2022/09/25 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にネリさんが現れました。
■ネリ > 王都へと向かう街道の途中に位置する、乗合馬車の小さな待合所。
雨除けの屋根の下に設けられた簡素なベンチに腰を降ろしながら、修道女は一人遠くの景色を眺めて居た。
聞いた話では少し離れた場所に小さな村が幾つかある程度で、一面に広がる平原と遠くに連なる山々だけの光景。
そんな中、王都への道のりを急いでいた様子の村に住む夫婦に席を譲り渡して馬車を降りたのがほんの少し前の出来事で。
「 ... この調子では王都に着くのは ... 日が沈んでからになってしまいそうですね ... 」
街道には満載の荷馬車が時折通り過ぎる程度で、次の乗合馬車が来るまではまだ時間がある。
その事実を確認するように、誰に聞かせるでも無い小声の独白を漏らすけれども、其処に焦りや席を譲り渡した事への後悔は微塵も見られなかった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にクチナシさんが現れました。
■クチナシ > 彼女が独白の通り、今この街道を通り過ぎるのは既に荷物を積み終えた荷馬車等。はたまた、馬車台をケチってこの喜びヶ原に依頼の物を探しに来た冒険者ぐらいだろう。
人気のない街道。
が、ふと―――街道の途中。横に抜けたところにあるちょっとした草むら。其処から「がさがさっ!」と音が鳴り響く。
もしかしたら彼女に何かが出てきた?と思わせるかもしれないが、其処から出てきたのは、見た目だけ言えば小さな少年であり。
「ふはっ……よし。……薬草の採取、完了と。……後はこのまま馬車に乗って戻るだけ、だが。」
――頭に葉っぱを乗せた少年は、そのまま待合所に歩を進め、ふと先客に気付く。
ずいぶんと落ち着いた様子の女性。身に纏う修道衣から察するに神聖都市の方だろうか。
軽く会釈し――。
「あー……驚かせたならすまない。隣、宜しいか?」
視線を彼女が腰掛けるベンチの横へ。
■ネリ > 時折平原に吹いた風が、修道女の纏うヴェールを、生い茂る草むらを揺らしながら通り抜けてゆく様は心地が良く、穏やかな風景に菫色の双眸を細めていた最中、
「 ...... ッ ...... !? 」
修道女の耳に届くのは風が揺らしたものとは明らかに異質な、がさがさという草むらの揺れる音。
少ないとはいえ魔物が出没したという話も後を絶たない街道という場所柄、その身を竦ませて警戒の色を強めながら、音のする方へと視線を投げ掛ける。
しかし、やがて生い茂る草むらの中から姿を覗かせたのは凶暴な魔物や獣の類とは遠く離れた、未だ幼さの窺える少年の姿で。
「 ... いい、ぇ ... 貴方は ... この辺りの村の子供、という訳でも無さそうですが ... 」
予想から大きく外れたその姿に菫色の双眸を丸くしながらも、差し向けられた会釈にはこちらも頭を下げて会釈を返し、腰掛けていたベンチのスペースを明け渡すべく端の方へと身を寄せた。
■クチナシ > 音に反応して此方を振り向いた彼女には、黒い影が草むらを掻き分け、その姿を現した。そうとしか見れなかったからこそ。
――出てきた時に目線が合った際、僅かに申し訳無さそうな顔をした。
理由はどうあれ、初対面の女性を驚かせてしまったのだから。
尻尾や羽織。頭に残った草の残滓を指で摘み、ぱらぱらと地面に落としながら、そちらへと歩いていけば―――。
「ん、あぁ。まぁ……ナリは子供ではあるが、自分は冒険者だよ。
自然地帯の方は人が多いと聞いたからな。今日は……其処の横道から、薬草と食料を調達していてな?」
自分の身分を明かし――羽織の中に包んでいた籠を見せる。
其処にはその言葉通り、滋養に効く香草に塗り薬にしても貼っても効果のある薬草。そして、山菜が一食分程度積まれている。
――そのまま「感謝するよ。」と言葉を述べつつ、開けてもらったスペースに腰を落ち着かせた。
同時に、ふわり。と濃紫色の尾が彼女の方へ伸び、ぱたぱたと軽く揺れる。まだどうやら毛の奥に異物が残っているためか、それを払おうとしているよう。
■ネリ > 改めて草むらの中から姿を現した相手の方を見遣れば、異国のものと思しき装いに、獣の特徴を持った尻尾。加えて、その外見に反して落ち着いた口調で語られた言の葉を聞けば、謝罪の句と共に今一度小さく頭を下げて見せ、
