2022/08/07 のログ
ヴェルソート > そして、歌唄いの姿は、街道の世闇へと紛れていき……。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からヴェルソートさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > マグメールにほど近い街道、隻腕の歌唄いは少しばかり困った事態に陥っていた。
そう、あと小一時間も歩けば王都に着く、その予定だったのだが……。
見知らぬ男たちに剣を向けられ、困ったように…いや、実際困っているのだが、頬を掻いた。

「なんでこんな王都近くに盗賊が……いや、別に王都に近いから居ないわけでもないけども。」
今まさに、数人ばかりの盗賊に追いはぎに遭っている真っ最中であった。
さてどうしたものかと…腰の七色の光沢をもつ指揮棒にそっと手を添えながら、考えている。
逃げるか、戦うか……はたまたいっそ……いやいや、それはさすがにやめておこう。命の保証はないわけであるし。
身構えたまま、怖がるでもなく黙り込む盗賊も、いらだったように「早く金目のものを出せっつってんだろ!」と、こちらを急かしてくるわけだ。
そういわれると微妙に腹が立ってくるのはご愛敬…指揮棒を確認するついでに、多少の銀貨が入った小袋をベルトから外し、見せつけるようにぽいと目の前に放った。ついでに、七色に艶めくタクトを、隻腕に握って。

ヴェルソート > 抜き出した指揮棒を一振りすると、どこからか鳴り響く楽器の音に一瞬驚き周囲を見る盗賊。
それに構わず、音の源…振るとそれに合わせて様々な楽器の音が響く魔道具「七色の指揮棒」を振れば、それに気づいた盗賊たちが咎めてくるが、それを無視して息を吸い込み、口を開く。

「♪…燃え上がるような熱い鼓動が 刻むリズムを抱きしめて
 愛しさも 切なさも 焦がしてしまいそう…♪」
甘く響くテノール、その声に込められた魅了の魔力が、無意識にでも、立った数秒でも『歌を聴く』ことに心を傾けてしまえば、もうこちらのものだ。
歌とメロディに込められた力が周囲のマナを震わせて…彼らに干渉する。
身も焦がすような熱い恋歌……それは、本当に『彼らに火を付ける。』
ボッ!とまるで発火現象めいて彼らが燃え上がり、悲鳴が上がるが…構わず歌い続けてやろう、唄はまだイントロも良いところ…まだまだ続くのだから。

「♪…灼熱の渦に呑まれて 身も溶けるような恋したら
 誰にも止められない 燃え上がるこの想い…♪」
甘やかな魅了と炎上の歌に、盗賊の悲鳴が合いの手のように混じる…歌に込められた焦げるような恋情の熱が…まさに本当の火と熱になって彼らを襲っていた。
こういうめんどくさいのじゃなくて、良い男でも道を塞いでくれねぇかなぁ…なんて、思いながら。

ヴェルソート > 唄が間奏に差し掛かるころ合いで…悲鳴がだいぶ小さくなり、転がる盗賊たちがまともに身動きしなくなったところで……ため息交じりに歌を中断する。小さなうめき声とやけどで動けなくなった山賊たちを見下ろして…いっそとどめまで歌った方が慈悲深かっただろうか。

まぁいいか、と男は結論付けた。そもそも人から追いはぎしようとした輩だし、問答無用で殺されてないだけ、多分この辺りでは優しい判定だ、多分。
まあ自分が優しいとは露ほども思っていないが…かといってあいつらに自分から止め差して喜びたくもない、結局は自分勝手なエゴの結果でしかない。
これで助かったなら…まぁ、相手の運がよかったということなのだろう。

「とりあえず、これは返してもらうぜぃ?…じゃ、運が良けりゃだれかに治療してもらえるかも、な?」
そうでなければ死ぬだけだと、焼け焦げた小銭入れを拾い上げて腰に戻し…すたすたと倒れて蠢く焼死体と化そうとしている彼らの間を抜けて、石畳を歩きはじめる。
こういうめんどくさいのじゃなくて、良い男が道を塞いでてくれたら、立ち往生しがいもあるんだけどなぁ、なぞと勝手なことを思いながら。

ヴェルソート > 「……あ、あいつらの身ぐるみ、剥いでもよかったかもな。」
迷惑料で…とはいいつつも、振り返る気はないらしい…さて、マグメールまで、あと少し…。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からヴェルソートさんが去りました。