2021/02/20 のログ
ブレイド > 気まずさが無くなれば、女性の笑顔も少しだけ自然になったようで
それをみれば、こちらも安心したように微笑み。
しかし、すぐにその笑顔は失せてしまい、何か少し不思議そうに見返す。

「なるほどな。
狩人かなんかってとこか?
っと、わりぃ。八重歯、気になってんのか?気にしてんなら謝るけどよ
印象的じゃぁあるが、悪かねぇとおもうぜ?」

18と聞いた女性が驚いたような表情を見せ
まさに少年といったところの年代を口にすれば苦笑し

「まさか、そんな若くみられてるとはな…
もうすこしガタイがよけりゃよかったんだが…
ま、そんなとこだな。オレは基本的に一人でやってるからな
貧乏そうな冒険者を狙う賊もいねーしな」

スープを飲み終えてしまえば、ようやく一息。

ナラン > 「…そうですね。たまに獣の毛皮を街や村に卸したりします。
 あとは、たまに冒険者ギルドで仕事を貰ったり…
 ―――…いえ」

牙のことを言葉にされると、視線を少し落として
相手が気遣うように悪くない、と言ってくれた事には少し笑みを返しながら、それでも灯りから逃れるように一歩下がる。

「―――すみません。
 故郷の方では、こどもは他に家族を作るまでは、親兄弟と家族で過ごすのが当たり前でしたから。
 若い見た目のひとが独りで居るのを見るのは、すこし…不思議に感じてしまうんです」

スープを飲み終えた姿を見ると、ぺこ、と頭を下げて。

「ご心配をおかけしました。…食事中だったのに、声を掛けてくれてありがとう」

特に引き止められもしなければ
女は相手に無事を願う言葉を掛けて、そのままくるりと踵を返して、街道を帰路へと戻って行くだろう。

ブレイド > やはり何か気にしているようで
八重歯にコンプレックスでもあるのだろうかと訝しむ。
ならばそれ以上触れるのも野暮だろうか…

「いいさ。
アンタの故郷でそうだったってなら、そりゃ不思議にもおもうだろうさ。
ってか、そんなに若くみられてるとは思わかなったけどな…」

よく謝る女性だ。
何度も頭を下げられたようで、少しばかり心苦しくもあるが
彼女が立ち去ろうとすれば、引き止めるように声をかける。

「いいさ。そうだな…傍に住んでるってなら、少し付き合ってくんねぇか?
オレも一人でこの寒さだと心細くてな。話し相手がいると助かるんだ」

話しかけられて嬉しいと言っていた女性。
それに、静かだと言っていた。
彼女が言う、当たり前のように家族で過ごしているとは思えなかった。
なんだか、すこしだけ…寂しそうに見えた。

ナラン > そのまま下がって、別れの言葉を紡ごうとした唇が半ば開いたままで止まる。
闇の中、鳶色の瞳を何度か瞬いて、相手の―――少年の顔をやっとちゃんと、見つめて。

「…ありがとう。
 そうですね、寒いと星は奇麗だけれど、独りで居るには心細くなります」

わかります。と頷くとまた少しだけ笑って、すこし考えた後、灯りのほうへと踏み出す。
近くまで来ると迷うように視線を泳がせてから、彼の少し離れた傍らに腰を降ろすだろう。
長弓を下ろして膝の上に置くと、ほんの少し笑う顔を彼へ向けて。

「―――わたしも、面白い話ができるわけではないですけれど…
 貴方の―――…名前を聞いても良いですか?
 わたしは、ナラン、と言います」

ブレイド > 「ありがとうはこっちのセリフだ。
付き合ってもらってんだからな。
それに、さみぃ中だってのによ、ありがとな」

火に当たればそれなりに温かいといえど
屋根も壁もない屋外であることには変わりはない。
風はなくとも冬の寒さは厳しい。
とはいえ、彼女の家に泊めてくれなどというのも厚かましいだろう。

