2020/12/05 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にリコリスさんが現れました。
リコリス > 月明かりに照らされる街道、そこにぽつんと影を落とす一台の馬車。
繋がれた馬たちはおろおろと周囲を見渡すばかりで、進もうとしない。
それもそのはず、彼らを操る御者は前のめりに俯いてピクリとも動かない。

豪華な造りの馬車の扉は開け放たれ、中は無人。
しかし、乗っていた者はそのすぐ前の草むらに倒れている。
身なりのいい貴族の男。

周囲を見渡せば、他にも誰かが草むらに倒れているのが見えるだろう。
武器を携えた護衛が4人。いずれも驚愕の表情のまま倒れている。

そして、彼ら全員の頭には、手裏剣が深々と突き刺さっていて。
この場で生きている人は、馬車の屋根の上に座り月を見上げている女忍者のみだった。

「この程度の護衛で外出とは、不用心なことだな」

依頼を受けての暗殺業。無論標的は乗っていた貴族の男。
若手の改革派であり、王すら決まらぬ国の現状を憂いて色々とやっていたらしい。
それがまぁ、誰かさんの恨みか恐れを買って、リコリスが金を貰って始末しに来たわけだ。

「さて、後片付けをしようか」

リコリスは立ち上がり伸びをする。
流石に手裏剣をそのまま残して去るのはいけない。特徴的すぎる。
彼女は馬車を飛び降りると、証拠隠滅を始めた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にラファルさんが現れました。
ラファル > 「―――。」

 何時しか居たのだろうか、道の端に金髪の幼女が座っている。
 金色の瞳は、唯々静かにその様子を見ている、驚きもなく、戸惑いもなく、倒れ伏している5人を路傍の石を見るかのように。
 後片づけをしている彼女を唯々見ている。
 見ている、と言う表現も不確かかもしれない、其処に有る現象を見ているというだけになる。

 忍びの技を、彼女の手管を、唯々、見ているだけ、だ。
 その、見ている、という事自体が、どのような意味を持つのかは、彼女が一番わかるだろう。
 忍が、見られているという、それ自体の状況だ。

 手裏剣を見ている。
 手口を、見ている。
 加害者を見ている。
 被害者を見ている。

 そして、其処に感情はなく、幼女は言葉を放たず、何らかの感情すら放たず。
 それこそ、幼女自身が路傍の石と言うかのように、静かに、存在をしていた。

リコリス > 「……」

リコリスは最初の被害者から手裏剣を抜こうとした所で手を止める。
少女の方に目線をやり、ため息をつく。

「…その歳のガキならギャーとかワーとか叫んだらどうだ?人が死んでるんだぞ?」

視線には気づいていたリコリスだが、いきなりこちらから仕掛けるのもどうかと思い、
相手の出方を伺おうと気付かずにいるフリをしていたのだが。
見ているだけで何にもしてこないので、しびれを切らして声をかける。

「見世物じゃないんだ。子供は寝る時間だ」

ただの子供ではないことは明白だが、敵意があるなら既に仕掛けていそうなもので。
となると目的がわからない。
しかし、目的が何であれリコリスに付き合う気もなく。
しっしと指先を振った後は、死体から手裏剣を引き抜き鉄粉に変える作業に戻る。

ラファル > 「じゃあ、君は、その年に同じように人が死んだら、ワーギャー言ってた?」

 気が付いたらしい彼女のため息交じりの言葉、幼女は、此処で初めて感情を表情に浮かべる。
 にまぁ、という擬音がぴったりの子供らしい、いたずらっ子の笑顔である、この場において、それは、あり得ないほどに場違いな笑いだ。
 死んでいる人間を、ちらりと見てから、座っていた幼女はぴょん、と立つ。

「とっても暖かいね、貴女の言葉。だから、シロナちゃんに色々、教えたんだね。
 ボク、ラファル・トゥルネソルっていうんだ。」

 そこまで言えば、彼女も判るだろう。
 彼女に纏わりつくと公言した褐色娘、脳筋娘の言葉から零れた名前だ。
 つまるところ、幼女の方も、幼女の方で、彼女を見に来たと言うのが正しい。
 敵意はない、興味はある。
 鉄の粉に代わっていく手裏剣を眺めて、へぇ、と目を細める。
 便利だね、と、柔らかそうな唇は揺れる。

