2021/04/04 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にギデオンさんが現れました。
ギデオン > 重い雨が街道を叩く。
いかに季節外れに暖かい早春とはいえ、やはりまだ冬の気配は残っていた。底冷えする風が雨を更に重たいものにする。
こんな夜は、旅慣れた者ほど旅程を諦め、雨風を凌げる宿を早々に決めるものであるというのに。
その騎影は、重たい雨に総身を打たせて、闇に落ちた街道に静かに蹄の音を響かせていた。
蹄の音に、幽かな金属の音が混じる。
騎士はどうやら、具足を纏っているようだ。
見れば、その黒鹿毛の体格雄偉な悍馬は軍馬であるらしい。
騎影は、一人の騎士のものだった。
騎士を包むのは冷たい夜気である。
フードに覆われ伏せ気味のそのかんばせ。しかし、その口許からは白く凝った吐息が漏れることはない。
この寒さに呼気を乱すことも無いのか。
それとも…この寒さよりも。その呼気は冷たいものであるとでも、いうのか。
時折悍馬が鼻を鳴らす。
そのたびに、騎士は革手袋に包まれた掌で、悍馬の首筋を宥めるように叩いてやっていた。

頭上、雨はまだ止む気配をみせていない。

冷たく重い雨に撃ち据えられつつ、悍馬と騎士とは決して急ぐ気配もみせることなく、ただ静かに街道をゆく…。

ギデオン > 重く雨滴を大地へと叩きつけるようであった雨。
それが、次第に穏やかに緩やかに変じゆく。
いつしか、月が雲間に垣間見えていた。
蒼い蒼い月影が、細い雨筋を照らしている。

「苦労を掛けるが…もう少し稼いでおきたいものだ。さあ、ゆこう…」

穏やかな、僅かに錆びた響きの声が軍馬を宥める。
黒鹿毛の悍馬は機嫌よく鼻を鳴らして、騎士のその声に応じてみせた。

薄蒼い月影の中、騎乗の孤影はゆるり蹄を響かせて、闇夜の中へと消えてゆく…。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からギデオンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にギデオンさんが現れました。
ギデオン > 旅はやはり、夜が捗る。
古竜の生き血を啜り、血への永劫の渇きから解き放たれ、陽の下を歩けるようになったとはいえ、長きに亘った夜に生きる生き方は、そうそう容易に変わるものではない。
銀の髪に白い肌、そして真紅の瞳。
見る者が見れば、それはやはり人ならざる者の気配を如実に放つ風貌でもある。
無用の詮索を避けて旅をするには、やはり夜は都合がよかった。
そう、闇を恐れずにすむ身なればこそ…。

昨夜とは異なり、雨は上がったようだ。
頭上、雲間からは星が煌めき、時折月影も射してくる。
その星明りと月影だけで、騎士にはあたりは十二分に見渡せる…。

賊徒の襲撃に不意を打たれるということもあるまいし、例え魔物であっても、騎士に気づかれずに忍び寄るのは不可能であったろう。よほど、次元界の扉を不意に開いて現れるというのでさえなくば…。

たまさかには、人の住み暮らす地にしばし暮らしてみてもよい。
永遠の渇きから解き放たれ、人の血を狂おしく欲する呪いも遠くなって久しい。
こうして旅を続けるうち、騎士は、久方ぶりにそういう心持になっていた…。

ギデオン > 踏み慣らされた街道を騎士はゆく。
体格雄偉な悍馬の背に揺られ、時折まとった具足を涼やかに鳴らしつつ。
行き交う旅人の姿も無い夜の道に、ゆったりと響く蹄の音は、どこか現のものとは思われない。
それでいて、不思議と禍々しさはなかった。
それは、騎士がゆるりと馬打たせているからか。
急ぐでもなく、焦るでもなく。

そう、騎士には永劫の時間が約束されている…。

魂すら輪廻に帰ることを許さぬ古竜の火焔に身を晒し、その傷を古竜の生き血で癒したのだ。
なまなかの魔剣すら、最早その肌身に刃を立てることすらできぬ、そういう存在となり果てていた。

流れゆく時すらこの身を滅ぼすこと能わぬということを知りながら。
騎士はゆるりと旅をゆく…。

ギデオン > 王都と呼ばれる都まで、まだ旅程は一日分はあろうか。
夜の闇に旅をし、昼は路傍に休む日々。
愛馬に無理はさせぬようにと心を配っての旅である。
春の宵はますます闌けて、心地よい風が街道に舞う。悍馬もまた、そのような風と闇の中歩を進めることが喜ばしいのか、疲れの色は微塵も無かった。が、それでも愛馬は労わらねばならぬ。
それは、この騎士が吸血騎士となるはるか前、理想に燃えた若い騎士であった頃から、その身に厳しく仕込まれてきたことであったから…。
手綱を伝わる愛馬の疲労や様子になお、心配りつつ。
騎士は王都へと続く街道に、依然緩やかに馬蹄の音を立ててゆく…。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からギデオンさんが去りました。