「 ... それは、失礼を致しました ... 王都から来られたのですか ... ? 」
示された籠の中身を一瞥すれば、その言葉に嘘偽りは無く中に見えるのはこの辺りで採れると聞く薬草や山菜の類の数々。
付近の村人以外にも、薬草の採取や魔物の討伐に訪れる冒険者がこの待合所を利用する事も多いといった話を聞いた事を思い出せば、ベンチの隣へ腰を降ろした少年へとそんな問い掛けを投げ掛ける。
「 ... まだ付いておられますわ ... 少し、じっとしていてくださいまし ... 」
衣服やふわりとした尻尾に付いた草葉を払うその姿を横目で見遣りながら、しかし彼の死角となった背中や尻尾に残るそれらを見つけると、失礼致しますね――と断ってから繊手を伸ばし、ひとつずつ丁寧に取り払ってゆこうと試みる。
■クチナシ > 「く、ははっ――ああ、気にしないで良い。
何せ、この格好なら村の童と間違えられても仕方がないさ。――それに此方も驚かせた。これでとんとんということにな。
……ん、その通り。普段は王都で冒険者と、学院の臨時講師を、な。
……そちらは―――神聖都市から?」
謝罪の言葉は気にしないで良い。そもそもな話、こちらも彼女を驚かせた。
畏まる必要はない。というように手を振り、王都を中心に活動している冒険者だということも、彼女に伝えてみせようか。――合わせて、彼女の事も。
――そのまま膝の上に籠を乗せ、摘んだ薬草の鑑定を。
もしこの中に間違ったものが入っていてはいけない。そういうように、瞼を開き、確かめていく。そういった様子からも冒険者だということは分かるに違いなく。
「……ん?
ああ、感謝するよ。どうにも尾に関してはな。……風呂や水浴びでもすればいいのだろうが、自然地帯に行くと違う意味で汚れそうだったからな。」
――ふと、彼女が自分の尻尾についたものに気付き、手を伸ばしてくれる。
その手に気付けば、其処から伸びる3本の尻尾は、まるで自分も、自分も。と求めるようにその掌を擽りつつも、付いた草葉や枝の破片。はたまた土の残滓などが綺麗になっていく。
なお、ゴミはついているが毛並み自体はふわふわ。太陽の元で野草探しをしていたのもあり、日向ぼっこをした犬の毛並みのようである。
■ネリ > 「 ... そう、仰っていただけるのであれば ... はい ... では、この件はお互い様という事で ...
まぁ ... 冒険者だけで無く、学院の講師もされておられるのですね ... 」
軽く手を振って見せる相手の様子に、笑みこそ浮かべる事は無かったものの、修道女の表情からは緊張が薄らぎ柔和な印象を持ったものへと色を変え始めてゆく。
そうして、自分の事を語る相手の言葉に感嘆の声を漏らしてから、次いでこちらの事を訪ねられれば小さく首肯して見せる。
「 ... 申し遅れました、わたくしの名はネリ、と ... 仰る通り、教会の使いで神聖都市から王都へ向かう道の途中で御座います ... 」
そう名乗りを告げる傍らで、白い指先が濃紫色の尻尾に付いた枯草や小石をひとつずつ摘み取り払ってゆく。
我先にと求めるように揺れる三本のそれらへと順番に手を伸ばし、最後に乱れた毛並みを整えるように撫でてゆけば、ふわふわとしたその感触の心地良さに菫色の双眸を細めていって。
「 ... 生憎、わたくしは尻尾を持った事が無いので分かりませんが ... これだけ立派なものが三本も有っては、矢張り手入れには相応の気遣いが必要なのでしょうね ... 」
■クチナシ > 「――ああ、お互い様。そういう事でな。
……まぁ、と言っても……あくまでも臨時講師。自分が教えられる事を教えてるだけ。――人を選ぶもの故か、まだ受講者も少なくてなぁ。」
――解れてきた彼女の表情に返すのは、僅かな苦笑い。
確かに、あの学院の講師。という肩書だけなら大層なものかもしれないが、積極的に外部冒険者を取り入れている以上、実は特別なものでもなく。実際に講師として活躍できるかは、その授業内容次第でもあるからか。
「と、そうだったな。――自分はクチナシ。冒険者。学院では呪術や妖術を教えている。
……なるほど。教会の遣いか。それなら、普段は都市から出る事はあまり無いと聞く修道女のお主が此処に居るのも、納得だな。――ふむ。」