「誰かがいるだけでもありがてぇよ。
人がそばにいるってだけでも、寒さが和らぐと思わねぇか?
オレはブレイド。よろしくな、ナラン」

彼女の鳶色の瞳。初めて正面からみたような気がする。
しかし、なにか違和感。
自分の中に薄く混ざったなにかに似た気配を感じるような。

ナラン > 「寒いですか?
 …生憎、いま助けになるようなものは持っていないです。
 街に行くときは、鹿と熊の毛皮を持っていたのですけれど」

それらの卸と、ついでに冒険者ギルドでの仕事さがしが今日の遠出の用事だった。
無事毛皮も売れてすっかり身軽になってしまったのだが
それを今すこしだけ、残念に思いながら両手を見る。

「ブレイド、さん。こちらこそ、よろしくお願いします…
 …そうですね。すごく、解ります…街の酒場が賑わうのは、きっとそういう人達で寄り添って、溢れているんでしょうね」

相手を自分の塒に泊めるなどとは思いも至らない様子で言葉を返す。
彼だからという訳ではない。
どうにも…今の自分が人と過ごせる気がしなくて、そうして一人森に籠って、月日が経ってしまった。

「…どうかしましたか?」

正面から見つめ合うような瞬間が出来て、女は少し首を傾げる。

「―――そんなに寒いですか?…テントの中に入った方が良いんじゃないですか?」

相手が、自分を気遣って呼び止めてくれたのに感づいている。
無理して会話をして身体を壊すことをさせる訳には行かない。
相手の瞳の中に、熱っぽさが無いかを覗き込む様に少し、じっと見つめて…

ブレイド > 「アンタは寒いの平気なんだな。
オレはどうも苦手でな…
別に気にするこたねぇよ。売れなかったらアンタが困ってただろ」

少し申し訳無さそうなナラン。
どうやら、かなり気遣い屋というか、遠慮しすぎと言うか。
大丈夫だといいつつ、両手を火に向ける。

「酒が好きってだけのやつもいるだろうけどな。
オレもたまには賑やかさが欲しくてうろついたりするしよ
アンタも森で一人ってなら、たまに心細かったりするんじゃねえか?」

彼女がそういったわけではないが
先程の予測から、おそらくは彼女は独りで暮らしているのではないかと考えた。
ならば、少し不器用な話し方もうなずける。
そして、もう一つの予感…
じっと見つめ合えば、その瞳の奥…何か…

「ナラン、昼間とか苦手だったりするか?」

瞳を覗き込まれながら、でてきた言葉は、少し突拍子もないような質問。

ナラン > 「平気、というほどでもないと思いますけど…先ほどまで、歩いていたせいでしょうか」

きっとここでもう暫くじっとしていたら、上着を通して寒さが沁み込んでくる気もする。
それを想像するだけですこし首を竦めて、女は思わず両腕を抱えるように自分の身体を抱く。

「…慣れました。そうそう、寂しがってもいられない年ですし」

心細くないとは言わない。言えない。そのことに自分で苦く笑って返す。
何となく自分を気遣ってくれるような相手の言葉に、漸くすこし警戒が解けた様に表情から硬さは抜けている。

――――その表情がまた凍って。

「…すこし。
 ……年甲斐もなく、日焼けが苦手なんです」

軽口の口元はぎこちない。
 
「………どうして、ですか?」

気付かれた――――
表情が再び頑なになっていく。身体を抱いていた手を解いて、弓に手を掛ける。
勿論彼を射かけようという訳ではない。
…その場をいつでも、去れる様に。

ブレイド > 自分の身を抱くナラン。
寒さに耐性があるというわけではないようだ。
苦手である自分よりはマシだろうが。

「慣れたからって、心細くねぇわけじゃねぇからな
それに歳だって関係ねぇさ。生きてりゃそういうもんだ」

寂しさにもなれたという女性、しかし否定はしない。
自分も独りでいることが多いが、それでもずっと独りでいて平気でいるわけではない。
だからこそ、彼女を呼び止めたわけで。
しかし、こちらが感じた予感を口にすれば、彼女は表情を凍らせる。