「にひ。」

 目的は、未だに見せない、子供のように笑い、ととと、と、近づいて見せる。
 彼女が回収している手裏剣、近くで見てもいーい?と、首を傾ぐ。

リコリス > あぁ、これは面倒くさい奴だな?リコリスは思う。
すすす、と逃げるように次の死体に行き、また同じように手裏剣を引き抜く。

「ワーギャー言うフリぐらいはしてたぞ」

実際、演技は子供の頃からイヤというほど叩き込まれている。
いかに上手く姿形を似せられても、行動が伴わなければ怪しまれるのだ。
子供なら、子供らしく。年相応の振る舞いを。

「あぁ、お前の名前言ってたなそういや」

いつぞや戦士ギルドで相手した少女の顔が思い浮かぶ。
じゃあコイツは私に会いに来たのか?
どうやってコイツは私がここに居るって突き止めたんだ?
受けた依頼のことは誰にも言ってないんだが。
リコリスの頭に次々疑問が浮かぶ。

「……で、私に何の用なんだ?」

まずは、単刀直入に聞いてみることにした。

ラファル > 面倒臭い?ええ、面倒くさいですよ。10歳で忍者と言う時点で、面倒くさくない訳がない。
 すすす、と逃げる動きに、すい~っと、滑る様に同じ速度同じ距離感で移動する幼女。
 幼女は逃がさない、魔王のように。

「今、必要ないよね?目撃者、居ないんだし。」

 演技、必要だろう、そして、幼女は幼女だ、基本的には。
 今は、忍である。……師匠が知ったら怒るだろうか。うぅむ。
 でも、同じ職業、別の組の技術や考え方などは、興味があるので。
 そっちを知りたいので、今は、此処にいる。

「え?だって、同じ技術ある人がいれば、気になるじゃん。
 自分とは違う入り口から、同じ技術。
 つまり、自分の知らない技術を盗むチャンスでしょ?」

 何の用事だと言われれば、忍者を見に来た。
 そして、見るという事は知るという事で、知るという事は学ぶ事である。
 堂々と、貴女の技を盗みに来ました、幼女は言い切る。
 ちなみに、どうやって、と言うのは企業秘密である。
 姑息な事、この上ない。

リコリス > 「そうやって手を抜く奴から死んでいくんだよ、この世界は」

まぁ、手を抜いていると言えば見られているのにとっとと始末しないリコリスも同程度か。
彼女は心の中で自嘲した。

最後の手裏剣を分解し、改めて向きなおる。
……もう放置して帰ってしまおうか。

「あぁそうかい。残念だが企業秘密なんでお前にゃ見せられん」

言いながら、びしりとデコピンをかますだろう。
シロナと戦った経験から考え、指先は鉄のキャップを作って覆ってある。
当たればそれなりには痛いだろう。容赦が無い。

「それに私はもうオサラバだ。仕事はもう終わってるんだ」

いつまでも残ってちゃ捕まるからなと。
死体はそのままだ。新聞記事にでもなればちゃんと仕留めたことの証明になり、依頼主から金が支払われるというわけだ。

ラファル > 「―――ふふ。」

 にまにま、と笑っている。自分に向き直る彼女に、幼女は目を細めているがままに。 
 相手をするのが疲れるのだろう、それは、見てわかる、判って居るのだ、そして、それを止めようとしない。

「うん、もう、たっぷり見てたからいいよ。」

 シロナと違うのは、ラファルは竜なのである、彼女よりも完成されている、竜である。
 見た目で騙された彼女は、その指を鋼鉄で包んでいるのが行幸だろう。
 幼女にダメージはない、鱗が、彼女の一撃をしっかりと防いでいたからである。