てっきり神聖都市に戻る最中。なのかと思ったが、どうやら目的地は同じ様子。ふと、考える素振りを見せつつ。
――その素振りの合間も、彼女は黙々と自分の尻尾の手入れを整えていく。濃紫の尻尾は細かなものが取れれば、それこそ極上の毛皮のようになめらかで、撫でる彼女に心地よさ、楽しさすら伝えるもの。
きらきらと、塵一つ無くなった尻尾が3本、其処に出来上がれば、嬉しげにその尻尾は彼女の手や腕を撫で、感謝の気持ちを示すだろう――。
「感謝するよ、ネリ。……いや、全く以て、その通りでな。
……王都には良い風呂場があるからな。其処での毎夜の風呂と、その後の手入れは欠かせぬ。
まぁ、風呂好きだからよいのだがな。くはは!」
――彼女の言葉には同意するように頷き、軽くため息を。そして、一転して笑う。ころころとその表情は変わり。
■ネリ > 王都にある学院については、神聖都市に身を置く修道女の耳にも届いている。
近年では外部の冒険者や貴族・商人らを講師として招いているとの話を聞いた覚えがあったならば、目の前の彼もその内の一人なのだろうと判断するには難く無い。
「 ... それでも ... 人を教え導く事が出来るというのは、とても素晴らしい事と思います ...
冒険者のクチナシ様、で御座いますね ... えぇ ... どうぞよしなに ... 」
そうして、名乗られた相手の名前を確認するように反芻し。
同時に修道女の繊手が撫で、時折撫で返すように揺れる濃紫色の尻尾の感触は心地良く、けれどもやがてすべての尻尾を整え終えたならば、心なしかほんの少しだけ名残惜しげにその手を引いた。
「 ... おしまい、です ...
クチナシ様は、湯浴みがお好きなのですね ... 王都や、その先の山脈の方にはそういった施設や温泉が多く有ると聞いた事が御座いますが、訪ねられた事が ... ? 」
ころころと表情を変えて見せる少年の容貌とは対称に、修道女の面持ちは目立った感情を浮かべる事は無かったものの。少なくとも目の前の彼との会話を快く感じているであろう事は、声色を弾ませながら柔和な色合いを宿した表情が如実に物語っていた。
■クチナシ > まさにその通り。はじめは、東の方から降りてきて冒険者稼業だけで食っていこうと思ったが、自分の術を広めたい。そう考えて受けただけだったが……。
「……。」
――浮かべた表情は僅かな驚き。普段は閉じ気味の瞼を開き、その奥の蒼色の眼で彼女を見据え。
「……再び、感謝を。くはは……うむ。其処まで褒められると少しむず痒さがあるが。
……それを言うなら、人のために祈れるお主も、素晴らしいものだと思うよ。こうやって、自分へ優しい言葉を伝えてくれる事も、な。」
自分に素晴らしい。と告げてくれたならば、こちらからも。優しい言葉を掛けられるのは、修道女どうこうは関係なく―――彼女が優しいからだろう。
整え終えた尻尾の1本はしゅるりと自分の腰回りに。もう1本は脇に帯刀している刀へ絡む。
残りの1本は未だ彼女の手元近くに、ふわふわとした毛並みを残しつつ、揺れている。――如何にも触れても良い。と言わんばかりに。
「うむ。綺麗になった。三度、感謝を。――今日はネリに感謝してばかりだなぁ。
……まぁ、此処に来るまでは山奥に住んでいてな。其処では温泉よりも水浴びの方が多く……やはり、温かい湯は良い。落ち着く故な。
……お? 興味があるか?
無論だとも。――まずは王都ならば、九頭龍の水浴び場などが主流だな。……実は昨日、そこで月見酒を少々な。
山脈には、自然の温泉がある。効能も濃い物が多く、滋養のために向かう者も多いな。……尤も、手練の冒険者を連れていかねば、襲われる可能性もある。
もし、行く場合には――依頼を出すと良い。……自分ならば格安で承るぞ? 風呂にも入りたいしな。」
当然のように、風呂好きの冒険者はどちらも知っていた。
そして、彼女が興味があるのなら共に行こう。――そう告げたりもする。
■ネリ > 不意に、驚いたように見開かれた蒼色の双眸が修道女の方へと向けられたのならば、咄嗟に浮かんだのは何か気に障る事を言ってしまっただろうかという疑念。
けれども、笑い声と共に投げ掛けられた感謝の言葉にそれが杞憂であると知れば、胸の内で静かに安堵しながら、続く賛辞に小さく頭を下げて見せ、
「 ... いえ ... 感じた事を口にしただけで御座います ...