弓に手をかけ、少し腰を浮かせようとしただろうか。
どうしてか。
その理由。

「オレもそうだからな。ちょっと吸血鬼に噛まれちまってな。
なんか似たような気配がしたっつーか…違ったらわりぃな
肌、弱いのか?」

だから、彼女がそうであったとしても違ったとしても
そして、彼女が独りである原因がそれならば
ここで晒せてしまうのも忍びなく、彼女の弓に手をかけた腕を掴む。
大丈夫だと。

ナラン > 「…優しいんですね、ブレイドさん」

本当は皆多かれ少なかれ寂しさを抱えているんだろうと想像はするけれど
自分はほんの時たま、おしつぶされそうに不安になる。
それは弱さなのだと…あまり零さないようにしなければと戒めにも似た思いがある。
だから、言葉にはしないでおく。今は。

そうして緩みかけた気がまた頑なになって
腰を浮かせようと身体に力をこめたまま、彼の言葉を聞いている。

「――――…」

彼の手が伸びて来るのに戸惑ったように瞳を揺らす。
そのまま弓を握った腕を掴まれればびくりと肩を震わせて――――目を見開いて彼を見て…

「…いえ」

身体から力が抜ける。
浮かしかけていた腰が再びすとん、と落ちて。
―――深く一つ、深呼吸。

「……わからないんです。
 …たまに…血、が…欲しくはなりますけど…」

はっきりと噛まれた記憶はない。只偶に、どうしようもない渇きが己を捉えるのは、確かではある。

「ごめんなさい……わたし、行きますね。
 『何か』あると、困りますから」

解るでしょう?というように微笑む。頑なさはなくなったが…ひどく戸惑って不安定に。

ブレイド > 「んなことねぇよ。オレもそうだしな。
一人で冒険者やってりゃ、どこで独りで死ぬかわかんねえし
ナランはオレより年上だろうけどよ、別に強がんなくていいぜ」

自分は街に住み、多くの人に囲まれて生きている。
ナランはそうではない。
たまに街の熱に触れて、森に帰る。
そして、あまり気が強いともいえなさそうな性格
平気であるはずがない。

そしてそれは、彼女の状態にも言えること。
もし吸血鬼に血を吸われ、体質が変化したことが今の生活の原因ならば
その人恋しさも本来ならば強いだろう。
彼女曰く、新しく家族を作るまでは親兄弟と暮らすのが普通であったのであれば。

「いいって。なんかあってもよ。
オレ一回吸われちまってるからな。
それより、一人は寂しいだろ。できりゃ、一緒にいてくれるとありがてーんだけどな」

どちらが、とは言わない。
だが、彼女が一人でこのまま帰ることは見過ごすことはできなかった。

ナラン > 「…―――ブレイドさんのほうが、年上みたいですね」

ありがとうございます、と返しながらも
口ぶりにくすりと笑みが零れる。己からすると『少年』としか思えない相手からの言葉だと猶更だ。

その相手から『寂しい』と聞くだけでまた瞳が揺れる。
主語がどちらでも構わない。
…解る、と言ってくれているのだけは、伝わって来る。
幾度か唇がふるえたあと、漸く、女の口元に笑みが浮かぶだろう。
そうしてやっとまた、彼の瞳をまっすぐに見て。

「…仕方ないですね。
 ……良くないですよ。自分の身体は大事にしてください。まだ若いんですから」

いかにも仕方ない、と眉尻を下げて言葉を紡ぐと
少し気を許した相手が急に心配になって、今度はそっちで不安そうに眉根を寄せて辺りを見る。
本当なら、上着ぐらい貸してやりたいが、今の自分は生憎着の身着のままだ。

「…上着他に持ってきていないんですか?
 お話しするのは構いませんから、布団でも被ってすこしでも暖かくしたほうが…」

急にそわそわと辺りを見回して、終には相手のテントを勝手に覗いて何か暖を取るものを、と探そうとまでするだろう。

そうやって風のない夜は更に更けて……
偶には笑い声も、夜の街道に響いたろうか。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からナランさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からブレイドさんが去りました。