「じゃあ、ボクも帰るね。
 鉄を作ったり、分解したり、面白いね。」

 すべてを知ることも無い、興味の有る物を見て、覚えて。
 師匠の下に持ち帰り、利用できることなのか、するべきことなのか。
 それらを吟味すればいいのだ。

 面白い技術と言うのは、それだけ、色々と使い道があるのだから。

「それと、おにく、いいな。」

 じゅるり、と音を立てて見せるのは、死んでいる五体を見て。
 肉食獣の獲物を見る目が、彼女の殺した相手に向けられる。食べられたら、殺した証拠すら、なくなるだろう。

リコリス > ガンと、人間の額をデコピンする時には絶対出ないような音がして指がはじかれる。
見ると、額には竜の鱗。

「…あーなるほどね、アイツよりは手練れと」

手練れというか種類が違うというか。
まぁどうでもいい。

「言っておくが、これは別に普通の錬金術だからな?
本屋行けば教本売ってるからな?」

鉄を集めて武器を作る、または鉄製品を鉄の粉に変える。
それは忍術ではなく南蛮(マグメール)由来の魔術だ。

勿論、使うにはある程度魔術の才能が無ければならないが、
ミレー族のリコリスにとっては無問題なのだ。
おそらく彼女もキチンと学べば使えるだろう。
問題は使い方をどこまで思いつけるかである。

「お肉…?」

視線をたどれば、目の前の幼女が見ているのは自分が殺した連中の死体。
あぁなるほどね、つくづくとんでもないガキンチョだ。

「……あの身なりのいい奴は食うな。他は食っていいぞ」

依頼をこなした証拠としては貴族の死体さえあればよいのだ。

ラファル > 「そもそも、生きてる時も違うし。」

 種族としての格が違う、彼女は生まれて一年此方は10年。
 どちらが強いかと言われれば、間違いはなく、ラファルの方が強いのである。

「ふぅん?なるほど、ね。」

 手の内を明かしてくれる彼女。錬金術らしい、へぇ。と幼女は軽く言う。
 じっと、その掌の技術を思い出し、ふぅん、ともう一度唸るのだ。

 ひょい、と手を伸ばして。
 そして、手を引いた。簡単に言えば、止めたと言うのが正しい。
 くるり、と音を立てて反転し、彼女に背中を向ける。

「怒られちゃうもんね。」

 にし、と笑って見せてから、ひらり、と軽く手を振って見せる。
 もともと、興味があるのか、無いのか。
 何もかも、まぜっかえしたようなその子供は、ひら、と手を振る。

「じゃあね?」

 彼女が止めなければ、幼女はそのまま、走り去っていく。風のように。

リコリス > 「……はぁ、疲れた」

何か、化かされたような気がする。
普通こちらが化かす側では無かろうか?
とはいえ、ようやく面倒な子供から解放された。

「さて、とっとと帰るかな」

彼女の姿も気配も無くなったのを確認してから、リコリスは鳥型の紙札を取り出す。
これこそが本当の秘術。シェンヤンの道術の傍流たる陰陽術。
投げれば、それはたちまち大鴉の姿に変じる。式神だ。

「よっ、と。ちょっと寝るから落とさないでくれよ?」

リコリスはその背に飛び乗り、身を任せると瞳を閉じる。
大鴉は了解とばかりに大きな鳴き声をあげ、彼女を背に乗せたまま飛び去っていった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からラファルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からリコリスさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 王都から離れる事、半日。昼下がりの近隣の村落に通じる街道。
普段から人の往来が多い、その道を遮るように柵が設けられ、
道の脇には幾つかの天幕が建てられ、簡易的な陣営の趣きを為していた。
街路に立ち、通行する馬車や通行人を差し止め、積み荷や身分の検査を行なっているのは、王都の兵士達。
曰く、此処最近、山賊や盗賊の類が近隣に出没するために検問を敷いているという名目であるが、
実際の所は隊商からは通行税をせしめ、見目の良い女がいれば取り調べの名を借りて、
天幕でしっぽりとお楽しみという不良兵士達の憂さ晴らしと私腹を凝らすための手段に他ならなかった。

「――――よし。次の奴、こっちに来い。」

でっぷりと肥った商人から受け取った賄賂を懐に入れて、彼の率いる隊商を通せば、
列をなしている次の通行人に声を掛けて近寄るように告げるのは一人の兵士。
何よりも厄介なのは、彼らが紛れもない王国の兵士であり、市井の民が逆らえない事だ。
そして、その事を理解している兵士達は、御国の為ではなく利己的に国民を食い物にしている最低最悪な屑揃いであった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からジェイクさんが去りました。