わたくしの方こそ、そのように褒められた身ではありませんが ... ありがとう、御座います ... 」
相手の賛辞を向けられた修道女もまた、何処かむず痒そうに落ち着かない様子を見せながらも、素直に受け止めると共に礼を述べて。
手許の近くでふわりと揺れる毛並みの良い尻尾は酷く魅力的であったけれども、折角綺麗になった処を不用意に触れてしまうのは躊躇われて、そっとその手を引いてゆく。
「 ... ほんの、好奇心で御座います ... 無闇に人前で肌を晒すのは憚られる身ゆえ、そういった場に赴いた事はありませんが ... そう、ですね ... もしもそのような機会に恵まれる事が御座いましたら、その時はよろしくお願い致しますね ... 」
相手の口から語られる感想へと、興味深そうに耳を傾けながら、思いがけず投げ掛けられた誘いには少しの逡巡を見せながらも、そんな答えを口にする。
そんな会話を続けていると、遠くから徐々にこちらへと近付いて来るのは馬の蹄とガタゴトと車の揺れる音。
気が付けば少なくない時間が過ぎており、待っていた乗合馬車の時間が訪れていた。
■クチナシ > 「そういった事を口に出来ない者も多い。故に、だよ。
……いやいや、そんなことはないぞ? もっと自分に自信を持つと良い。まだ出会って数刻ではあるが……自分が保証するよ。お主は優しい子だ。……よし、宜しい。」
――そして、表情を緩めた。落ち着かない様子を見せつつも、最後は受け止めてくれた彼女へ。
世辞などではない。この短い時間で、相手が優しくも魅力的な女性だと思ったからこそ、こういった言葉を向けたのであり。
ふと、視界の端に見えるのは、するりと引かれる手。
そう、興味が無いなら手はそのままにしておけば良い。逆に手を引いたということは、其処に意識が向いているということ。
ならばと――その引かれた手の甲へ伸びる、一尾。
そもそも綺麗にしてくれた少女が触れた事で嫌になる事なんてない。彼女がそれ以上手を引かなければ、その手の甲や指の谷間を、さらさらとした毛先が擽ることとなるはずで。
「――ああ、そうだろうな。然し、そういう身だからこそ好奇心を抱く。よくある事よ。
……それに、肌を見せるのが憚れるのならば隠すのを手伝ったりもできるぞ? こう見えても、自分は呪術師でもある故な。まぁ、出来れば共に入れるのが一番好ましいが。……くははっ!」
――そして、笑う。本当か冗談か分からない事を告げながら。
彼女の言葉が本気か、社交辞令かは定かではないが。少なくともそう返して貰えたのなら――こんな風に色々な言葉を重ね、次の機会を楽しみにするのである。
そんな中、長耳が捉えるのは馬車が此方へ来る音。
「――……確か、行き先は王都だったな。
良ければ共に行かないか?……まだ、自分も話足りない。お主との話は、楽しいからな。
もし、宿などを決めていないのなら紹介もできるぞ?浴場の場所の案内も出来るしな。」
――聞こえれば。彼女に向けたのは、その後の誘い。
■ネリ > 投げ掛けられる賛辞に小さく頭を垂れて謝辞を述べる。
外見こそ幼く見えるものの、年長者を思わせる落ち着いた口調の彼にそのような言葉を投げ掛けられるのは、少しむず痒くはあったけれども決して悪い気分はしなかった。
その眼下では、一度引いた繊手へとまるでじゃれつくように触れる濃紫色の尻尾。白い手の甲を、指の合間を器用に潜りながら擽ってゆく毛並みの感触が不快であろう筈も無く、心なしかほんの少しだけ、その口許が綻んだよう。
「 ... 呪術師というのはそのような事も、出来るのですね ... 一緒に入るのは ... その ... 少し考えさせていただけたら、と ... 」
笑い声と共に投げ掛けられた相手の言の葉を、冗談と受け取ってか。それでも少したじろいだ風に詰まらせた返答には、少なからず動揺の色を浮かべながら。
やがて二人の姿を認めた馬車が、待合所の前でその足を止める。乗客の姿は疎らで、幸い修道女と少年が並んで乗る余裕は十二分にある様子。
「 ... はい ... 王都に着いたら、向こうの教会に逗留させていただく手筈になっているので宿の心配は御座いませんが ... それまでの間でよろしければ、よろこんで。
わたくしも、クチナシ様のお話をもっとお聞きしたいと思っておりましたので ... 」
停止した馬車へと乗り込む手前、相手から投げ掛けられた誘いを断る理由も無く、首肯と共にそう返事を返したならば。乗合馬車は王都へと伸びる街道をゆっくりと進み始める。
その道中、幾つもの他愛の無い語らいを交わす修道女と少年の二人を乗せながら――
■クチナシ > ――ふわり。と肌を撫でる尻尾の毛先。その口元が緩んだならば、此方としても嬉しいもの。
何せ、自分の自慢の尻尾なのだ。それで笑顔になってくれるなら。――馬車が来るまで。そして、来た後、彼女が自身の誘いに乗ってくれたならば、その後も。まるで遊具を見付けたかのようにその一尾は、彼女の指の元で戯れていて。
「――何せ、講師をするぐらいには呪術に精通しているからな?
