、常に戦火の絶えない丘陵地ハテグ、そして神聖都市ヤルダバオートに向かう道との分かれ道だ。
旅人が冒険者が兵士が合流し別れる此処は露店や旅先での護衛募集或いは応募、簡単な依頼などのやり取りが行われ、自然と人が集まり露店などがたっている賑やかな場所となっている。
その喧騒から少し外れた場所に人影が一つ。
賑やかさを嫌っているという素振りでもないが、あまり人を寄せ付けようとしない空気をまとっているようで、休憩所の賑やかさとは別にそこだけが静寂に包まれていた。
――本人は特にそれを意識しているわけではない、今日はそれほど機嫌が悪いわけではない、ただ座る場所が此処しかなかった、それだけなのだが。
名前をヴァーゲスト・ラグランジュ・ヴィハーユと。
王都に幾らでもいる賞金稼ぎの一人。
毛先にいくにつれて紅く染まる不思議な髪色をしゃれっ気もなく適当に伸ばした髪をぐしぐしと掻き乱し、つぶれた左目の代わりに良く見える右目を閉じて、大きくブレスでもでそうな息を吐き出す。
「…………此処なら仕事にありつけると思ったんだが。」
賞金稼ぎ、と言えど霞を食って生きてるわけではない。
日々の糧が必要なのは当たり前で、魔族と言えど食と酒と色は生きるに必須、それを手に入れるのにゴルドは当然必要。
だが最近平和はとんっと賞金首の話もどこかに仕官する話も出てこない、かといって冒険者ギルドに通いつめてパーティーを組んでというのも性に合わない。
誰かに指示して行動するのは構わないが、誰かの指示に従うのは余程の理由が無い限りごめんこうむりたい。
だから此処にくれば突発で単発でそこそこの依頼がありそうだと、あっち側の仕事がありそうだと思ってきたのだが、空振りと終わりそうであった。
腰を下ろしているのは大木のあった名残の切り株。
休憩所として賑わっている方を向き、片膝に脛辺りをのせて足を組みながら、胸の前で両腕を組んで、多大なスリルと適度な報酬が舞い込んでこないか、それを懐に抱えていそうな者はいないか、遠めなら眺めている。
だいたい依頼を持っていそうな人間なら判別は容易い。
顔を見れば焦っているのが一発で判る、だから仕事を請けるなら、そういう人間が一番面白い仕事を持っているし、一番搾れる、そんな人間がいないかと。
■ヴァーゲスト > 日が真上に昇り、また下り、あたりは少し早いがほんのりと夕暮れに色づき始めたところ、それでも望むような仕事が舞い込んでくる事も、仕事を求めるものが現れることもなかった。
重い腰をあげて切り株より立ち上がると、休憩所の一角にある簡易的な宿の方に向かい歩き出す。
今日は一晩此処に止まり、明日は別の場所に向かおう。
頭の中でそう予定立てると、なけなしのゴルドを宿の主人に支払うためにズボンの中に手を入れると、指先で硬貨の枚数を数える。
自然地帯のほうに半日ほど歩けば屋敷があるが、こうして『遊んでいる』時はなるべく着の身着のままで、現地で稼いで暮らす事にしている。
そうしなければ退屈で魔族であっても死にそうだから、と。
酔狂な自分の趣味に苦笑いを浮かべ、宿の扉をくぐるのだった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道/休憩所」からヴァーゲストさんが去りました。