……くはは。ああ、勿論。流石に肌を晒すのは憚れると言っていた少女に、無理に共に入れとは言わぬさ。
が――考えてくれるのは、有り難いな。その時は秘蔵の酒でも振る舞おうか。」
――動揺の色を見せるのは当然だ。目の前の女性は修道女。自分の言葉の通り、先程まで肌を見せるのも憚られる。と告げていたのだから。
が、それが確りとした拒絶でないのであれば。そんな風に言葉を紬ぎ、楽しそうに笑うのだ。
「感謝するよ。それに、護衛の真似事も出来る。礼、というわけではないが……主の旅路は平穏であってほしいと思うからな。
――それは良いことを聞いたな。なら、その際は教会に邪魔してみようか。
……先ずは、王都に戻ってからか。――よし。秘蔵の話をしよう。あれは、自分が山脈にあるダンジョンに向かった時の話でな――?」
自分の誘いに乗ってくれた女性に感謝しつつ、共に馬車に乗る。
既に陽に影が差す時間。色が落ちるに伴い、言葉数も減る人も多いが―――自分たちはそうではない。
秘蔵の話。彼女の他愛無い話。自分の冒険者として見てきたことの話。
少なくともこの帰路の最中。――語らいは止まらず、共に満ちた時間を過ごせた筈、で。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からネリさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からクチナシさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアルマさんが現れました。
■アルマ > 「いやーアルマさんとした事が配達ミスするとはねぇ……。」
ゾス村からの帰り道、今夜の仕事の反省をしながら街道を王都に向けて歩いている最中である。
何時もスラム街の子供から貴族のお歴々まで完璧にお届けモノをこなすのが仕事であり誇りであったが、本日のお客様はお客様に非ず、人にすら劣る畜生以下で有り――…まあ端的に言うと贈り物で殴りつけてきた。
ある程度この仕事をしていれば下種なモノを運ぶ事は多々ある、が今日は完璧に許せなかった、今日は絶対に赦すべきではなかった、赦してはないのだけども。
本日お届けしたのは塩漬けになった遺物。
仕事に私情は挟まないし、必要最低限しか仕事に関して情報を依頼人に尋ねない、けども依頼人がべらべらと喋ってくれたのでついお礼をしてしまったのだ。
「でもアレはダメでしょ、いや薬や何やらはいいよ?それくらいは見逃せるけどさー……ねぇ……?」
奥歯で薄荷味の飴玉を噛み砕き胸糞の悪さをすっきりしようと飴に八つ当たりながら、手で頭を髪を掻き毟る、思い出したくもない、早く帰宅して酒でも煽ろうと、自分の眼が夜を見通す力があるからといって、明かりも点けづに愚痴りながら歩き続ける。
■アルマ > 妖精や精霊を見る目があれば暗い闇なんてなんのその。
王都に到着するまで一人ぶつぶつと愚痴を零しながらの帰路である。
あとでたっぷりと師匠であり店主である魔女に愚痴った事は間違いなく、代わりに美味しいお酒をおごってもらったと言うのはまた別の話。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアルマさんが去りました。